「圧縮記帳とリースの会計処理」

 

2020年(令和2年)9月10日(最終更新2021年7月14日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・圧縮記帳の意義

 

 圧縮記帳とは、国庫補助金・工場負担金・保険差益などの支給対象となった資産の取得原価から国庫補助金などの金額を差し引いた(圧縮した)額をもって貸借対照表価額とする方法です(直接減額方式)。国庫補助金などが収益(益金)に計上され、一方、圧縮額が費用(損金)となります。国庫補助金などは、税務上、益金扱いとなりますが、その代わりこの圧縮記帳という制度が認められています。

 交換の圧縮記帳も同様で、交換差益が収益(益金)に計上され、一方、圧縮損が費用(損金)とされます。

 

 

・圧縮記帳の方式

 

 圧縮記帳の方式には、次の2とおりあります。

① 直接減額方式

 直接減額方式は、固定資産の取得原価から国庫補助金などの額を控除して計上する方法です。

② 積立金方式

 積立金方式は、固定資産の取得原価は支出額のままとし、圧縮記帳積立金を国庫補助金などに相当する金額だけ設け、利益(所得)に与える影響を直接減額方式と同じになるように、法人税申告書で調整する方式です。

 

 

・圧縮記帳の仕訳例

 

(設例)

建物の取得原価5,000、国庫補助金4,000、直接減額方式

定額法、耐用年数20年、残存価額0

 

(仕訳)

(借)建      物  5,000   (貸)現金預金 5,000

(借)現金預金  4,000   (貸)国庫補助金4,000

(借)建物圧縮損   4,000   (貸)建      物   4,000

(借)減価償却費        50   (貸)建      物       50※ 

※:(5,000-4,000)÷20年=50

 国庫補助金に相当する金額だけ、建物を減額(圧縮)します。国庫補助金は臨時的な収入なので特別利益、圧縮損は臨時的な損失なので特別損失とされ、損益計算書に両建てで表示されます。

 

 

・圧縮記帳の効果

 

 圧縮記帳の趣旨は、課税の免除ではなく、課税の繰延べです。

 減価償却資産の場合には、圧縮記帳を行うことにより、その後、減価償却費は圧縮後の価額をもとにして計算した金額となるので、圧縮を行わなかった場合の減価償却費に比べて、費用に計上される額が少なくなります。すなわち、利益は毎期多く算出されます。結局、圧縮記帳を行うことにより、国庫補助金などを一時に課税することを避け、資産の耐用年数にわたり、順次、課税していくことになります。

 土地などの非償却資産については、売却するまで課税が延期されます。すなわち、取得原価が圧縮されているので、売却のときには、売却益がその分多く生じます。取得年度において圧縮された利益が、売却年度に表れるわけです。いいかえると、非償却資産の場合には、売却しない限り、課税されないことになります。

 

 

・貸借対照表の表示方法

 

 直接減額方式で圧縮記帳を行った場合の貸借対照表の表示方法としては、次の2とおりの方式があります。注記方式の方が一般的です。

① 控除方式

  控除方式は、取得原価から国庫補助金等に相当する金額を控除する形式で記載する方法です。

② 注記方式

  注記方式は取得原価から国庫補助金等に相当する金額を控除した残額のみを記載し、国庫補助金等の金額を注記する方法です。

 

 

 

・リース取引の意義

 

 リース取引は、賃貸借取引ですが、借手側から見ると、経済的実態は固定資産の購入と同様に考えられる場合があります。そこで、1993年(平成5年)に「リース取引に係る会計基準」が公表され、リース取引に関する会計処理が定められました。

 リース取引とは、特定の物件の所有者である貸手(レッサー)がその物件の借手(レッシー)に対し、リース期間中、これを使用収益する権利を与え、一方、借手はリース料を貸手に支払う取引をいいます。

 

 

・リース取引の種類

 

 リース取引には、次の2種類のものがあります。

① ファイナンス・リース取引

 ファイナンス・リース取引とは、解約不能とフルペイアウトの2つの要件をともに満たすリース取引をいいます。

①-1 解約不能

  解約不能とは、リース期間の中途においては、リース契約を契約上または事実上解除することができないことをいいます。

①-2 フルペイアウト

 フルペイアウトとは、借手がリース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、リース物件の使用コストを実質的に負担することをいいます。

 

② オペレーティング・リース取引

 オペレーティング・リース取引とは、ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいいます。

 

 

・リース取引の会計処理

 

① ファイナンス・リース取引の会計処理

 

 ファイナンス・リース取引は、法形式上は賃貸借取引であっても、経済的には固定資産の代金長期分割売買と同じと考えられます。したがって、その経済的実質を優先し、ファイナンス・リース取引については、原則として、売買処理とします。

  ファイナンス・リース取引には、さらに2つに分けられます。

①-1 所有権移転ファイナンス・リース取引

 所有権移転ファイナンス・リース取引とは、リース契約上の諸条件に照らして、リース物件の所有権が借手に移転すると認められるファイナンス・リース取引をいいます。

①-2 所有権移転外ファイナンス・リース取引

 所有権移転外ファイナンス・リース取引とは、所有権移転ファイナンス・リース取引以外のファイナンス・リース取引をいいます。

 

② オペレーティング・リース取引の会計処理

 オペレーティング・リース取引については、賃貸借処理を行います。

 

 

・借手側の売買処理

 

① リース契約開始時

 (借)リース資産 ×××    (貸)リース債務 ×××

 リース資産とリース債務とを、両建計上します。計上額は、原則として、リース料総額からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除した額によります。

② リース料支払時

 (借)リース債務 ×××    (貸)現金預金 ×××

    支払利息   ×××

 リース債務の元本返済部分と利息相当額部分とに分けて処理を行います。

③ 決算時

 (借)リース資産減価償却費 ×××   (貸)リース資産減価償却累計額 ×××

 所有権移転ファイナンス・リース取引のリース資産については、自己の固定資産に適用する減価償却法と同一の方法により、減価償却費を算定します。

 所有権移転外ファイナンス・リース取引のリース資産については、耐用年数はリース期間とし、残存価額は0とします。

 

 

※本稿は、次の拙著を加筆修正したものです。

寺田誠一著 『ファーストステップ会計学 第2版』東洋経済新報社2006年 「第9章 固定資産と減価償却 5 圧縮記帳 6 リース会計」 

 

 

※リースの実務と設例については、「リースの会計と税務(法人税・消費税)」参照。 

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。