「累進税率の意味・計算・面積図」

 

2020年(令和2年)11月4日(最終更新2023年12月16日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・累進税率の速算表

 

 所得税の年末調整の計算は、次のようになります。

① 給与収入金額-給与所得控除額=給与所得金額

② 給与所得金額-所得控除=課税給与所得金額

③ 課税給与所得金額×税率=所得税額

 

 所得税額を算出する速算表は、次のようになっています。

  

課税給与所得金額(A

税率(B

控除額(C

税額=(A)×(B)(C)

1,950,000円以下

5

A)×5

1,950,000円超3,300,000円以下

10

97,500

A)×10%-97,500

3,300,000円超6,950,000円以下

20

427,500

A)×20%-427,500

6,950,000円超9,000,000円以下

23

636,000

A)×23%-636,000

9,000,000円超18,000,000円以下

33

1,536,000

A)×33%-1,536,000

18,000,000円超18,050,000円以下(※)

40

2,796,000

A)×40%-2,796,000

 ※:課税給与所得金額が18,050,000円を超える場合は、年末調整の対象となりません。

 

 所得税の税率については、累進税率(超過累進税率)が採られています。累進税率とは、段階的に税率が上がっていくものです。現在、5%→10%→20%→23%→33%というように上がっていきます。

 

 たとえば、課税所得5,000,000円の場合には、税率は20%となります。ただし、5,000,000円全部が20%ということではありません。5,000,000円のうち1,950,000円以下の分は税率5%、1,950,000円を超え3,300,000円以下の分は税率10%、3,300,000円を超え5,000,000円までの分は税率20%ということです。課税所得を区切ってそれぞれの税率を適用していくのが、累進税率です。

 

 上記の速算表は、計算結果は同じとなりますが、別の計算方法を採っています。その計算方法は、面積図で見るとわかりやすいので、以下、図解します。

  

・課税給与所得500万円の場合の面積図

 

 課税所得5,000,000円の場合の税額を、個々の税率を用いて計算すると、次のようになります。

1,950,000円×5%=97,500円

(3,300,000円-1,950,000円)×10%=135,000円

(5,000,000円-3,300,000円)×20%=340,000円

97,500円+135,000円+340,000円=572,500円

 

 速算表を用いる方法では、次のように、1回の計算で算出できるので、簡単です。

5,000,000円×20%-427,500円=572,500円

 

 速算表の計算式の意味は、面積図で考えるとわかります。次の面積図をご覧ください。横軸に課税所得、縦軸に税率をとります。すると、面積が税額を表すことになります。図の実線部分の面積を求めてみます。本来の累進税率は、a×c+b×dで計算します。速算表では、それを(a+b)×d-a×eで算出しています。同じ面積を2とおりの方法で計算しているので、両者の計算結果は等しくなります。

 

 さきほどの課税所得(A)5,000,000円の場合で説明します。次の面積図をご覧ください。課税所得(A)5,000,000円の場合の税額は、図の実線の部分の矢印までです。速算表の計算では、まず5,000,000円に20%をかけます。それから、点線の部分の面積を控除します。その面積は、次の計算により、427,500円となります。

1,950,000円×(20%-5%)=292,500円

(3,300,000-1,950,000円)×(20%-10%)=135,000円

292,500円+135,000円=427,500円

 

 

 ちなみに、課税所得1,950,000円超3,300,000円以下の控除額97,500円は、次の計算により算出されます。

1,950,000円×(10%-5%)=97,500円

 

 課税所得6,950,000円超9,000,000円以下の控除額636,000円は、次の計算により算出されます。

1,950,000円×(23%-5%)=351,000円

(3,300,000円-1,950,000円)×(23%-10%)=175,500円

(6,950,000円-3,300,000円)×(23%-20%)=109,500円

351,000円+175,500円+109,500円=636,000円

 

 課税所得9,000,000円円超18,000,000以下の控除額1,536,000円は、次の計算により算出されます。

1,950,000円×(33%-5%)=546,000円

(3,300,000円-1,950,000円)×(33%-10%)=310,500円

(6,950,000円-3,300,000円)×(33%-20%)=474,500円

(9,000,000円-6,950,000円)×(33%-23%)=205,000円

546,000円+310,500円+474,500円+205,000円=1,536,000円

 

 課税所得18,000,000円円超18,050,000以下の控除額2,796,000円は、次の計算により算出されます。

1,950,000円×(40%-5%)=682,500円

(3,300,000円-1,950,000円)×(40%-10%)=405,000円

(6,950,000円-3,300,000円)×(40%-20%)=730,000円

(9,000,000円-6,950,000円)×(40%-23%)=348,500円

(18,000,000円-9,000,000円)×(40%-33%)=630,000円

682,500円+405,000円+730,000円+348,500円+630,000円=2,796,000円

  

 ※本稿は、次の拙著・拙稿をもとに、大幅に加筆修正したものです。

寺田誠一著 『新人経理マン・経理ウーマンのための初級経理レッスン』税務研究会出版局1999年 「レッスン2-1 年末調整Part1 累進税率」

寺田誠一稿『聞くに聞けない会社経理のキホン 第2回 給与計算と年末調整パート1』月刊スタッフアドバイザー 2004年11月号

 

 

※年末調整全体の流れ・手続き・各種申告書については、「年末調整の仕組みと申告書…ひとり親と寡婦の違い」参照。

※給与所得控除の図解については、「給与所得控除の意味・計算・面積図」を参照。

※2020年より改定・新設された基礎控除・所得金額調整控除については。「基礎控除と所得金額調整控除」参照。

※同一生計配偶者と控除対象配偶者と源泉控除対象配偶者の違いについては、「同一生計・控除対象・源泉控除対象配偶者の違い」を参照。

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。