「会計と税務の未払・未収税金4項目の関係…利益積立金の増減」

 

2021年(令和3年)9月14日(最終更新2021年10月19日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・会計上と税務上の用語の違い

 

 会計上と税務上の用語の違いについて、まとめておきます。

 

① 当期純利益当期利益

 損益計算書の当期純利益または当期純損失の額は、別表四の一番上の行に記載されます。別表四では、それらを「当期利益」または「当期欠損」といいます。

 

② 繰越利益剰余金繰越損益金

 貸借対照表の純資産の部における繰越利益剰余金の額は、別表五(一)Ⅰで納税充当金の上に記載されます。別表五(一)Ⅰでは、「繰越損益金」といいます。

 

③ 未払法人税等納税充当金

 貸借対照表の流動負債における未払法人税等の額は、別表五(一)Ⅰの下部で繰越損益金と未納法人税の間に記載されます。別表五(一)Ⅰでは、「納税充当金」といいます。

 

④ 未収還付法人税等と仮払税金

 貸借対照表の流動資産における未収還付法人税等の額は、別表五(一)Ⅰの下部で、通常、繰越損益金の上に記載されます。別表五(一)Ⅰでは、通常、「仮払税金」とします。

 

 

 

会   計

税   務

当期純利益・当期純損失(損益計算書)

当期利益・当期欠損(別表四)

繰越利益剰余金(貸借対照表)

繰越損益金(別表五)

未払法人税等(貸借対照表)

納税充当金(別表五)

未収還付法人税等(貸借対照表)

仮払税金(別表五)

 

  

・各項目の取扱い

 

(1) 損益面 

 

 

会計上

税務上

納付税金

費用計上(法人税等)

損金不算入

還付税金

収益計上(法人税等還付税額)

益金不算入

 

 法人税(地方法人税を含む。)・法人都道府県民税・法人市町村民税の納付額(損益計算書の「法人税等、住民税及び事業税」、通称「法人税等」)は、税務上、損金となりません。したがって、別表四で加算します。

 同様に、還付額(損益計算書の「法人税等還付税額」)も益金となりません。 別表四で減算します。

 

(2) 残高面

 

 別表五()

      

期首利益積立金

当期の増減

翌期首利益積立金

     減

     増

未収還付法人税

 

  

D 

 

未収還付道府県民税

 

 d 

D 

 

未収還付市町村民税

 

D 

 

仮払税金

△ 

 

△C 

△ 

繰越損益金

 

 

 

 

納税充当金

 

 

 

未納法人税

△       b

△      B                      

未納道府県民税

△      

△        B     

未納市町村民税

△       b

△      B   

合計額

 

 

 

 

※ここでは略しましたが、未納法人税、未収還付法人税には、地方法人税も含みます。

※増と減の網掛けは、別表四と対応する部分。 別表四の加算:A、b、c、別表四の減算:a、C,d。

※網掛けのないBとDは別表四と対応せず。

 

A、B、C、Dにおける利益積立金のプラスマイナスは、次表のとおりです。a、b、c、dにおける利益積立金のプラスマオナスは逆になります。

 

会計上(見積)

税務上(抽象的・観念的・正確)

未払税金

利益積立金(未払法人税等納税充当金A

△利益積立金(未納法人税など)B

未収税金

△利益積立金(未収還付法人税等仮払税金C

利益積立金(未収還付法人税など)D

  ※会計上の「未収還付法人税等」の税務上の用語は、通常、「仮払税金」で、別表五(一)の「未収還付法人税」などではありません。まぎらわしいので、ご注意ください。

 

 

A:会計上の未払額(未払法人税等=納税充当金)

a:その取崩(減少、消滅)

B:税務上の未納額(別表五(一)の未納法人税・未納道府県民税・未納市町村民税)

b:その消滅

C:会計上の未収額(未収還付法人税等=仮払税金)

c:その回収(入金、消滅)

D:税務上の未収額(別表五(一)の未収還付法人税・未収還付道府県民税・未収還付市町村民税)

d:その消滅

 

 

 A:見積額である会計上の未払額(未払法人税等=納税充当金)は、負債ではなく、利益積立金の増加とみます。会計上は負債に計上していても、税務上は負債とみないということです。したがって、未払法人税等(納税充当金)の繰入額である損益計算書の法人税等は損金とならず、別表四で加算されます。

 

 B:抽象的・観念的・正確な税務上の未納額(未納法人税など)は、利益積立金からマイナスします(△の利益積立金の発生=利益積立金の減少)。期末(翌期首)の利益積立金は、正確な税務上の未納額を差し引いたものという定義です。なお、この税務上の未納額は、抽象的なものなので、会計処理とは結び付きません。したがって、別表四とは対応しません。

 

 C:見積額である会計上の未収額(未収還付法人税等=仮払税金)は、当期純利益のうちに入っており、利益剰余金を構成しています。しかし、税務上、利益積立金とはみません。したがって、△印で計上します(△利益積立金の発生=利益積立金の減少)。別表四では減算します。

 

 D:抽象的・観念的・正確な税務上の未収額(未収法人税など)は、利益積立金の増加となります。期末(翌期首)の利益積立金は、正確な税務上の未収額を加えたものとなります。この税務上の未収額も、抽象的なものなので、会計処理とは結び付かず、別表四とは対応しません。

 

a:未払法人税等(納税充当金)発生のAは利益積立金の増加で損金不算入なので、消滅のaは利益積立金の減少で、別表四で減算されます(※1)。

 

b:法人税などの納付は会計処理と結びつき、税金は損金不算入なので、別表四で加算します(※1)。別表五(一)では、納付義務がなくなり、△の利益積立金の消滅であり、△印を付けて減の欄に記入されます(=利益積立金の増加)。

※1:aとbについて:ただし、通常、aとbは相殺され、差額だけが別表四で加算減算されます。

 

c:△の利益積立金の消滅であり(=利益積立金の増加)、別表四の加算と結びつきます。

 

d:法人税などの還付入金は会計処理と結びつき、税金は益金不算入なので、別表四で減算します。別表五(一)では、未収債権という利益積立金は解消されたわけで(※2)、利益積立金の消滅であり、減の欄に記入されます。

※2:キャッシュで入金されたので、それらは当期純利益、すなわち、繰越損益金という利益積立金に含まれています。

 

 

 会計上と税務上(AとB、CとD、aとb、cとd)、未払と未収(AとC、BとD、aとc、bとd)、いずれの観点からも、それぞれ逆の取り扱いとなっています。税務の論理は、理論的に首尾一貫しており、整合性があります。

 

 

 ※本稿は、次の拙稿をもとに、全面的に加筆修正したものです。

寺田誠一稿『会計と税務の交差点スッキリ整理! 第1回 「会計」と「税務」の多重構造を理解する!』月刊スタッフアドバイザー 2011年(平成23年)8月号 

寺田誠一稿『会計と税務の交差点スッキリ整理! 第2回 「還付法人税等」の首尾一貫』月刊スタッフアドバイザー 2011年(平成23年)9月号

  

  

※未払法人税等(納税充当金)の計上については、「未払法人税等を未計上・計上・概算計上の申告書設例」参照。

※未収還付法人税等(仮払税金)の計上については、「未収還付法人税等を未計上・計上・概算計上の申告書設例」参照。 

※未収還付源泉所得税(仮払税金)の計上については、「未収還付源泉所得税を未計上・計上の申告書設例」参照。

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。