「会計上の変更と誤謬の訂正」

 

2020年(令和2年)10月8日(最終更新2021年7月13日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・会計上の変更

 

 「会計上の変更」と「誤謬の訂正」については、2009年(平成21年)の「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」により、取り扱いが定められました。

 

 「会計上の変更」とは、「会計方針の変更」「表示方法の変更」「会計上の見積りの変更」をいいます。過去の財務諸表における誤謬の訂正は、会計上の変更には該当しません。

 

・会計方針の変更

 

 会計方針とは、財務諸表の作成にあたり採用した会計処理をいいます。

 会計方針の変更とは、従来採用されていた一般に公正妥当と認められた会計方針から、他の一般に公正妥当と認められた会計方針に変更することをいいます。

 

 会計方針は、正当な理由による変更を除き、毎期継続して適用しなければなりません。正当な理由による会計方針の変更は、会計基準とそれ以外のいずれかに分類されます。

① 会計基準などの改正に伴う会計方針の変更

 ①-1会計基準などに特定の経過的な取扱いが定められていない場合

    新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用(※1)します。

 ①-2会計基準などに特定の経過的な取扱いが定められている場合

     その経過的な取扱いに従います。

② 会計基準など以外の正当な理由による変更

    新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用(※1)します。

※1:遡及適用とは、新たな会計方針を過去の財務諸表にさかのぼって適用していたかのように会計処理することをいいます。

 

 遡及適用は、次のような処理を行います。

① 遡及適用の累積的影響は、実行可能なもっとも古い期間(当期の場合もあります。)の期首の資産・負債・純資産(利益剰余金)の額に反映させます。

② 当期と並列表示する過去の各期間の財務諸表には、その各期間の影響額を反映します。

 

 

・表示方法の変更

 

 表示方法とは、財務諸表の作成にあたり採用した表示の方法をいいます。注記、財務諸表の科目分類・科目配列・報告様式も含みます。

 表示方法の変更とは、従来採用されていた一般に公正妥当と認められた表示方法から、他の一般に公正妥当と認められた表示方法に変更することをいいます。

 

 表示方法の変更は、次のいずれかの場合を除き、毎期継続して適用しなければなりません。

① 表示方法を定めた会計基準・法令などの改正により、表示方法の変更を行う場合

② 会計事象などを財務諸表により適切に反映するために、表示方法の変更を行う場合

 

 財務諸表の表示方法を変更した場合には、原則として、表示する過去の財務諸表について、新たな表示方法に従い、財務諸表の組替え(※2)を行います。

※2:財務諸表の組替えとは、新たな表示方法を過去の財務諸表にさかのぼって適用していたかのように表示を変更することをいいます。

 

 

・会計上の見積りの変更

 

 会計上の見積りとは、資産・負債、収益・費用の額に不確実性がある場合、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、合理的な金額を算出することをいいます。

 会計上の見積りの変更とは、新たに入手可能となった情報に基づいて、過去の財務諸表作成時の会計上の見積りを変更することをいいます。

 

 会計上の見積りの変更は、遡及処理をせずに、次のような取扱いとします。

① その変更が変更期間のみに影響する場合

 その変更期間に会計処理を行います。例:回収不能債権に対する貸倒見積額の変更。

② その変更が将来の期間にも影響する場合

 将来にわたり会計処理を行います。例:減価償却の耐用年数の見積りの変更。

 

 会計方針の変更を、会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合には、会計上の見積りの変更と同様に取り扱い、遡及適用は行いません。

 減価償却の方法(定額法、定率法など)の変更は、会計方針の変更ですが、固定資産の価値の減少パターンに関する見積りの変更を伴うと考えられます。そのため、区別の困難な場合に該当するものとして、遡及適用を行わないものとします。

 

 

・誤謬の訂正

 

 誤謬(ごびゅう)とは、原因となる行為が、意図的か否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報の不使用または誤用による次のような誤りをいいます。

① データの収集または処理上の誤り

② 会計上の見積りの誤り

③ 会計方針の適用誤り、表示方法の誤り

 

 過去の財務諸表に誤謬が発見された場合には、次の方法により修正再表示(※3)します。

① 修正再表示の累積的影響額は、表示する財務諸表のうち、もっとも古い期間の期首の資産・負債・純資産(利益剰余金)の額に反映します。

② 当期と並列表示する過去の各期間の財務諸表には、その各期間の影響額を反映します。

※3:修正再表示とは、過去の財務諸表における誤謬の訂正を、財務諸表に反映することをいいます。

 

 

・その他

 

  「会計上の変更」と「誤謬の訂正」のすべてについて、以下の点にご留意ください。

① 注記の記載

 変更(または誤謬)の内容・影響などについて、注記をします。

② 重要性の考慮

 重要性の高いものは上記の取扱いとなりますが、重要性の乏しいものは必ずしも上記の扱いによらなくてもよいことになります。

 

 

 

 ※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。