「棚卸資産の範囲と取得価額」

 

2020年(令和2年)4月23日(最終更新2021年7月13日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・棚卸資産の意義

 

 棚卸資産とは、正常営業循環過程において、販売または消費を目的として保有される財貨または役務(用役)です。すなわち、購買・製造・販売過程に参加し、短期間に数量的に減少する財貨役務です。具体的には、商品・製品・半製品・仕掛品・原材料・貯蔵品などをいいます。

 

 なお、不動産業者が販売目的で保有する土地・建物、証券会社が販売目的で保有する有価証券も、棚卸資産となります。また、棚卸資産は有形の財貨に限りません。材料を支給され加工のみを委託されたような場合には、加工費のみからなる仕掛品が生じます。

 

・棚卸資産の分類

 

 棚卸資産は、大きく2つに分かれます。

① 企業がその営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産

② 売却を予定しない資産であっても、販売活動と一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品費等

 

 さらに、棚卸資産は、次の4種類に分けられます。

① 通常の営業循環過程において販売するために保有する財貨・役務

 (例)商品、製品など。

② 販売を目的として現に製造中の財貨・役務

 (例)半製品、仕掛品など。

③ 販売目的の財貨・役務を生産するために短期間に消費されるべき財貨

 (例)原材料、消耗工具器具備品、工場用消耗品など。

④ 販売活動と一般管理活動において短期間に消費されるべき財貨

 (例)事務用消耗品、荷造包装用品など。

 

・棚卸資産の取得価額

 

 棚卸資産の取得価額の決定は、購入の場合と製造の場合とに分けられます。

 

① 購入の場合

 

 購入により取得した棚卸資産の取得価額は、購入代価に付随費用(副費)の全部または一部を加算した額とされます。仕入値引・仕入割戻は、購入代価より控除します。仕入割引は、金利(利息)の性格を有するので、購入代価より控除しないで、営業外収益とされます。

 付随費用には、次の2種類があります。それらのうちどの範囲のものを購入代価に加算するかを一律に定めることは困難であり、各企業の実情に応じて、適正に決定することになります。

①-1 外部付随費用(外部副費) :引取運賃、購入手数料、関税など

①-2 内部付随費用(内部副費):選別費、検収費、保管費など

 なお、重要性の原則の適用により、重要性の乏しい付随費用は、取得価額に算入しないで、支出した年度の期間費用すなわち販管費(原材料などの場合には製造経費)とすることが認められています。

 また、借入金の利子は、通常、取得原価には含めずに期間費用(この場合には営業外費用)とするのが会計慣行です。

 

② 製造の場合

 

 企業内部で製造された棚卸資産の原価は、適正な原価計算の基準に従って算定された価額によります。適正な原価計算の基準の代表的なものは、企業会計審議会が公表した「原価計算基準」です。

 

 

※本稿は、次の拙著を加筆修正したものです。

寺田誠一著 『ファーストステップ会計学 第2版』東洋経済新報社2006年 「第8章 棚卸資産と売上原価 1 棚卸資産の範囲と取得原価」

 

 

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。