「消費税の基本…しくみと課税・非課税・対象外」

 

2020年(令和2年)8月4日(最終更新2021年9月25日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・消費税のしくみ

 

 消費税は標準税率10%です(他に、軽減税率8%があります。)。内訳は国税である消費税7.8%と地方消費税2.2%です。国税と地方税とを合わせて消費税(または消費税等)と呼んでいます。消費税等という場合の「等」は、地方消費税を指しています。納付は、まとめて国(税務署)に支払います。

 

 図を使って、消費税のしくみを説明します(標準税率10%の課税取引のみという仮定)。A社が商品をB社に税込み770で販売し、B社はその商品を消費者に税込み990で販売するものとします。

 A社からB社への販売価格のうちには770×10/110で70、B社から消費者への販売価格のうちには990×10/110で90の消費税が含まれています。

 この取引全体の消費税は、90です。これは、結局、消費者が負担しています。すなわち、消費者は、B社より購入するとき、この商品の消費税90を支払っています。ただし、納付は、A社とB社とで、按分します。すなわち、A社の納付額は70、B社の納付額は90から70を差し引いた20となります(多段階課税前段階控除といいます。)。消費税は、このようなしくみです。

 B社は、自社の付加価値分20を納付していると見ることもできます。したがって、消費税は、付加価値税の一種です。

 

 

 法人における納付は、原則、課税期間終了後2か月以内ですその場合、中間納付額を差し引きます。中間納付額は、前年度の課税期間の消費税(国税)の年税額に応じて、次のようになります(基準となるのは、消費税全体ではなく、国税部分(標準税率でいえば7.8%部分)です。)。                                   

 

・課税取引、非課税取引、課税対象外取引

 

(1) 課税取引

 

 消費税のかかる取引を課税取引といい、そのうち、受け取る(預かる)方の取引を課税売上げ、支払う方の取引を課税仕入れといいます。課税取引とは、次の4つの要件をすべて満たしたものをいいます。1つでも満たさないと、課税取引とはなりません。

 

① 国内において行うもの(国内取引)であること。

② 事業者(個人事業者と法人)が事業として行うものであること。

③ 対価を得て行うものであること。

④ 資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供であること。

 

 すなわち、課税売上げ・課税仕入れは、簿記や会計でいう売上・仕入よりも広い概念です。課税売上げは、資産・役務(サ-ビス)の提供をいうので、商品などの売上だけでなく、固定資産売却代なども含まれます(固定資産売却代は、売却益ではなく、売却代金という総額です。)。課税仕入れには、商品などの仕入だけでなく、経費や有形無形固定資産・繰延資産の取得なども含まれます。

 消費税においては、減価償却で期間配分するという考え方はありません。建物や器具備品などを取得したときには、取得価額が課税仕入れとなります。

 

(2) 非課税取引

 

 取引のうちには、本来は課税だが、例外的に非課税とされているものがあります。この非課税取引(非課税売上げ、非課税仕入れ)には、次の2つのものがあります。

① 消費という概念になじまないもの

② 社会政策的配慮に基づくもの

 ①には、土地の譲渡・貸付けや有価証券の譲渡、利息、保険料などがあります。②には、住宅の家賃などがあります。

 勘定科目でいうと、受取利息、支払利息、保険料、受取家賃・地代家賃のうちの住宅家賃などです。土地や有価証券の購入額・売却額(売却益ではありません。)も、非課税取引です。

 駐車場の賃貸料・賃借料(地代)は、舗装や区画割りがしてあるのが通例なので、土地の貸付け・借入れではなく施設の貸付け・借入れとなり、一般的に課税取引とされます。

 

(3) 課税対象外取引(不課税取引)

 

 取引には、他に、消費税の課税対象外取引(不課税取引)といわれるものがあります。国外取引、事業者以外の者が行う取引、対価性のない取引などです。

 給料・賞与・退職金・法定福利費などは、雇用契約に基づく労働の対価であり、事業として行うものではないので、課税対象外(不課税)とされています。ただし、通勤交通費や出張手当などは、旅費交通費として、課税取引となります。

 人件費以外にも、祝金・香典・見舞金・寄付金・各種の会費などは、対価性がない(一方的に支払うだけで、相手から役務の提供を受けていない。)ということで、課税対象外(不課税)となります。期首棚卸高・期末棚卸高・減価償却費・引当金繰入額・各種の税金・受取配当金・受取保険金・受取補助金(助成金、給付金)なども、「資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供」に該当しないので、対象外(不課税)です。

 

 支払側の非課税仕入れと対象外仕入れは、消費税の計算には関係しません。非課税と課税対象外の区別も不要です。支払側については、課税仕入れに該当するか否かの区別さえすればよいわけです。

 

・消費税の計算方法

 

 消費税の原則課税(一般課税、本則課税)の計算は、次のように表すことができます。差し引かれる仕入控除税額が多くなると、差し引き後の納付額が少なくなります。

課税売上げの消費税額-課税売上げに対応する課税仕入れの消費税額(仕入控除税額)=納付額

 

 実際の消費税申告書では、国税としての消費税をまず計算し、その後、地方消費税の計算をするという2段階になっています。標準税率10%の取引のみと仮定すると、直接10%の計算をするのではなく、7.8%+2.2%(7.8%×22/78)という計算をします。

① 課税売上げ(税込み)×100/110×7.8%-課税仕入れ(税込み)×7.8/110=消費税(国税)

② 消費税(国税)×22/78=地方消費税

③ ①+②=納付額

 

 消費税は、各事業年度における受け取った(預かった)課税売上げの消費税から支払った課税仕入れの消費税を差し引いて、残額を納付します。この課税仕入れの消費税を差し引くことを「仕入税額控除」といい、差し引かれた消費税を「仕入控除税額」といいます。

 仕入税額控除の対象となるのは、理論的には、課税仕入れのうち課税売上げに対応する部分だけです。課税仕入れのうち非課税売上げ・対象外売上に対応する部分は、按分計算して、税額控除できないとするのが理論的です。

 しかし、実際には、次の図のような計算をすることになります(対象外売上げには、矢印が伸びていません。)。課税仕入れにかかる消費税を、対象外売上げは考慮せずに、課税売上げと非課税売上げの2つで按分します。つまり、課税仕入れにかかる消費税のうち、対象外売上げに対応する部分はないという仮定です。

 これは、仕入税額控除できる金額が多くなるため、納税者有利の規定です。ただし、非営利法人では、補助金などの対象外売上げがかなりの比重を占めることが考えられるため、民間企業とは異なる計算方法が採られています。

 

 次に、課税売上高5億円以下かつ課税売上割合が95%以上の場合には、さらに納税者有利になっています。その場合には、事務手数を省くため、課税仕入れにかかる消費税が全額、課税売上げに対応するものという仮定をとっています。つまり、課税仕入れが全額仕入税額控除できるわけです。

 

 最後に、話は変わりますが、人件費その他の「対象外」や「非課税仕入れ」には、消費税はかかっていません。企業は、課税売上げから課税仕入れを控除するわけですが、人件費などは消費税がかかっていないので、控除できる課税仕入れには該当しません。ということは、企業は、課税売上げのうち人件費などに対応する分の消費税を納付していると見ることもできます。

 

 

 ※本稿は、次の拙稿を大幅に加筆修正したものです。

寺田誠一稿『経理の疑問点スッキリ解明 第15回 消費税を意識した仕訳』月刊スタッフアドバイザー 2010年(平成22年)6月号

 

 

※課税売上割合95%未満の場合には、「一括比例配分方式と個別対応方式」参照。

※小規模な事業者については、「簡易課税」「免税事業者」参照。

※実務的な消費税のパソコン入力方法については、「税込経理方式・税抜経理方式と消費税内税入力」参照。

※消費税の決算整理については、「税込経理方式と税抜経理方式の決算整理」参照。

※非営利法人の消費税については、「非営利法人の消費税」参照。

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。