「帳簿・請求書等の記載事項」

 

2020年(令和2年)7月26日(最終更新2021年7月7日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・帳簿・請求書等の記載事項

 

 消費税の計算では、課税売上げにかかる消費税額から課税仕入れにかかる消費税額を控除することができます。ただし、そのためには、条件があります。それは、自社作成の「帳簿」と取引先作成の「請求書等」を保存しておくことです。

 「帳簿」とは、自社で作成した仕訳伝票・総勘定元帳・補助簿などをいいます。「請求書等」とは、取引の相手方が作成した請求書・領収書・納品書などをいいます。通常、企業の経理の部署に保存されている書類です。

 

 なお、1回の取引金額が3万円(税込み)未満の場合には、「請求書等」はなくとも「帳簿」の保存のみでよいことになっています(ただし、それは消費税法の話で、法人税法ではやはり請求書等の保存が必要です。)。3万円以上の場合でも、請求書等の交付を受けなかったことにやむを得ない理由があるときは、帳簿にその理由と取引先の住所を記載すれば、帳簿の保存だけでよいことになっています。

 

 帳簿には、次の4つの事項を記載することが必要です。

帳簿の記載要件

① 取引先名

② 取引年月日

③ 取引内容

④ 取引金額(消費税率の異なるごとに区分)

 

 請求書等には、以上の4つのほか、もう1つ、表題部のあて先に自社の名前が記入されていることが必要です。

請求書等の記載要件

① 取引先名

② 取引年月日

③ 取引内容

④ 取引金額(消費税率の異なるごとに区分)

⑤ あて名

 

 つまり、商慣習でよく使われる「上様(うえさま)」ではだめで、「○○様」と自社の名前が書いてなくてはだめということです。

 ただし、小売業・飲食業・タクシ-業・駐車場業など不特定多数を相手にする事業者が発行する請求書等は、あて名を省略できることになっています。つまり、そのような事業者から受け取った領収書などは、自社のあて名がなくても仕入税額控除できるということです。

 小売店で買い物をして、レジから打出されたレシ-トをもらった場合、あて名は書いてありませんが、それでもよいということです。その場合、自社の名前を言って、改めて自社あての領収書を発行してもらう必要はないということです。

 

 小売店で領収書をもらう場合、もう1つ商慣習で摘要欄に「品代(しなだい)」と書かれている場合があります。品代では、取引内容が明らかでなく、本来は、仕入税額控除ができません(ただし、3万円未満の場合には、帳簿に取引内容の記載があればできます)。小売業などでも、領収書の取引内容は省略できません。

 

 帳簿には前述のように4つの事項を書く必要がありますが、それは1つの「帳簿」で全部記載しなければならないということではありません。仕訳伝票・総勘定元帳などが、全体として、4つの要件を満たしていればよいということです。

 たとえば、取引内容は、総勘定元帳に記載がなくても、仕訳伝票に記載があればよいというようなことです。請求書等も同じです。請求書・領収書・納品書などが、総合的に5つの要件をクリアしていればよいわけです。たとえば、取引内容が請求書に記載されていなくても、納品書に記載があればOKです。

 

 ところで、帳簿と請求書等には①から④まで同じ内容が記載されるので、帳簿の方は一部省略してもよいかという問題があります。帳簿には日付と金額は書くでしょうから、具体的には取引先名と取引内容です。

 ところが、その省略は認められないという取り扱いになっています。1997年(平成9年)の消費税法改正で、仕入税額控除の信頼性を高めるため、「帳簿又は請求書等」から「帳簿及び請求書等」に改正になりました。次のように、帳簿(伝票)には、取引先名と取引内容を記載しなければなりません。なお、取引内容は、一般的な総称で記載することができます(つまり、「ノ-ト、ボ-ルペン」という記載までは必要なく、「文房具代」という記載でよいということです。)。

 

 

 この「帳簿及び請求書等」は、問題があると思います。ムダや重複はできるだけ避けて、効率的な仕事をしようとするのが実務です。企業が、請求書等に書いてあるのだから、帳簿には取引先名と取引内容のどちらか一方だけの記載で経営管理上はよいと判断したならば、税務もそれを尊重すべきだと思います。

 税務調査の現場では、両方の記載がなくとも、それほど問題視しないことが多いと思われます。ただし、もし、裁判などで争う場合には、法令どおり、両方の記載がないと仕入税額控除は認められないということになります。

 

 軽減税率導入に伴い、請求書等の取引内容は、標準税率対象分と軽減税率対象分とに分けて記載することが必要となりました。そして、取引金額も、標準税率対象分と軽減税率対象分とのそれぞれの合計金額が必要です。

 

 

・総額表示の義務

 

 総額表示の義務は、値札などに消費税を含んだ商品の総額を表示することにより、消費者がいくら支払えばよいかを購入前に明らかにするものです。したがって、製造・卸の段階、つまり事業者間取引は、総額表示義務の対象となりません。

 また、総額表示の義務は、値札・店内掲示・チラシ・カタログなどであらかじめ表示する場合を対象とします。したがって、取引成立後に作成される領収書や請求書などにおける表示については、対象になりません。

 

 総額表示の具体的な方法については、いろいろな方法があり得ます。次のような表示方法は、いずれも総額表示と認められます。

① 55,000円

② 55,000円(税込)

③ 55,000円(税抜価格50,000円)

④ 55,000円(うち消費税5,000円)

⑤ 55,000円(税抜価格50,000円、消費税5,000円)

 

 なお、次のような表示は、税込価格が明示されないので、総額表示には該当しません。

① 50,000円(税抜)

② 50,000円+消費税

③ 税抜価格50,000円(消費税5,000円)

 

 なお、軽減税率導入により複数税率となったことに伴い、事業者の事務手数に配慮して、2021年(令和3年)3月31日までは、総額表示ではなく外税表示も認められていました。つまり、スーパー・コンビニなどで、値札は税抜価格で表示し、レジの段階で消費税を加算する方式です。ただし、2021年(令和3年)4月1日からは、原則どおり、総額表示が必要となります。

 

 

※領収書の書き方などについては、「領収書」参照。

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。