「固定資産売除却・買換・圧縮記帳の会計処理(仕訳)」

 

2021年(令和3年)1月24日(最終更新2022年3月30日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・期中取得と期中売除却

 

 固定資産の減価償却は、事業の用に供したときから開始します。したがって、期中取得の場合には、減価償却費の月割計算を行います(慣例として、日割計算までは行いません。)。

 期中に売却・除却の場合には、売除却の月まで減価償却費を月割りで計上するのが原則です。ただし、減価償却費を期中では計上しないで決算においてのみ計上している中小企業では、期首の帳簿価額(簿価) (※)を取り崩すだけで、売除却した期の減価償却費は計上しないこともあります(その分は、売除却損益に含まれることになります。)。

※帳簿価額(簿価):取得価額から減価償却累計額を差し引いた額

 

(設例)

自動車  取得価額3,000,000円  定率法償却率(6年)0.333  保証率0.09911

×1年1月21日取得(使用開始)  3月決算法人  直接法

 

 税務では、月数の計算は、暦に従って計算し、1か月に満たない端数を生じたときはこれを1か月として計算します。この設例では、次のようになります。すなわち、1月21日から2月20日(応答日の前日)までで1月、2月21日から3月20日までで1月、3月21日から3月31日までで11日。合計で2か月と11日なので、切り上げて3か月となります。

 

×1年3月期

(借)減価償却費 249,750 (貸)車両運搬具 249,750

償却限度額:3,000,000円×0.333=999,000円

      999,000円×3/12=249,750円

 なお、念のため、償却保証額を求めてみると、3,000,000円×0.09911=297,330円となります。償却保証額297,330円と比較するのは、月数按分をする前の999,000円です(月数按分をした後の249,750円ではありません。)。

 

×2年3月期

(借)減価償却費  915,833 (貸)車両運搬具 915,833

償却限度額:(3,000,000円―249,750円)×0.333≒915,833円

 

(設例)

自動車  期首帳簿価額(未償却残高)1,961,862円  定率法償却率(6年)0.333

×2年7月6日廃棄  3月決算法人  直接法

 

×3年3月期(除却までの減価償却費を計上する方法)

(借)減価償却費     217,766(貸)車両運搬具  217,766

(借)固定資産除却損1,744,096(貸)車両運搬具 1,744,096

償却限度額:1,961,862円 ×0.333≒653,300円

      653,300円×4/12≒217,766円

 

×3年3月期(除却までの減価償却費を計上しない方法)

(借)固定資産除却損1,961,862(貸)車両運搬具1,961,862

 期中の減価償却費は計上しないで、期首帳簿価額(未償却残高)をそのまま除却損1,961,862円とします。除却までの減価償却費を計上する方法では、減価償却費217,766円と固定資産除却損1,744,096円の合計1,961,862円となり、除却までの減価償却費を計上しない方法と比べると、費用の額としては同じになります。

 

 

・固定資産の買換え

 

(設例)

新車                        

車両本体付属品価格 2,000,000円(消費税込み)     

自動車取得税等      100,000円 (消費税なし)     

自賠責保険        50,000円(消費税なし)       

その他諸費用       60,000円(消費税込み)

その他諸費用       30,000円(消費税なし)

          計2,240,000円

旧車(下取車)

帳簿価額 400,000円

下取価格 300,000円(消費税込み)

 

 代金は、2,240,000円から下取価格300,000円を差し引いた1,940,000円を普通預金より支払。消費税が①内税入力と②別記入力の場合の仕訳は、それぞれどうなりますか。

 

① 内税入力

 

(借)未収入金 300,000 (貸)固定資産売却益 300,000

 旧車の下取価格は消費税では課税売上げになるので、まずそれを認識する仕訳を行います。固定資産売却益300,000円は「課税売上げ」とします。すると、パソコンの会計ソフトが、消費税を300,000×10/110≒27,272と自動計算します。

 

(借)固定資産売却益 272,728(貸)車両運搬具 400,000

     固定資産売却損 127,272

 次に、会計上は固定資産の売除却損益を差額でとらえるので、帳簿価額400,000円から消費税抜きの固定資産売却益272,728円を差し引いて、固定資産売却損127,272円を認識します。借方の固定資産売却益272,728円と固定資産売却損127,272円、貸方の車両運搬具400,000円には、「対象外(不課税)」という指示をします。

 

(借)車両運搬具 2,000,000(貸)普通預金 1,940,000

     租税公課     100,000    未収入金    300,000

   保険料        50,000

   支払手数料      60,000

   支払手数料      30,000

 

 下取価格300,000円は未収入金を取り崩し、残金1,940,000円を普通預金の貸方に計上します。車両運搬具2,000,000円と支払手数料 60,000円は「課税仕入れ」とし、保険料50,000円は「非課税仕入れ、対象外(不課税)仕入れ、対象外(不課税)のいずれか」とします。租税公課100,000円、支払手数料30,000円は「対象外(不課税)」とします。

 

② 別記入力

 

(借)未収入金 300,000(貸)固定資産売却益272,728

              仮受消費税    27,272(*1)

*1仮受消費税:300,000×10/110≒27,272

 

(借)固定資産売却益 272,728(貸)車両運搬具400,000

     固定資産売却損  127,272

 固定資産売却益272,728円と帳簿価額400,000円との差額で、固定資産売却損127,272円が計上されます。

 

(借)車両運搬具   1,818,182  (貸)普通預金 1,940,000

   仮払消費税    181,818(*2) 未収入金    300,000

     租税公課     100,000

     保険料       50,000

   支払手数料     54,546

     仮払消費税     5,454(*3)

   支払手数料     30,000

*2仮払消費税: 2,000,000×10/110¬≒181,818

*3仮払消費税: 60,000×10/110≒5,454

 

 

・リサイクル料金

 

 2005年(平成17年)1月より、自動車リサイクル法(正式名称:使用済自動車の再資源化に関する法律)が施行され、リサイクルのために必要な料金は自動車の所有者が負担することとなりました。リサイクル料金を支払うのは、車を購入したときやリサイクル料金を支払っていない車を車検に出したときです。

 

 さて、リサイクル料金は、次の5つから構成されていますが、①~④は、貸借対照表の固定資産(投資その他の資産)に計上されます(勘定科目は「預託金」など)。⑤は、資金管理のための公益法人に支払う廃車までのリサイクル料金の保管料なので、費用(損金)に計上されます。

① シュレッダーダスト料金

 自動車を解体・破砕した後のくずのリサイクルに必要な料金。

② エアバッグ類料金

 エアバッグ類のリサイクルに必要な料金。

③ フロン類料金

 カーエアコンのフロン類を破壊するために必要な料金。

④ 情報管理料金

 廃車の引取り・引渡しの情報管理に必要な料金。

⑤ 資金管理料金

 リサイクル料金の収納・管理に必要な料金。

 

 

(設例)

 次のそれぞれの場合の仕訳はどうなりますか(消費税は内税入力)。

① 自動車を購入し、リサイクル預託金10,000円、リサイクル資金管理料金400円(消費税込み)を普通預金より支払った。

②-1 ①の自動車を中古車として売却し、リサイクル預託金10,000円を回収し、普通基金に入金した。

②-2 ①の自動車を廃車とし、業者に引き渡した。

 

① 購入時

(借)預託金   10,000 (貸)普通預金 10,400

     支払手数料  400

 借方の預託金10,000円は「対象外(不課税)」、支払手数料400円は、「課税仕入れ」となります。

 

②-1 売却時

(借)普通預金 10,000 (貸)預託金  10,000 

 貸方の預託金 10,000円は、消費税では「金銭債権譲渡」と指示します。

 

②-2 廃車時

(借)支払手数料 10,000 (貸)預託金  10,000

 借方の支払手数料10,000円は「課税仕入れ」、貸方の預託金10,000円は「金銭債権譲渡」となります。

 

 

・圧縮記帳

 

 圧縮記帳は、納税の繰延べ(延期)という節税効果が得られる法人税法上の特例です(納税の免除ではありません。)。受贈益や売却益に対応させて、固定資産の取得原価を減額することにより、圧縮損という一時の損金が計上され、節税になります。

(借)現金預金 ××× (貸)〇〇益  ×××

(借)固定資産 ××× (貸)現金預金 ×××

(借)圧縮損  ××× (貸)固定資産 ×××

  

 圧縮記帳は、当初、一時の損金(圧縮損)を計上し、納税額は少なくなります。その代わり、その後の年度は、毎年少しずつ納税額が増えます。つまり、固定資産の取得原価が減額されることにより、その後の損金(減価償却費)が少なく計上され、資産の耐用年数にわたり、順次、課税されていくものです。

 そして、耐用年数経過時には、通算した納税額は、圧縮記帳を選択しなかった場合と同じになります。 結局は同じ結果になるので、圧縮記帳の選択は強制ではなく会社の任意です。圧縮記帳を行うことが可能な場合であっても、圧縮記帳を選択しないこともできます。

 

 土地などの非減価償却資産の場合には、圧縮記帳による納税の繰り延べ効果は、将来、その土地などを売却するまで続きます(土地などを売却しなければ、節税効果は永久に続きます。) 

 

 圧縮記帳の会計処理には、直接減額方式と積立金方式(原則、税効果会計を適用、すなわち繰延税金負債を計上)とがあります。積立金方式は、取得原価を直接減額しないで、積立金を設けることにより、税務上の所得に対する影響を直接減額方式と同じにする方法です。中小企業では、処理が簡便なので、直接減額方式が多く採用されています。取得原価を費用配分していく取得原価主義会計の見地からは、取得原価を減額しない積立金方式の方が妥当とされています。

 

 「中小企業会計指針」では、圧縮記帳の会計処理は、積立金方式を原則としています。ただし、国庫補助金、工事負担金等は直接減額方式を認めています。これは、企業会計原則が直接減額方式を認めているためです。

 「中小企業会計指針」では、また、交換、収用等、特定資産の買換えで交換に準ずると認められるものは、直接減額方式を認めています。このような同一種類・同一用途の場合には、資産の連続性が認められるので、会計上両者を同一視することができ、実質的に取引がなかったものと考えることができるからです。

 

 「中小企業会計要領」では、圧縮記帳については、特に規定はありません。

 

 

 法人税法では、国庫補助金、工事負担金、収用、特定資産の買換えは、直接減額方式と積立金方式ともに認めていますが、交換は直接減額方式しか認めていません。交換の場合には、資産の連続性が明らかなので、取得原価をそのまま引き継ぐ直接減額方式が妥当であると、税務は考えているからでしょう。

 

(設例)

 自動車の取得価額2,000,000円(期首に取得) 国庫補助金250,000円  入出金は普通預金  定率法償却率(6年)0.333

①圧縮記帳を直接減額方式で行った場合、②圧縮記帳を積立金方式(税効果会計適用せず)で行った場合、それぞれ初年度の仕訳はどうなりますか(消費税は内税入力)。

 

① 直接減額方式

 

(借)車両運搬具  2,000,000 (貸)普通預金    2,000,000

(借)普通預金    250,000 (貸)国庫補助金収入  250,000

(借)固定資産圧縮損 250,000 (貸)車両運搬具    250,000

(借)減価償却費   582,750 (貸)車両運搬具   582,750

*減価償却費:(2,000,000―250,000)×0.333=582,750

 借方の車両運搬具2,000,000円は「課税仕入れ」となります。貸方の国庫補助金収入250,000円と借方の固定資産圧縮損250,000円は「対象外(不課税)」となります。貸方の車両運搬具250,000円と車両運搬具582,750円も「対象外(不課税)」です。

 国庫補助金収入と固定資産圧縮損は、臨時的な損益なので、損益計算書では原則として特別損益に表示します。

 

② 積立金方式

 

(借)車両運搬具  2,000,000 (貸)普通預金   2,000,000

(借)普通預金    250,000 (貸)国庫補助金収入 250,000

(借)減価償却費   666,000 (貸)車両運搬具   666,000

(借)繰越利益剰余金 250,000 (貸)圧縮積立金   250,000

(借)圧縮積立金     83,250 (貸)繰越利益剰余金   83,250

*減価償却費:2,000,000×0.333=666,000

*圧縮積立金:666,000―582,750=83,250

    または250,000×0.333=83,250

 この方式では、補助金分250,000円を繰越利益剰余金から圧縮積立金に振り替えます。一方、直接減額方式と積立金方式との減価償却費の差額83,250円を圧縮積立金から取り崩し、繰越利益剰余金に持っていきます。これらの処理は、株主資本等変動計算書に表示されます。

 また、法人税申告書別表四において、当期の利益から250,000円減算し、逆に当期の利益に83,250円加算します。これらの処理により、直接減額方式と同じ所得となります。

 

 

※本稿は、次の拙稿をもとに加筆修正を加えたものです。

寺田誠一稿『経理の疑問点スッキリ解明 第19回 減価償却 パート2』月刊スタッフアドバイザー 2010年(平成22年)10月号

寺田誠一稿『会計と税務の交差点スッキリ整理! 第9回 「圧縮記帳」の異口同音』月刊スタッフアドバイザー 2012年(平成24年)4月号

  

 

※圧縮記帳の税効果会計の設例については、「圧縮記帳の税効果会計と申告書設例」参照。

※消費税の支払側については、非課税仕入れ・対象外(不課税)仕入れ・対象外(不課税)のいずれも同じという点については、「一括比例配分と個別対応方式」参照。

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。