「軽減税率と仕訳入力・設例」

 

2020年(令和2年)8月16日(最終更新2021年10月3日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・複数税率

 

 2019年(令和元年)10月以降の消費税は、原則、標準税率10%となりました。そして、「食品」・「新聞」は、軽減税率8%となりました。

 

 「食品」・「新聞」の売上がある場合、請求書・領収書などに、8%のものを区分して税込価格を明示しなければなりません。ただし、「食品」の売上があるのは飲食料の製造・販売などをしている企業に限られます(その場合、「食品」の仕入もあると思われます。)。「新聞」の売上があるのは、新聞販売店などに限られます。

 「食品」・「新聞」の売上がない場合には、請求書・領収書などについては、今までと何も変えなくてかまいません。

 

 一般の企業の場合、「食品」・「新聞」の軽減税率8%が現れるのは、支払側すなわち経費としてです。「食品」の勘定科目は、交際費・会議費・福利厚生費などが考えられます。具体的には、お中元・お歳暮・コーヒー豆・茶葉・お茶菓子などです。「新聞」の勘定科目は、新聞図書費・消耗品費・雑費などが考えられます。

 

 なお、リースについては、2019年(令和元年)10月1日以降のものは、当然10%です。しかし、自動車・複写機などのリースで9月30日までに契約してリース開始したものは、通常、契約期間中、旧税率8%のままです。したがって、10月以降、企業が支払うリース料のなかには、8%のものがあると思われます。

 

 結局、2019年(令和元年)10月以降は、①標準税率10%、②軽減税率8%、③旧税率8%という3とおりの税率があり得ます。複数税率が並存するということになります。パソコンの会計ソフトでは、10%が原則となっているので、勘定科目が軽減税率8%や旧税率8%であるときは、入力のとき税率の指示を変更する必要があります。

 

 なお、軽減税率と旧税率は同じ8%ですが、消費税申告書においては区分して計算することになっています。8%の、国税としての消費税と地方消費税の内訳が異なるからです。軽減税率8%の内訳は、国税の消費税6.24%と地方消費税1.76%です。一方、旧税率8%の内訳は、国税の消費税6.3%と地方消費税1.7%です。そのようなことで、納税者側の事務負担を増やしていることは、感心しません。

 

 

・「食品」

 

 「食品」には、飲料・食品添加物を含みます。「食品」とは、販売者が人の飲食用として販売した食品です。自販機、ネット販売、通信販売などでも、「食品」ならば軽減税率8%です。

 

 通常必要な容器・包装代・保冷剤なども、無料で「食品」の代金のうちに含まれるならば、軽減税率8%です。容器・包装代が、別途、有料の場合には、標準税率10%です。

 

 アルコール分1度以上の酒類は、標準税率10%です。アルコール分1未満のノンアルコールは、「食品」となり、軽減税率8%です。たとえば、みりんは、アルコール分1度以上なので、酒類となり、標準税率10%です。しかし、アルコール分1度未満のみりん風調味料は、「食品」となり、軽減税率8%です。アルコール分1度未満のノンアルコールビール・甘酒なども、軽減税率8%です。

 

 医薬品・医薬部外品は、「食品」ではないので、標準税率10%です。栄養ドリンクには、医薬部外品に該当するものと、医薬部外品ではなく「食品」に該当するものの両方があります。

 

 外食(食事の提供)は、飲食サービスという役務の提供であり、標準税率10%です。屋台・ショッピングセンターのフードコートなど、テーブル・いす・カウンターなどが設置されている場合には、外食扱いとなり、標準税率10%です。

 

 コンビニ・ファーストフードなどのイートイン(店内飲食)は標準税率10%、テイクアウト(持ち帰り)は軽減税率8%です。

 

 そば屋・ピザ店などの出前・宅配は、単に「食品」を届けるだけで外食ではないので、軽減税率8%です。  

 

 ケータリング(出張料理)は、配達だけなら軽減税率8%です。配達先で調理・加熱・配膳など何らかのサービスを行うと、標準税率10%です。

 

 ウォーターサーバーのレンタル料は標準税率10%、水の販売は軽減税率8%です。サーバーのレンタル料は無料で、水の販売価格のうちに含まれる場合には、全体が軽減税率8%となります。

 

 食品と食品以外で構成される一体資産(全体の価格のみで、内訳価格の表示がないもの)は、原則10%です。ただし、一体資産の価格10,000円以下で、食品の金額の割合2/3以上のものに限り、全体が軽減税率8%となります。たとえば、お中元・お歳暮用のジュースとビールのセットなどです。

 

 

・「新聞」

 

 2019年(令和元年)10月より、①定期購読契約による②週2回以上発行の新聞は、軽減税率8%となりました。税率の8%は、従前と変わらないということになります。

 軽減税率になるためには、①定期購読契約と②週2回以上発行という2つの条件をともに満たす必要があります。軽減税率8%のものは、請求書・領収書などに、税込価格を明示することが必要です。

 定期購読が必要なので、駅やホテルの売店・コンビニなどでの販売は10%です。週2回以上発行が必要なので、週1回発行の新聞は10%です。ただし、週2回以上発行で、国民の祝日・新聞休刊日などで、たまたま週1回となっても、軽減税率となります。

 スポーツ紙、業界紙、地方紙、政党機関紙、日本語以外の新聞なども、2つの条件を充たせば、軽減税率です。

 新聞の電子版は10%です(紙の新聞とは、区分して請求されます。)。本や雑誌も、新聞ではないので、10%です。

 

 新聞販売店は、新聞社から仕入れて、定期購読者に販売します。したがって、仕入(新聞社から見ると売上)は10%ですが、売上は8%です。そのため、毎月の資金繰りは支払いが従前より増えるためたいへんですが、決算時の国に支払う消費税は従前より減少します。

 

 なお、軽減税率を採用することは、税収が減るし、納税者側の事務手数が増えるので、いかがなものかと思います。「食品」についての軽減税率は、人間が生きていく上に絶対必要だからという理由で、まだ納得するところもあります。しかし、情報の提供としては、インターネット・新聞電子版・テレビ・ラジオ・本・雑誌などもあるのに、なぜ紙の「新聞」だけ軽減税率とするのかは疑問です。

 

 

・仕訳入力

 

(設例)

 次の各場合の仕訳は、どのようになりますか(会計ソフトでは、自動的に初期設定の消費税10%と記入されますが、それを訂正する必要はありますか。)。

 

① ドラッグストアで事務所備え置き用の薬10,000円を、現金で購入した。

② カフェ(喫茶店)で顧客と打ち合わせ(商談)をし、飲食代3,000円を現金で支払った。

③ スーパーマーケットで事務所備え置き用の茶葉と菓子5,000円を、現金で購入した。

④ 新聞販売店へ定期購読の新聞代8,000円を、現金で支払った。

⑤ 複写機のリース料20,000円を、普通預金より自動引き落としで支払った。このリース契約は消費税8%のとき締結したものであり、その後毎月の金額は変わっていない。賃借料処理を採っている。

 

① (借)福利厚生費 10,000 課仕入  (貸)現 金  10,000

 医薬品は食品ではないので、10%のままです。

 

② (借)会議費 3,000 課仕入  (貸)現 金  3,000

 外食は食品ではないので(会議費または交際費)、10%のままです。

 

③ (借)会議費 5,000 軽8%   (貸)現 金  5,000

 食品の購入なので、会議費(または、消耗品費)5,000円は「課税仕入れ 軽減8%」とします。

 

④ (借)新聞図書費 8,000 軽8%  (貸)現 金  8,000

 新聞図書費(または、消耗品費、雑費)8,000円は「課税仕入れ 軽減8%」とします。

 

⑤ (借)リース料 20,000 旧8%  (貸)普通預金  20,000

 リース料(または、賃借料)20,000円は「課税仕入れ 旧8%」とします。「軽減8%」ではありませんので、ご注意ください。

 

 

・(売上:標準10%、仕入:軽減8%)と(売上:軽減8%、仕入:標準10%)の設例

 

 売上と仕入について、消費税が8%から10%に変更になると、どのような影響があるのかを、設例で示してみます。設例の内容は次のとおりです。

    

 

売  上

仕  入

設例1

8

8

設例2

10

10

設例3

10

8

設例4

8

10

 

 (設例1)・・・売上:旧8%、仕入:旧8%のケース

 

 課税売上(本体価格、税抜価格)50,000千円、課税仕入(本体価格、税抜価格)35,000千円 消費税:旧8%

 

 

①課税売上

②課税仕入

①-②

税抜価格

50,000

35,000

利益15,000

消費税

(8)4,000

(8)2,800

納付1,200

税込価格

54,000

37,800

16,200

 

  税抜経理方式で、消費税納付までの仕訳(消費税は別記)を示すと、どのようになりますか(仕入税額控除は全額控除)。千円単位で記入し、勘定科目は、現金・売上・仕入を使用のこと。

 

(借)現   金 54,000 (貸)売   上 50,000

                仮受消費税   4,000

 

(借)仕   入 35,000 (貸)現   金 37,800

  仮払消費税   2,800

 

(借)仮受消費税  4,000 (貸)仮払消費税  2,800

               未払消費税   1,200

 

(借)未払消費税  1,200 (貸)現   金  1,200

 

  

(設例2)・・・売上:標準10%、仕入:標準10%のケース

 

 課税売上(本体価格、税抜価格)50,000千円、課税仕入(本体価格、税抜価格)35,000千円 消費税:標準10%

 

 

①課税売上

②課税仕入

①-②

税抜価格

50,000

35,000

利益15,000

消費税

(10)5,000

(10)3,500

納付1,500

税込価格

55,000

38,500

16,500

 

  税抜経理方式で、消費税納付までの仕訳(消費税は別記)を示すと、どのようになりますか(仕入税額控除は全額控除)。千円単位で記入し、勘定科目は、現金・売上・仕入を使用のこと。

 

(借)現   金 55,000 (貸)売   上 50,000

               仮受消費税    5,000

 

(借)仕   入 35,000 (貸)現   金 38,500

   仮払消費税   3,500

 

(借)仮受消費税  5,000 (貸)仮払消費税  3,500

               未払消費税  1,500

 

(借)未払消費税  1,500 (貸)現   金  1,500

 

 設例2は、設例1と比べると、税込みの売上も仕入も、消費税が旧税率8%から標準税率10%に、2%増加しています。それにより、税込価格は、売上も仕入も増えますが、それは、納付する消費税が増えただけであり、利益15,000千円は、設例1と変わりません。

 

 

(設例3)・・・売上:標準10%、仕入:軽減8%のケース

 

 課税売上(本体価格、税抜価格)50,000千円、課税仕入(本体価格、税抜価格)35,000千円 消費税:課税売上は標準10%、課税仕入は軽減8%

 

 

①課税売上

②課税仕入

①-②

税抜価格

50,000

35,000

利益15,000

消費税

(10)5,000

(8)2,800

納付2,200

税込価格

55,000

37,800

17,200

 

  税抜経理方式で、消費税納付までの仕訳(消費税は別記)を示すと、どのようになりますか(仕入税額控除は全額控除)。千円単位で記入し、勘定科目は、現金・売上・仕入を使用のこと。

 

(借)現   金 55,000 (貸)売   上 50,000

               仮受消費税    5,000

 

(借)仕   入 35,000 (貸)現   金 37,800

  仮払消費税   2,800

 

(借)仮受消費税  5,000 (貸)仮払消費税  2,800

               未払消費税  2,200

 

(借)未払消費税  2,200 (貸)現   金  2,200

 

 設例3は、設例1(旧8%)と比べると、消費税が、課税売上だけ旧税率8%から標準税率10%に増加したものです。すると、税込価格が、課税売上だけ増えて課税仕入は変わらないので、設例1に比べて、日常のキャッシュフロー(資金繰り)は楽になります。しかし、その増えた消費税は納付することになりますので、納付時にはその分のキャッシュを用意しておかなければなりません。

 

 具体的に、設例3の課税売上の税込価格は、設例1と比べて、54,000千円から55,000千円に1,000千円増加しています。その分、設例3の消費税納付額は、設例1と比べて、1,200千円から2,200千円に1,000千円増加しています。

 設例3の利益15,000千円は、設例1と変わりません。

 仕入が軽減8%で、売上が標準10%になる設例3のようなケースは、飲食店(外食産業)などです。

 

 

(設例4)・・・売上:軽減8%、仕入:標準10%のケース

 

 課税売上(本体価格、税抜価格)50,000千円、課税仕入(本体価格、税抜価格)35,000千円 消費税:課税売上は軽減8%、課税仕入は標準10%

 

 

①課税売上

②課税仕入

①-②

税抜価格

50,000

35,000

利益15,000

消費税

(8)4,000

(10)3,500

納付500

税込価格

54,000

38,500

15,500

 

  税抜経理方式で、消費税納付までの仕訳(消費税は別記)を示すと、どのようになりますか(仕入税額控除は全額控除)。千円単位で記入し、勘定科目は、現金・売上・仕入を使用のこと。

 

(借)現   金 54,000 (貸)売   上 50,000

               仮受消費税  4,000

 

(借)仕   入 35,000 (貸)現   金 38,500

  仮払消費税  3,500

 

(借)仮受消費税  4,000 (貸)仮払消費税  3,500

              未払消費税     500

 

(借)未払消費税   500  (貸)現   金    500

 

 設例4は、設例1(旧8%)と比べると、消費税が、課税仕入だけ旧税率8%から標準税率10%に増加したものです。すると、税込価格が、課税仕入だけ増えて課税売上は変わらないので、設例1に比べて、日常のキャッシュフロー(資金繰り)は苦しくなります。しかし、消費税納付時の支払額は、その分減少するということになります。

 

 具体的に、設例4の課税仕入の税込価格は、設例1と比べて、37,800千円から38,500千円に700千円増加しています。一方、設例4の消費税納付額は、設例1と比べて、1,200千円から500千円に700千円減少しています。通算すれば、結局、プラスマイナス0です。

 設例4の利益15,000千円は、設例1と変わりません。

 仕入が標準10%で、売上が軽減8%になる設例4のようなケースは、新聞販売店などです。

 

 

※新聞販売店については、「新聞販売店の会計と税務」参照。 

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。