「百貨店納入(出店)業者の収益認識会計と消費税の設例…消化仕入(売上仕入)とマネキン(派遣店員)」

 

2021年(令和3年)7月26日(最終更新2022年8月5日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・はじめに…百貨店の仕入形態

 

 百貨店(デパート)は、数多くの商品を取り扱っているが、その仕入の形態には、主に、次の3種類があると思われる。

① 買取仕入

 通常の仕入である。商品納入時に、所有権は納入業者より百貨店に移転する。百貨店が、在庫リスクと保管責任を負う。

② 条件付買取仕入

 商品納入時に、所有権は納入業者より百貨店に移転するが、その後、一定期間、百貨店は返品が可能である。百貨店には、保管責任はあるが、在庫リスクはない。

③ 消化仕入

 商品納入時には、所有権は納入業者より百貨店に移転しない。百貨店が商品を販売したとき、所有権が納入業者より百貨店に移転する。百貨店には、保管責任も、在庫リスクもない。

 

 百貨店の立場からまとめてみると、次表のようになる。

 

所有権

保管責任

在庫リスク

買取仕入

条件付買取仕入

消化仕入

 

 本稿は、消化仕入の形態の百貨店、およびその納入(出店)業者の売上とマネキン(派遣店員)代の会計上・税務上の特徴点について、仕訳を交えて論じたものである。なお、文中、意見にわたる部分は私見である。

 

 

・条件付買取仕入と消化仕入の異同点

 

 条件付買取仕入・消化仕入は、商品在庫のリスクを負いたくない商品や、専門的な商品知識・販売技術が必要な商品などについて採られる仕入形態である。百貨店では、これらの仕入形態が多くなっている。

 条件付買取仕入・消化仕入は、商品の販売についても、納入業者側で販売員を派遣するのが通例である。また、条件付買取仕入・消化仕入は、買い取りに比べてリスクが少ない分、百貨店の利益率は低くなる。

 

  条件付買取仕入と消化仕入の相違点であるが、それは主に次の2点であると考える。

① 百貨店の仕入計上を、商品納入時に行うか、販売時に行うかという点。

 条件付買取仕入では、百貨店は、商品納入時に仕入計上するが、消化仕入では、販売時に仕入計上する。

② 紛失・盗難・破損などの棚卸減耗を、百貨店側で負担するか、それとも業者側で負担するかという点。

 条件付買取仕入では、棚卸減耗は百貨店の負担となるが、消化仕入では、納入業者の負担となる。すなわち、商品の保管責任を負うのは、条件付買取仕入では百貨店なのに対し、消化仕入では納入業者となる。

 

 

・消化仕入の特徴

 

 百貨店では、アパレル(衣料品)や雑貨などについて、また、催事場において、消化仕入という仕入形態が採られることがある。消化仕入は、業界用語で「売上仕入(うりあげしいれ)」「売仕(うりし)」とも呼ばれる。

 消化仕入とは、商品を百貨店が顧客に販売したとき、同時に、その商品を百貨店が納入業者より仕入れたものとするという形態である。百貨店から顧客への販売と、業者から百貨店への販売という2つの取引が、同時・瞬間的に行われたとみなすものである。

 

 消化仕入では、所有権や保管責任は、販売されるまで、納入業者側にある。紛失・盗難・破損等の棚卸減耗は、業者側の負担となる。

 

 消化仕入の場合、商品管理ばかりでなく、販売も業者側で担当するのが通例である。すなわち、納入業者が、商品の搬入搬出を行い、販売員を派遣して、自社の商品を百貨店の売り場で販売するわけである。実質的には、百貨店は場所を提供しているにすぎない(完全歩合の売り場賃貸といえる。)。

 

 百貨店の売り場では、納入業者が、直接、顧客に販売しているように見える。しかし、法形式的には、業者はあくまで百貨店に販売したのであり、そのとき同時に、百貨店が顧客に販売したとみる。顧客の立場からは、百貨店の店員と納入業者の販売員との区別はつかないので、顧客は当然百貨店(の販売員)より購入したと考えている。

 

 資金の流れを見ると、現金で販売した場合には、百貨店のレジスターの中に入って百貨店の管理となり、後日、手数料・家賃部分を差し引いて納入業者に振り込まれる。

 

 

・消化仕入の2つ会計処理(仕訳)

 

(設例1)

 A百貨店の売り場で110,000円現金販売し、消化仕入の掛け率は70%であった。すなわち、A百貨店は30%33,000円を差し引き、70%77,000円を納入業者B社に支払う。A百貨店と納入業者B社の仕訳は、それぞれどのようになりますか(金額は税込。消費税10%。仕訳は消費税別記(仮払消費税・仮受消費税を明示する方法))。

 

 110,000   77,000

顧客 → A百貨店 → B社

 

 業界用語では、設例でいう税込110,000円・税抜100,000円(百貨店の売上価格)のことを上代(じょうだい)、税込77,000円・税抜70,000円(百貨店の仕入価格)のことを下代(げだい)という。

 

 消化仕入には、2つの会計処理(仕訳)が考えられる。本稿では、売上高を総額で大きくとらえるものを「総額法」、売上高を差額で小さくとらえるものを「純額法」と呼ぶこととする。

 

(A百貨店)

第1法(総額法)

(借)現   金 110,000 (貸)売   上 100,000

                仮受消費税  10,000

(借)仕   入  70,000 (貸)買 掛 金  77,000

   仮払消費税    7,000

第2法(純額法)

(借)現   金 110,000 (貸)売   上  30,000

                仮受消費税  3,000

                買 掛 金   77,000

 純額法の「買掛金」の勘定科目は、「預り金」とすることも考えられる。

 

(B社)

第3法(純額法)

(借)売 掛 金  77,000 (貸)売   上  70,000

               仮受消費税  7,000

第4法(総額法)

(借)売 掛 金   77,000 (貸)売   上 100,000

   支払手数料   30,000   仮受消費税   10,000

  仮払消費税    3,000

 純額法の「売掛金」の勘定科目は、「預け金」とすることも考えられる。

 

 A百貨店の総額法は、消化仕入契約という法形式に沿った処理方法である。A百貨店が顧客に対する売上100,000円を計上すると同時に、B社に対する仕入70,000円を計上する。B社は、A百貨店に対する売上70,000円を計上する。

 一方、A百貨店の純額法は、販売の実態に即した方法である。A百貨店は、B社に売り場を貸しているとみることができるので、その賃貸手数料30,000円を売上に計上する。B社は、顧客に対する売上100,000円を計上する。

 

 A百貨店が総額法を採ればB社は純額法(設例1では、第1法と第3法)、A百貨店が純額法ならばB社は総額法(設例1では、第2法と第4法)というのが、理論的に整合性のとれた結びつきである。ただし、通常、A百貨店とB社は独立した会社なので、お互いの処理の対応を意識することはないと思われる。

 

 

 ・収益認識会計基準と消費税

 

 百貨店では、従来、総額法の会計処理が採られていた。総額法と純額法とで利益は変わらないが、総額法の方が売上高を大きく表示することができるからであろう。

 

 会計上の収益(売上)の認識については、企業会計基準委員会から、2018年(平成30年)3月30日に「収益認識に関する会計基準(以下、本稿では収益認識会計基準)」「収益認識に関する会計基準の適用指針(以下、本稿では適用指針)」が公表されたので、上場企業などは、以後、この基準に従うことになる。

 消化仕入の場合、適用指針によれば、百貨店は販売前においては商品を「支配」していないため、百貨店の履行義務は商品が提供されるよう手配することである。消化仕入の場合、百貨店は「本人」ではなく、「代理人」に該当する(適用指針28「小売業における消化仕入等」。したがって、収益認識会計基準に従えば、百貨店は、消化仕入の会計処理としては、純額法を採用することになる。

 売上高の表示が減少するのを避けるため、今後は、消化仕入ではなく、買取仕入や条件付買取仕入が増えるかも知れない。

 

 国税庁2018年(平成30年)5月公表の「収益認識基準による場合の取扱いの例」によれば、消化仕入の場合、百貨店は、会計上・法人税法上は純額法を採っていても、消費税法上は総額法により、消費税を計上しなければならない。消費税においては、契約に従った資産の譲渡が課税売上げ・課税仕入れに該当するので、総額法の適用ということになるのだと思われる。

 

 なお、消化仕入の場合、納入業者の消費税における業種であるが、契約上、業者の売上先は百貨店なので、小売業ではなく卸売業となる(国税庁 質疑応答事例「デパートのテナント」)。したがって、納入業者が消費税の簡易課税を適用している場合には、第1種事業でみなし仕入率は90%となる。

 

 また、納入業者は、取扱商品が飲食料品であった場合、顧客が持ち帰りでなく百貨店内で飲食しても、消化仕入はすべて百貨店に対する売上と見るので、「飲食料品の譲渡」として消費税軽減税率8%となる(国税庁 質疑応答(項目別)平成30年4月~平成30年12月)。

 

 百貨店は、上場企業などの大企業なので、収益認識会計基準に従った会計処理を行う必要があり、純額法を採用する必要がある。一方、消費税は、総額法で把握した消費税を計上しなければならない。百貨店では、会計は純額法、消費税は総額法というねじれ現象が生ずる。

 

 

・設例1の実務上の取扱い(A百貨店)

 

 実務上、ねじれ現象を解決するため、以下のような処理が考えられる。

 

 設例1でいえば、A百貨店は消費税では総額法の会計処理をし、その後、修正仕訳を行って、会計上は純額法に変更する。

 

第1法(総額法)

(借)現   金 110,000 (貸)売   上 100,000

               仮受消費税  10,000

(借)仕   入  70,000 (貸)買 掛 金   77,000

   仮払消費税    7,000

修正仕訳

(借)売   上 70,000 (貸)仕   入 70,000

 この修正仕訳により、仮受消費税10,000円と仮払消費税7,000円に変更はないが、会計上の仕訳は純額に訂正される。まとめると、結果的に、次の仕訳となる

修正後…後述の第2法修正後と同じ結果

(借)現   金 110,000 (貸)売   上  30,000

   仮払消費税     7,000   仮受消費税    10,000

                 買 掛 金  77,000

 

 この修正過程を、消費税内税入力で示してみると、次のようになる。

 

第1法(総額法)

(借)現 金 110,000        (貸)売 上 110,000課売上

(借)仕 入   77,000 課仕入  (貸)買掛金  77,000

修正仕訳

(借)売 上 70,000 対象外  (貸)仕 入 70,000対象外 

 

 実例は少ないと思われるが、A百貨店が第2法の純額法で仕訳していた場合を考えてみる。この場合、収益認識会計基準では妥当であるが、消費税では仮払消費税と仮受消費税とを両建てで計上して総額に直すため修正仕訳が必要となる。

 

第2法(純額法)

(借)現   金 110,000 (貸)売   上  30,000

                仮受消費税  3,000

                買 掛 金  77,000

修正仕訳

(借)仮払消費税   7,000 (貸)仮受消費税  7,000

修正後…前述の第1法修正後と同じ結果

(借)現   金 110,000 (貸)売   上  30,000

    仮払消費税    7,000    仮受消費税   10,000

                  買 掛 金   77,000

 

 この修正過程を、消費税内税入力で示してみると、次のようになる(修正仕訳は別記入力とせざるを得ない。)。

第2法(純額法)

(借)現   金 110,000    (貸)売   上 33,000課売上

                   買 掛 金 77,000

修正仕訳

(借)仮払消費税  7,000対象外 (貸)仮受消費税 7,000対象外

 

 

 

・設例1の実務上の取扱い(B社)

 

 次に、B社の会計処理を考えてみる。B社は、簡便なので、純額法で仕訳していることが多いと思われる。消化仕入の法形式に従い、A百貨店の課税仕入れ70,000円とB社の課税売上げ70,000円が対応しているため、消費税はそのままでよい。

 一方、B社は、収益認識会計基準に従えば、会計上、売上高を総額に直すための修正仕訳を行う(この修正仕訳は消費税には影響しない。)。

 

第3法(純額法)

(借)売 掛 金 77,000 (貸)売   上  70,000

                仮受消費税   7,000

修正仕訳

(借)支払手数料  30,000 (貸)売   上  30,000

修正後…後述の第4法修正後と同じ結果

(借)売 掛 金 77,000 (貸)売   上  100,000

   支払手数料    30,000    仮受消費税    7,000

 

 消費税内税入力では、次のようになる。

第3法(純額法)

(借)売 掛 金  77,000     (貸)売 上  77,000課売上

修正仕訳

(借)支払手数料  30,000対象外  (貸)売 上  30,000対象外 

 

 なお、B社は中小企業で、収益認識会計基準に準拠しないということも考えられる。その場合には、純額法のままで、会計上、総額法に変更するための修正仕訳を行わないこともあり得る。

 

 

 実例は少ないと思われるが、B社が第4法の総額法で仕訳していた場合を考えてみる。この場合、収益認識会計基準では妥当であるが、消費税では仮払消費税と仮受消費税とを相殺して純額に直すことになる。

 

第4法(総額法)

(借)売 掛 金  77,000 (貸)売   上 100,000

   支払手数料   30,000    仮受消費税   10,000

   仮払消費税   3,000

修正仕訳

(借)仮受消費税    3,000 (貸)仮払消費税   3,000

修正後…前述の第3法修正後と同じ結果

(借)売 掛 金 77,000 (貸)売   上  100,000

   支払手数料   30,000     仮受消費税      7,000

 

 消費税内税入力では、次のようになる(修正仕訳は別記入力で入れざるを得ない。)。

第4法(総額法)

(借)売 掛 金77,000       (貸)売   上 110,000課売上

   支払手数料 33,000課仕入

修正仕訳

(借)仮受消費税 3,000対象外 (貸)仮払消費税 3,000対象外  

         

  

・口座貸し、口座借りの会計処理(設例2)

 

(設例2)

 C社は、A百貨店の消化仕入の口座を有しているが、D社に口座を貸している。D社は、A百貨店の売り場で110,000円現金販売する。A百貨店は33,000円を差し引き、C社に77,000円を支払う。C社は5,500円を差し引き、D社に71,500円支払う。C社とD社の仕訳は、それぞれどのようになりますか(金額は税込。消費税10%。仕訳は消費税別記。)。

 

 消化仕入の納入業者が、自社で商品の納入・販売をしないで、納入し売り場で販売する権利(これを取引口座という。)を、他の業者に貸す場合がある。貸す側からいえば「口座貸し」、借りる側からいえば「口座借り」である。

 この口座貸し・口座借りの関係は、消化仕入と考えられる。設例2で言えば、A百貨店より顧客への販売、C社よりA百貨店への販売、D社よりC社への販売の3つが同時瞬間的に行われたとみるのが、消化仕入である。

 

 口座貸し・口座借りの関係を、委託販売と見ることができないかという問題がある。C社がD社に販売を委託したと見れないかである。委託販売と見るためには、販売するまでC社が商品を支配し、C社による商品の返還要求や第三者への販売が可能などの条件がある(適用指針76)。口座貸し・口座借りの場合には、このような条件に該当しないと考える。商品を支配しているのはD社であり、C社は口座を貸しているだけで商品の管理には関与していない。

 

 

  110,000    77,000    71,500

顧客  →  A百貨店  →  C社  →  D社

 

 

  A百貨店の処理は設例1と同じなので、ここでは省略する。

  

 C社の会計処理は、次のように2とおり考えられる。

 

第5法(総額法)

 (借)売 掛 金  77,000 (貸)売   上  70,000

                仮受消費税  7,000

(借)仕   入  65,000 (貸)買 掛 金   71,500

   仮払消費税   6,500

第6法(純額法)

(借)売 掛 金  77,000 (貸)売   上   5,000

               仮受消費税     500

               買 掛 金  71,500

 

 D社の処理も、次のように2とおり考えられる。

 

第7法(純額法)

(借)売 掛 金  71,500 (貸)売   上 65,000

                仮受消費税     6,500

第8法(総額法)

(借)売 掛 金  71,500 (貸)売   上  100,000

   支払手数料   35,000    仮受消費税    10,000

   仮払消費税   3,500

 

  消化仕入の法形式重視で見た場合には、A百貨店は第1法(総額法)、C社は第5法(総額法)、D社は第7法(純額法)という結びつきが、理論的に整合性のある体系となる。

 収益認識会計基準で、売上の実態を重視した場合には、A百貨店は第2法(純額法)、C社は第6法(純額法)、D社は第8法(総額法)という結びつきが、理論的に整合性のある体系となる(売上100,000円を計上するのは、D社と見る。)。

 ただし、通常、A百貨店・C社・D社は独立した会社なので、お互いの処理の対応を意識することはないと思われる。

 

 

・設例2の実務上の取扱い(C社)

 

 実務上のA百貨店の処理は、設例1と同じなので、省略する。

 

 C社が第5法(総額法)を採用している場合には、消費税は妥当であるが、収益認識会計基準では売上と仕入とを相殺する必要がある。

 

第5法(総額法)

 (借)売 掛 金  77,000 (貸)売   上  70,000

                仮受消費税  7,000

(借)仕   入    65,000 (貸)買 掛 金 71,500

      仮払消費税     6,500

修正仕訳

(借)売   上 65,000 (貸)仕   入  65,000

修正後…後述の第6法修正後と同じ結果

(借)売 掛 金  77,000 (貸)売   上   5,000

     仮払消費税   6,500   仮受消費税    7,000

               買 掛 金  71,500

 

 消費税内税入力では、次のようになる。

第5法(総額法)

(借)売掛金 77,000    (貸)売 上  77,000課売上

  仕 入 71.500課仕入 (貸)買掛金  71,500

修正仕訳

(借)売 上 65,000対象外  (貸)仕 入 65,000対象外 

 

 なお、C社は中小企業で、収益認識会計基準に準拠しないということも考えられる。その場合には、第5法(総額法)のままで、純額に訂正するための修正仕訳を行わないこともあり得る。

 

 

 さて、C社は、実務上、簡便なので、第6法(純額法)を採用する方が多いと思われる。すると、収益認識会計基準では妥当であるが、消費税では仮払消費税と仮受消費税を追加する必要がある。

 

第6法(純額法

(借)売 掛 金 77,000 (貸)売   上 5,000

              仮受消費税    500

              買 掛 金  71,500

修正仕訳

(借)仮払消費税   6,500 (貸)仮受消費税  6,500

修正後…前述の第5法修正後と同じ結果

(借)売 掛 金 77,000 (貸)売   上    5,000

   仮払消費税    6,500    仮受消費税    7,000

               買 掛 金  71,500  

        

 消費税内税入力では、次のようになる。

第6法(純額法)

(借)売 掛 金 77,000     (貸)売    上  5,500課売上  

                買 掛 金71,500           

修正仕訳

(借) 仮払消費税 6,500対象外 (貸)仮受消費税  6,500対象外 

 

 

・設例2の実務上の取扱い(D社)

 

 D社も、実務上、簡便なので、第7法(純額法)を採っていることが多いと思われる。すると、消費税はそのままでよいが、売上の実態を重視する収益認識会計基準では売上を追加計上することになる。

 

第7法(純額法

(借)売 掛 金 71,500 (貸)売   上  65,000

              仮受消費税   6,500

修正仕訳

(借)支払手数料  35,000 (貸)売   上 35,000

修正後…後述の第8法修正後と同じ結果

(借)売 掛 金 71,500 (貸)売   上  100,000

   支払手数料  35,000    仮受消費税    6,500

 

 消費税内税入力では、次のようになる。

第7法(純額法)

(借)売 掛 金 71,500       (貸)売   上 71,500課売上           

修正仕訳

(借)支払手数料 35,000対象外(貸)売   上 35,000対象外

 

 なお、D社は中小企業で、収益認識会計基準に従わない場合があり得る。その場合には、第7法(純額法)のままで、売上を総額に訂正するための修正仕訳を行わないことも考えられる。

 

 

 実例は少ないと思われるが、D社が第8法(総額法)を採っていた場合には、収益認識会計基準では妥当であるが、消費税では仮受消費税と仮払消費税とを相殺する必要がある。

 

第8法(総額法)

(借)売 掛 金 71,500 (貸)売   上  100,000

   支払手数料  35,000    仮受消費税  10,000

   仮払消費税  3,500

修正仕訳

(借)仮受消費税    3,500 (貸)仮払消費税  3,500

修正後…前述の第7法修正後と同じ結果

(借)売 掛 金 71,500 (貸)売   上  100,000

   支払手数料  35,000    仮受消費税    6,500

 

 消費税内税入力では、次のようになる。

第8法(総額法)

(借)売 掛 金 71,500    (貸)売   上 110,000課売上            

     支払手数料  38,500課仕入

修正仕訳

(借)仮受消費税   3,500対象外 (貸)仮払消費税  3,500対象外

 

 

・設例1と設例2のまとめ

 

A百貨店

 

収益認識会計基準

消費税

1法(総額法)

  ×

  〇

1法修正後

  〇

  〇

2法(純額法)

  〇

  ×

2法修正後

  〇

  〇

〇:妥当、×:妥当でない

第1法修正後と第2法修正後の処理は同じ結果となる。

 

B社

 

収益認識会計基準

消費税

3法(純額法)

  ×

  〇

3法修正後

  〇

  〇

4法(総額法)

  〇

  ×

4法修正後

  〇

  〇

 

〇:妥当、×:妥当でない

第3法修正後と第4法修正後の処理は同じ結果となる。

 

C社

 

収益認識会計基準

消費税

5法(総額法)

  ×

  〇

5法修正後

  〇

  〇

6法(純額法)

  〇

  ×

6法修正後

  〇

  〇

〇:妥当、×:妥当でない

第5法修正後と第6法修正後の処理は同じ結果となる。

 

D社

 

収益認識会計基準

消費税

7法(純額法)

  ×

  〇

7法修正後

  〇

  〇

8法(総額法)

  〇

  ×

8法修正後

  〇

  〇

〇:妥当、×:妥当でない

第7法修正後と第8法修正後の処理は同じ結果となる。

 

 A百貨店は、大企業なので、第1法修正後の処理を採ることになろう。

 それに対して、B社・C社・D社は中小企業だとすれば、簡便な純額法(第3法・第6法・第7法)を採用することが多いと思われる。

 B社が第3法、D社が第7法を採用した場合には、消費税はそのままでよい。収益認識会計基準に従えば、その後修正を加えて第3法修正後、第7法修正後となる。収益認識会計基準を気にしないのであれば、第3法、第7法のままとなる。

 一方、C社が第6法を採用した場合には、消費税の修正が必要なので、第6法修正後となる。

 

 

・マネキン(販売員、派遣店員)代の会計処理

 

 消化仕入の納入(出店)業者は、前述のとおり、通常、販売も担当する。その場合、業者は、自社の従業員だけでなく、マネキン紹介所からマネキン(販売員、派遣店員)を紹介してもらい、百貨店の売り場に派遣する場合もある。納入業者が支払うこのマネキンの人件費については、報酬か給与かという問題がある。それにより、消費税の課税仕入れに該当するか否かが決まってくる。

 税務上は、所得税基本通達204-21、また、国税庁 質疑応答事例「紹介所を通じてマネキンに対価を支払う場合」により、給与とするという取扱いが示されている。基本通達に取り込んだため廃止されたが、1983年(昭和58年)直法6-7、直所3-7「マネキンが支払を受ける対価に係る所得税の源泉徴収について」の要旨は、次のとおりである。

① マネキンは、百貨店の従業員と職務の内容が同一であり、かつ、労働した日または時間を基準にして対価の額が定められていること等から、報酬ではなく給与に該当する。

② マネキンに対する対価は、マネキン紹介所経由で支払われるが、マネキン紹介所はマネキン個人に代わって対価を受領するにすぎないので、納入業者側に源泉徴収義務がある。

 

(設例3)

 納入業者が、マネキン代10,000円(うち源泉所得税100円)とマネキン紹介所の斡旋手数料1,000円を、現金でマネキン紹介所に支払った。マネキン紹介所は、マネキンに代金を現金で支払った。納入業者とマネキン紹介所の仕訳は、それぞれどのようになりますか。

 

(納入業者)

(借)給   与 10,000 (貸)現   金 10,900

   支払手数料    1,000   預 り 金   100

(マネキン紹介所)

(借)現   金 10,900 (貸)預 り 金  9,900

               売   上    1,000 

(借)預 り 金   9,900 (貸)現   金  9,900

 

 マネキン紹介所は、マネキンを単に斡旋するだけで、マネキンと雇用関係があるわけではない。したがって、マネキン紹介所は源泉徴収を行わないので、雇用関係のある納入業者側で給与として源泉徴収を行わなければならない。源泉徴収にあたり、税額表の甲欄・乙欄・丙欄のいずれを用いるかは、納入業者とマネキンとの雇用形態によるであろう。

 

 なお、マネキン紹介所から納入業者あての請求書には、源泉所得税が記載されていないことがある。設例3でいえば、マネキン代10,000円と斡旋手数料1,000円の合計11,000円が請求書に記載され、源泉所得税100円が請求書に載っていないということである。このような場合には、納入業者がマネキン紹介所に支払うとき、自ら源泉所得税を計算してその額を差し引く必要がある。

 

 納入業者の消費税の計算において、マネキン代は給与扱いのため、課税仕入れには該当しない。マネキン紹介所の斡旋手数料だけが、課税仕入れに該当し、仕入税額控除の対象となる。

 

 同じ厚生労働大臣管轄下であるが、マネキン紹介業と異なるものに、人材派遣業がある。人材派遣会社と派遣スタッフとの間には雇用関係がある点が、マネキン紹介所とマネキンとの関係と異なる。したがって、人材派遣会社側に、源泉徴収義務がある。源泉徴収にあたり、税額表の甲欄・乙欄・丙欄のいずれを用いるかは、人材派遣会社と派遣スタッフとの雇用形態によるであろう。

 

(設例4)

 派遣先(依頼主)が、人材派遣料11,000円を、現金で人材派遣会社に支払った。人材派遣会社は、派遣スタッフに代金10,000円(うち源泉所得税100円)を現金で支払った。派遣先と人材派遣会社の仕訳は、それぞれどのようになりますか。

 

(派遣先)

(借)支払手数料  11,000 (貸)現   金 11,000

(人材派遣会社)

(借)現   金 11,000  (貸)売   上 11,000

(借)給   与 10,000  (貸)現   金   9,900

                預 り 金    100

 制度上、マネキン紹介業と人材派遣業とは、別個のシステムとなっている(そのような別個のシステムとする必要があるのかは疑問である。人材派遣の制度が導入されたとき、それ以前から存在したマネキン紹介業も統一すればよかったと思うのだが。)。したがって、そのようなシステムの違いを前提とする以上、両者の会計処理も異ならざるを得ない。

 

 

 

 

※本稿は、次の拙稿をもとに、収益認識会計基準の公表や消費税の改正などにより、全面的に書き替えたものである。

寺田誠一稿『百貨店納入業者の経理と税務』週刊経営財務1997年(平成9年)2月17日号

 

 

※実務的な消費税のパソコン入力方法については、「税込経理方式・税抜経理方式と消費税内税入力・決算整理」参照。

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。