「現金及び現金同等物」と「キャッシュフローの3区分」

 

2022年(令和4年)9月21日

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・キャッシュ(資金)の範囲①…手元現金

 

 キャッシュフロ-計算書の作成基準や日本公認会計士協会の実務指針によれば、正規のキャッシュフロ-計算書でいうキャッシュすなわち資金は、「現金及び現金同等物」とされています。

 キャッシュフロ-計算書の「現金及び現金同等物」と貸借対照表の「現金(及び)預金」とが異なる場合には、その差異を注記することになっています。中小企業においては、キャッシュ(資金)は、貸借対照表の現金預金とイコールにしておくのがよいと思います。

 

 さて、現金とは、手元現金と要求払預金をいいます。日常用語でいう現金以外に、要求払預金も含んでいることが特徴です。

要求払預金とは、預金者が一定の期間を経ることなく引き出すことのできる預金をいいます。代表的なものは、普通預金・当座預金・通知預金などです。定期預金は、6ヶ月とか1年という預け入れ期間が定められているため、要求払預金には該当しません。

 

 

・キャッシュ(資金)の範囲②…現金同等物

 

 次に、現金同等物ですが、「容易に換金可能であり、かつ、価値の変動について僅少のリスクしか負わない短期投資」と定義されています。すなわち、次の三つの要件を満たすものです。

① 容易な換金可能性、

② 僅少な価値変動リスク、

③ 短期投資

 つまり、現金及び現金同等物とは、短期的な支払いに充てることの資金ということになります。

 したがって、市場性のある株式などは、換金は容易ですが、時価の変動があり価格変動のリスクが僅少とはいえないので、現金同等物には含まれません。株式などの金融商品に投資した資金は、短期的な支払いに充てるつもりはないものと考えられます。

 

 現金同等物に何を含めたら資金状況を適正に示すことになるかは、それぞれの企業によって異なると考えられます。資金管理活動の内容は会社によって異なるので、現金同等物の範囲については、その企業の経営者の判断に委ねられ、一律に定められてはいません。

 現金同等物の一般的な例として、作成基準や実務指針では、「取得日から満期日や償還日までの期間が3ヶ月以内の短期投資である定期預金、譲渡性預金、コマ-シャル・ペ-パ-、売り戻し条件付き現先、公社債投資信託」などを挙げています。 

 定期預金については、要求払預金には該当しませんでしたが、預け入れ期間が3ヶ月以内のものは現金同等物に含まれるとしています。3ヶ月を超える定期預金は、通常、短期的な支払いに充てるためのものとは考えられないので、現金同等物には該当しないというわけです。

 ただし、資金管理上、短期支払資金の運用期間は、企業によってまちまちです。ですから、3ヶ月という期間が、必ずしも妥当でない場合があります。たとえば、現金売上中心の会社は支払資金の運用期間が短いことが有り得ますし、逆に、売掛金の回収期間が長い会社は支払資金の運用期間が長いことも考えられます。ですから、繰り返しになりますが、現金同等物の範囲は、あくまで経営者の判断によります。

 とはいっても、株式の公開会社においては、作成基準や実務指針の挙げた3ヶ月以内という基準を採る企業が多いと思われます。

 

 

・キャッシュ(資金)の範囲③…負の現金同等物

 

 金融機関との当座借越契約に基づく当座借越限度枠を、日々の資金管理活動において現金及び現金同等物と同様に会社が使っている場合があります。このような場合の当座借越は、資金調達による財務活動とみるよりも、資金管理に不可欠のものとみる方が実態に即しているものと考えられます。よって、この場合の当座借越は、現金同等物として扱い、「負の現金同等物」(現金同等物のマイナス)とします。

 したがって、当座借越を貸借対照表において短期借入金に表示している場合であっても、キャッシュフロ-計算書では、現金同等物のマイナスとして扱うので、「現金及び現金同等物の期末残高」は当座借越を控除した後の額となります。

 ただし、当座借越の状況が明らかに資金調達活動であり、借入金と同様のものと判断される場合があります。たとえば、当座借越といっても、証書借入と同じように、毎月、一定額を定期的に返済していくような場合です。このような場合には、キャッシュフロ-計算書において、現金同等物には含めずに、「財務活動によるキャッシュフロ-」の区分に表示します。

 

 

・正規のキャッシュフロー計算書の構造

 

 正規のキャッシュフロ-計算書は、下記のような構造になっています。キャッシュのフロ-(増減)を表す部分は、「営業活動によるキャッシュフロ-」、「投資活動によるキャッシュフロ-」、「財務活動によるキャッシュフロ-」の3つの区分に分かれます。

 キャッシュの増加については、無印で記載します。それに対して、キャッシュの減少については、金額の前に-(マイナス)を付けて記載します。

 そして、これら3つの増加額(または減少額)を合計して、キャッシュ(正規のキャッシュフロ-計算書では、「現金及び現金同等物」といいます)の増加額(または減少額)を求めます。最後に、そのようにして求めたキャッシュ(現金及び現金同等物)の増加額(または減少額)に、キャッシュ(現金及び現金同等物)の期首残高を加えて期末残高を算出し、キャッシュフロ-計算書が完成します。

 

Ⅰ 営業活動によるキャッシュフロ-

Ⅱ 投資活動によるキャッシュフロ-

Ⅲ 財務活動によるキャッシュフロ-

Ⅳ 現金及び現金同等物の増加額

Ⅴ 現金及び現金同等物の期首残高

Ⅵ 現金及び現金同等物の期末残高

 

 

・3つの表示区分

 

 個々のキャッシュフロ-を3つの区分のどこに記載するかは、原則として、そのキャッシュフロ-に関する取引が、営業活動・投資活動・財務活動のいずれの性格をより強く有するかによります。つまり、そのキャッシュフロ-が、どの活動と一番密接に関連しているかということです。

  なお、「原則として」は、「営業活動によるキャッシュフロ-」の区分は、営業活動の性格を有するものだけではないということを意味しています。投資活動と財務活動のいずれにも属さないないようなキャッシュフロ-の取引は、営業活動に含められるからです。 つまり、「営業活動によるキャッシュフロ-」の区分には、通常用いている「営業活動」よりも広い範囲のものが記載されるということになります。

 

 なお、営業活動・投資活動・財務活動の3つの性格のうちのいずれの性格をより強く有するかの判定にあたっては、①企業の事業目的や②取引慣行も考慮します。

 

① 事業目的

 たとえば、資金の貸付けを行った企業があるとします。一般の企業では、貸付けを事業目的とはしていないので、貸付けに関する取引は、「投資活動によるキャッシュフロ-」に分類されます。ただし、資金の貸付けを事業目的にしている金融業では、「営業活動によるキャッシュフロ-」に分類されます。

 もう1つ、有価証券の売買の例を挙げてみます。一般の企業では、有価証券の売買は、事業目的には含まれていません。したがって、「投資活動によるキャッシュフロ-」に分類されます。ただし、事業目的に有価証券の売買を含めている企業では、短期売買目的で保有していた有価証券の売買に関する取引は、「営業活動によるキャッシュフロ-」に分類されます。

 このように、同じ取引であっても、事業目的によって、キャッシュフロ-の表示区分が異なってくることがあります。

 

② 取引慣行

 たとえば、機械などの固定資産を取得した場合、検収後数ヶ月して、現金預金で支払うという決済条件であったとします。すると、検収時に未払金に計上し、支払時に未払金を取り崩すことになります。

 この場合の数ヶ月後の未払金を取り崩して現金預金で支払うという取引については、2とおりの考え方があります。1つは、固定資産の取得を原因とするものだから「投資活動によるキャッシュフロ-」の区分に記載するという考え方です。他の1つは、資金の返済猶予を受けたものとして「財務活動によるキャッシュフロ-」の区分に記載するという考え方です。

 検収してから数ヶ月後の支払いが、その会社にとっての通常の決済条件である場合や、業界の取引慣行である場合には、「投資活動によるキャッシュフロ-」の区分に記載します。わが国の企業間信用は比較的長期間が多く、「投資活動によるキャッシュフロ-」の区分に記載した方が取引の実態を示していると考えられるためです。

 一方、固定資産を割賦取引や延払取引など分割払いの契約により取得する場合があります。このような場合の割賦代金の支払いは、金利も含まれるので、ファイナンス(金融)としての性格を有しています。したがって、原則として、「財務活動によるキャッシュフロ-」の区分に記載します。

 

 

・直接法と間接法

 

 「営業活動によるキャッシュフロ-」の区分の作成方法については、2種類のものがあります。直接法と間接法です。

 

① 直接法

 直接法は、キャッシュに関連するすべての取引を抽出して、主要な取引ごとに集計するものです。営業収入に関連、仕入に関連、有価証券の取得に関連、有価証券の売却に関連……などです。直接法は、実務的には、パソコンを利用して集計することが不可欠だと考えられます。勘定科目を、その集計が可能であるように体系化し、コ-ド番号を付す必要があります。

 直接法は営業活動によるキャッシュフロ-が総額で表示される長所がありますが、直接法を採ると勘定科目の体系が複雑になります。

 

② 間接法

 間接法は、期首(前期末)と期末の貸借対照表残高の差額をもとに、損益計算書・総勘定元帳・その他の資料よりデ-タを収集し、修正記入を行って作成する方法です。

 間接法の長所は、利益とキャッシュとの関係を明らかにできる点です。

 正規の間接法は、キャッシュの増加である税引前当期純利益からスタ-トします。そして、キャッシュの増減項目である減価償却費・有形固定資産売却損益や貸倒引当金・売上債権・棚卸資産・仕入債務などの増減額をプラスマイナスします。

 

 投資活動と財務活動の区分は、直接法と間接法とで表示が異なることはありません。どちらの方法を採っても、同じ表示となります。投資活動と財務活動の区分は、本来、直接法の表示です。しかし、間接法においても、修正仕訳で総額に直しますので、結局、直接法と同じ表示になります。

 

 

・営業活動によるキャッシュフロ-

 

 「営業活動によるキャッシュフロ-」は、企業が、外部からの資金調達に頼らないで、営業・生産活動の維持、設備投資、借入金返済、配当金支払などを行うために、どのくらいの資金を主たる営業活動から得ているかを示すものです。

 

 「営業活動によるキャッシュフロ-」の区分には、次のような項目が記載されます。

(小計の上)

税引前当期純利益

非資金損益項目

営業活動にかかる資産・負債の増減額

投資活動および財務活動にかかる損益項目

(小計の下)

発生ベ-スとキャッシュベ-スの調整項目

損害賠償金支払額

法人税等支払額

 

 非資金損益項目とは、当期純利益には反映されているが、キャッシュの増減を伴わない項目です。たとえば、減価償却費、貸倒引当金繰入額などです。なお、営業債権の貸倒損失、棚卸資産の評価損などは、営業活動にかかる資産・負債の増減に反映されているので、税引前当期純利益にプラスマイナスする非資金損益項目には該当しません。

 営業活動にかかる資産・負債の増減額とは、たとえば、貸倒引当金・売上債権・棚卸資産・仕入債務などの増減額です。

 投資活動および財務活動にかかる損益項目とは、有形固定資産売除却損益、(投資)有価証券売却損益、有形固定資産評価損、(投資)有価証券評価損などです。これらは、営業活動に関連しない損益項目であるため、税引前当期純利益からその影響を排除するわけです。

 

 ところで、直接法・間接法ともに、正規の「営業活動によるキャッシュフロ-」は、小計で上下に分かれています。発生ベ-スとキャッシュベ-スの調整項目とは、受取利息、受取配当金、支払利息、損害賠償金などです。これらは、小計の上で税引前当期純利益に含まれる発生ベ-スの額をマイナスし、改めて、小計の下でキャッシュベ-スの額を計上します。

 もう少し詳しく言うと、受取利息・受取配当金は小計の上でマイナスし、小計の下でそのキャッシュフロ-をプラスします。また、支払利息を小計の上でプラスし、小計の下でそのキャッシュフロ-をマイナスします。これらの利息・配当金については、営業活動に付随するものと考え営業活動の区分に表示します。

 

 投資活動・財務活動以外の取引によるキャッシュフロ-(たとえば、災害による保険金収入額、損害賠償金の支払額、多額の特別退職金の支給額など)があれば、それも小計の下に記載します。法人税等の支払額も小計の下です。したがって、「営業活動によるキャッシュフロ-」の区分は、一般的に用いる「営業活動」よりも範囲が広くなっています。

 

 「営業活動によるキャッシュフロ-」に記載される項目であっても、金額の重要性が乏しい項目については、「その他」として一括して記載することができます。

 

 

・投資活動によるキャッシュフロ-

 

 「投資活動によるキャッシュフロ-」は、「営業活動によるキャッシュフロ-」から得た資金を、どのような投資に使用しているかを示すものです。この区分は、将来の利益獲得、または、資金運用のために、どのくらいの資金を支出・回収したかを表しています。主要な取引ごとに、原則として総額で表示します。

 

 投資活動によるキャッシュの減少には、次のようなものがあります。

① 有形無形固定資産の取得

② 資金の貸付け

③ 有価証券・投資有価証券の取得(現金同等物に含まれるものを除く。)

 投資活動によるキャッシュの増加には、次のようなものがあります。

① 有形無形固定資産の売却

② 資金の回収

③ 有価証券・投資有価証券の売却(現金同等物に含まれるものを除く。)

 具体的にいえば、土地・建物や商標権・実用新案権を取得した場合及びそれらを売却した場合、また、子会社などに対する貸付金の増減が、「投資活動によるキャッシュフロ-」の区分に記載されます。現金同等物に含まれない有価証券などの例としては、たとえば、投資有価証券・子会社株式の取得・売却があります。

 なお、現金同等物に含まれる有価証券などは、資金の範囲内の取引なので、投資活動からは除かれます。

 

 「投資活動によるキャッシュフロ-」に記載される項目であっても、金額の重要性が乏しい項目については、「その他」として一括して記載することができます。

 

 

・財務活動によるキャッシュフロ-

 

 この区分には、営業活動と投資活動の結果、不足した資金を調達したり、また、余った資金を返済に回したりした事実が表示されます。つまり、営業活動と投資活動を維持するため、どのくらいの資金が調達または返済されたかを示します。主要な取引ごとに、原則として総額で表示します。

 財務活動によるキャッシュの増加には、次のようなものがあります。

① 金融機関からの借入れ

② 株式の発行

③ 自己株式の売却

④ 社債の発行

 財務活動によるキャッシュの減少には、次のようなものがあります。

① 借入金の返済

② 自己株式の取得

③ 配当金の支払い

④ 社債の償還

 自己株式の取得事由については、株式の消却や株主からの買い取り請求に基づくものなどさまざまな種類があります。自己株式の取得・売却については、会社と株主との間の取引なので、「財務活動によるキャッシュフロ-」の区分に記載します。

 

 「財務活動によるキャッシュフロ-」に記載される項目であっても、金額の重要性が乏しい項目については、「その他」として一括して記載することができます。

 

 

・法人税等の表示区分

 

 各種の税金のうちには、所得が税額計算の基準、すなわち課税標準となっているものがあります。法人税、法人住民税、法人事業税などです。税務上の所得とは、会計上の利益に税務上の加算・減算を加えて算出したものです。ですから、法人税・法人住民税・法人事業税などは、いずれも利益に関連する金額を課税標準とする税金であるといえます。

 このような法人税等を、キャッシュフロ-計算書ではどこに表示するかが問題となります。理論的には、利益は、営業活動・投資活動・財務活動の3つの活動から得られたと考えることができます。そうすると、法人税等も、「営業活動によるキャッシュフロ-」、「投資活動によるキャッシュフロ-」、「財務活動によるキャッシュフロ-」の3つに分けて表示することが考えられます。しかし、実務的にはそれは困難・煩雑であるため、「営業活動によるキャッシュフロ-」の区分の小計より下に、「法人税等の支払額」として、一括して記載します。

 なお、事業税のうち付加価値割と資本割、電気会社・ガス会社・生命保険会社・損害保険会社は、課税標準が所得金額ではありません。したがって、これらの事業税の支払いは、営業活動によるキャッシュフロ-ですが、「法人税等の支払額」ではなく、小計より上の「その他の営業支出」などに記載されます。

 

 

・利息と配当金の表示区分

 

  利息と配当金の表示区分については、次の2つの方法の選択適用が認められています(比較可能性の確保のため、毎期の継続適用が条件です。)。

 

① 第1法

 受取利息・受取配当金・支払利息は「営業活動によるキャッシュフロ-」の区分に記載し、支払配当金は「財務活動によるキャッシュフロ-」の区分に記載する方法です。

  この方法は、損益計算に含まれる受取利息・受取配当金・支払利息は営業活動の区分とし、損益計算に含まれない支払配当金は財務活動の区分とするものです。過去における資金の調達や運用から生じた果実は営業活動としようという考え方であり、営業活動を広く捉えています。

 

② 第2法

 受取利息・受取配当金は「投資活動によるキャッシュフロ-」の区分に記載し、支払利息・支払配当金は「財務活動によるキャッシュフロ-」の区分に記載する方法です。

 この方法は、受取利息・受取配当金は投資活動の成果であるため投資活動の区分とし、支払利息・支払配当金は財務活動のコストであるため財務活動の区分とするものです。

 

 第1法と第2法のいずれが主流になるかは、今後の実務の慣行を待つということです。

 

 また、現金及び現金同等物の運用から生ずる受取利息は、他の受取利息と区分して把握することが実務的に困難なので、受取利息に含めます。負の現金同等物(当座借越)に関連して支出する支払利息も、同様に、支払利息に含めます。

 

 

1

2

受取利息

「営業活動」

「投資活動」

受取配当金

支払利息

「財務活動」

支払配当金

「財務活動」

 

  

・キャッシュフロ-の総額表示と純額表示

 

  「投資活動によるキャッシュフロ-」と「財務活動によるキャッシュフロ-」の区分においては、主要な取引ごとのキャッシュフロ-は、原則として、総額表示しなければなりません。

 たとえば、有価証券の取得と売却は、相殺せずにそれぞれ総額で表示します。「利息の受取額」と「利息の支払額」も、相殺せずに総額で表示します。

 ただし、「期間が短く、かつ、回転が速い項目」に関するキャッシュフロ-は、例外として、純額表示することができます。この扱いは、期間が短いことと回転が速いことの両方の条件を満たす必要があります。ですから、どちらかしか満たさない取引は、重要性のない場合を除き、総額で表示します。

 なお、期間が短いとは、現金同等物と同様、3ヶ月以内が目安とはなりますが、あくまで各企業の資金管理活動の実態に即して判断します。

 これら両方の条件を満たすキャッシュフロ-の例としては、次のようなものがあります。

① 短期借入金の借り換えによるキャッシュフロ-

② 短期貸付金の貸付けと返済が連続して行われている場合のキャッシュフロ-

③ 有価証券(現金同等物を除く。)の取得と売却が連続して行われている場合のキャッシュフロ-

 このような場合、キャッシュフロ-を総額表示すると、キャッシュフロ-の金額が大きくなり、かえって利用者の判断を誤らせるおそれがあるためです。

 

 そのほかにも、キャッシュフロ-には、純額表示が妥当なものがあります。次のようなものです。

① 会社が第三者のために行う取引

② 第三者の活動を反映している取引

③ 重要性の乏しい項目

 第三者のために行う取引や第三者の活動を反映している取引の例としては、次のものがあります。このような取引のキャッシュフロ-は、総額で表示すると、会社の活動と誤解されるおそれがあるので、純額表示します。

① 外注先のための資材代理購入

② 単元未満株式の買い取りとその処分

③ 給料賞与の源泉所得税や社会保険料の預りと納付

 

 社債や新株の発行により資金調達をすることがあります。その場合、資金調達の実質手取額は、発行価額から社債発行費や株式発行費を差し引いた額です。ですから、「財務活動によるキャッシュフロ-」の区分で、それらを差し引いた実質手取額で表示します。ただし、それらの発行費の額に重要性がない場合には、差し引かないで総額で表示することもできます。

 また、原材料の有償支給の未収入金と加工品仕入の買掛金とを相殺して決済するような相殺取引の場合、差額のみのキャッシュフロ-を記載します。ただし、相殺取引に重要性がない場合には、あたかもキャッシュフロ-が発生したものとして記載することもできます。

 

 

※本稿は、次の拙著・拙稿より、取捨選択・加筆修正して、まとめたものです。

寺田誠一著『図解ひとめでわかるキャッシュフロ-計算書』東洋経済新報社 2000年(平成12年)

寺田誠一稿『この説明方法ならわかる!キャッシュフロ-計算書』月刊スタッフアドバイザー2008年(平成20年)11月号

寺田誠一稿『「キャッシュの増減原理」で理解するキャッシュフロ-計算書入門』月刊スタッフアドバイザー2007年(平成19年)4月号

寺田誠一稿『簿記を知らなくても3つの図でわかる決算書とキャッシュフロ-』月刊スタッフアドバイザー2004年(平成16年)4月号

寺田誠一稿『新人経理マン・経理ウーマンのためのキャッシュフロー計算書レッスン』週刊経営財務1999年(平成11年)4月5日号

寺田誠一稿『新人経理マン・経理ウーマンのための続・キャッシュフロー計算書レッスン』週刊経営財務1999年(平成11年)10月11日号

寺田誠一稿『新人経理マン・経理ウーマンのための続々・キャッシュフロー計算書レッスン』週刊経営財務1999年(平成11年)11月22日号

 

 

※キャッシュ増減のきまりと簡易なキャッシュフロー計算書の作成については、「「キャッシュの増減原理」と「キャッシュフロー計算書の原型」」参照。

※キャッシュ増減のきまりの「収益・未収入」、「支出・未費用」など6項目による説明については、「キャッシュの増減原理のシュマーレンバッハ的説明」参照。

※2列方式ワークシートによる正規のキャッシュフロー計算書の作成については、「キャッシュフロー計算書の総合設例」参照。

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。