「有価証券の分類と表示(図表)」

 

2020年(令和2年)3月22日(最終更新2021年7月13日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・有価証券の分類

 

 有価証券とは、株式や債券(社債・国債)などをいいます。有価証券は、①売買目的有価証券、②満期保有目的の債券、③子会社株式および関連会社株式、④その他有価証券の4つに分類されます。そして、その4つの分類ごとに、評価方法が定められています。

 売買目的有価証券とは、時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券をいいます。

 

 満期保有目的の債券とは、満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券をいいます。

 

 子会社株式および関連会社株式とは、子会社を支配する目的で、または、関連会社への影響力を行使する目的で保有する株式をいいます。

 

 その他有価証券は、上記の売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式および関連会社株式のいずれにも属さない有価証券をいいます。たとえば、A社がB社の株式を持ち、B社がA社の株式を持つ、いわゆる「持ち合い株式」などが、これに該当します。

 

・コラム「親会社・子会社・関連会社・関係会社」

 

 「親会社」とは、他の企業を支配している会社をいい、「子会社」とはその支配されている会社をいいます。代表的なものは、議決権の過半数(50%超)を実質的に所有している場合です。

 親会社と子会社が(または子会社が)、他の会社を支配している場合におけるその支配されている会社も、子会社とみなします。いわゆる孫会社です。

 「関連会社」とは、親会社と子会社が(または親会社が)、子会社以外の他の会社の意思決定に対して重要な影響を与えることができる場合における、その影響を受けている会社をいいます。代表的なものは、議決権の20%以上を実質的に所有している場合です。

 親会社・子会社・関連会社の3つをまとめて、「関係会社」といいます。

 

・有価証券の表示

 

 有価証券の流動と固定の区分は、所有目的と1年基準によります。

流動資産とされるのは、まず、有価証券の分類で示した4種類のうち、売買目的有価証券です。次に、満期保有目的の債券とその他有価証券のうち、1年内に満期の到来する債券です。売買目的有価証券と1年内に満期の到来する債券が、流動資産とされます。

 流動資産の勘定科目の名称は、「有価証券」となります。

 

 満期保有目的の債券(1年内に満期の到来する債券を除く。)、子会社株式および関連会社株式、その他有価証券(1年内に満期の到来する債券を除く。)は、いずれも長期所有と考えられるので、固定資産(投資その他の資産)とされます。

 固定資産の勘定科目の名称は、「投資有価証券」となります。ただし、子会社株式および関連会社については、「関係会社株式」となります。

 

 

 例外的なものとして、親会社株式があります。子会社が親会社株式を取得することは、原則として、禁止されています。親会社株式は、1年基準により、1年内に処分されるものは流動資産に、1年を超えるものは固定資産(投資その他の資産)に、「親会社株式」という科目で記載されます。

 

 

※本稿は、次の拙著を加筆修正したものです。

寺田誠一著 『ファーストステップ会計学 第2版』東洋経済新報社2006年 「第6章 有価証券 1 有価証券の分類と表示」

 

 

※設例については、「有価証券取得・売却・評価の設例」参照。

※実務的な詳述は、「有価証券の分類と評価」参照。

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。