「財務諸表論の記述式理論答案作成法」

 

2020年(令和2年)9月15日(最終更新2021年7月13日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・採点方法

 

 あくまで想像ですが、公認会計士試験や税理士試験などの理論問題の記述式(論述式)の場合、採点者の採点のやり方の例を示してみます。最初、採点基準を仮に決めて、数十枚の答案を試しに採点して、平均点が何点になったかを確かめます。その平均点が高すぎるようでしたら、採点基準を厳しくして、平均点が下がるようにします。逆に、その平均点が低すぎるようでしたら、採点基準を甘くして、平均点が上がるようにします。

 採点基準の例を示してみます。まず、1つの設問に対して、論点をいくつか設けます。論点A(やさしい論点)、論点B(普通の論点)、論点C(難しい論点)というようにです。そして、配点を10点とすると、論点Aの配点は5点、論点Bの配点は3点、論点Cの配点は2点というように決めます。もし、平均点が高すぎるようでしたら、やさしい論点Aの配点を4点に下げ、難しい論点Cの配点を3点に上げて、平均点を下げます。逆に、平均点が低すぎるようでしたら、やさしい論点Aの配点を5点に上げ、難しい論点Cの配点を1点に上げて、平均点を上げます。

 

 

・答案作成の注意点

 

① 論点をはずさないようにすること

 

 出題には、キ-ワ-ドと論理展開の暗記で解答可能な基本問題と、そうではない応用問題とがあります。基本的な出題では、暗記したキーワードや論理展開を幹とし、それに自分なりのことばで枝葉をつければ、解答が完成します。

 

 上述の採点基準の例でいえば、採点者は、論点A(配点5点)について、この答案は十分書いてあるので5点、別の答案はある程度触れているが的外れなところもあるので3点、また別の答案はまったく触れていないので0点というように、採点するのではないかと思われます。したがって、基本問題は、論点をはずさないようにすることが重要です。

 

② 応用問題・難問でもひるまないこと

 

 応用問題は思考能力・ひらめきが問われますが、そのベ-スは「補充」済みの基本書です。応用問題については、基本書に何か参考になることが載っていなかったか必死になって考えます。頭の中の引き出しを全開にして探し出します。そして、何とか関係のありそうなことをまとめて解答に仕上げていくわけです。

 

 論点がどこかわからない、出題者が何を書くことを期待しているのかわからないというような、応用問題を超えた難問にぶつかることもあるかもしれません。そのような場合は、他の受験生も同じ様に感じているはずです。その中で、少しでも抜きんでていればよいわけです。答案は相対的なものです。

 したがって、難問の場合には、今までの学習・勉強のすべてをぶつけます。論点がわからなくても、何かしら関係のありそうなことをできるだけたくさん書いておくべきです。

 

③ 読みやすい字でわかりやすい文章を書くこと

 

 採点者は多くの答案を採点するので、1枚の理論答案の採点に費やすのは、数分間だと思われます。したがって、スラスラ読めて

短時間で採点できるような答案が、採点者にとっては望ましいことになります。判読できないような文字や論旨不明確なまわりくどい文章は、採点者にとって迷惑です。主語と述語のはっきりした短いセンテンスのわかりやすい文章を、読みやすいていねいな文字で書くように心がけるべきだと思います。そうすると、採点者に好印象を与えるでしょう。

 

④「である」調に統一して書くこと

 

 文章の書き方には、「である」調と「です・ます」調の2つがあります。答案では、「である」調に統一して、「です・ます」調が混ざらないようにすべきです。

 

⑤ 会計用語の誤りをしないこと

 

 基本的な会計用語に誤字があると、受験生の実力について、採点者に疑念を抱かせることになるので、注意が必要です。

 誤りやすい会計用語の例を挙げておきます。

 

  (正)          (誤)

正常営業循基準    正常営業循基準

長期負工事      長期負工事

時価の著しい低    時価の著しい低

法         低

売価元法          売価元法

減価却           減価

株式の却        株式の

親会社と会社      親会社と会社

 

 

※本稿は、次の拙著を加筆修正したものです。

寺田誠一著 『ファーストステップ会計学 第2版』東洋経済新報社2006年 「序章 会計学の学習法」

寺田誠一著 『財務諸表論頻出問題演習 第4版』中央経済社2000年 「0章 財務諸表論の学習法」

 

 

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。