「法人税等、事業所税、固定資産税、不動産取得税等の税務と表示」

 

2021年(令和3年)8月29日(最終更新2021年9月15日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

(1) 法人税等

 

・「法人税等」と「未払法人税等」

 

 法人税(地方法人税を含みます。)・法人住民税・法人事業税(特別法人事業税を含みます。)は、損益計算書の税引前当期純利益(または税引前当期純損失)の次に、法令に従い算定した額を、「法人税、住民税及び事業税」(以下、「法人税等」と略します。)として表示します。これらは、いずれも、「所得」を基準にして計算される税金だからです。

 地方法人税は、国税ではなく地方税ですが、法人税と一緒に(同じ申告書で)申告納付します。その後、国から地方自治体に配分される地方交付税の一部となります。

 

 法人税・法人住民税・法人事業税の貸借対照表上の科目は、流動負債に計上される「未払法人税等」です。これらの税金の納付義務は期末に成立するので、未払法人税等は未払金の一種です。ただし、その重要性から、単独の科目とされています。税務上は、未払法人税等のことを「納税充当金」と呼んでいます。なお、未払法人税等にも重要性の原則は働くので、概算額での計上も認められると考えます。

 

 損益計算書の「法人税等」と貸借対照表の「未払法人税等」では、法人税等の方が大きくなります。法人税等は1年間の負担すべき税額を示すのに対して、未払法人税等はそのうち期末に残っている租税債務を示すからです。両者の相違点は、通常、①中間納付額と、②受取利息配当金にかかる国税です。1年間の負担すべき法人税等から、すでに支払済みである中間納付額や受取利息配当金にかかる国税を差し引いた額が、期末の未納付額となります。

損益計算書の法人税等-中間納付額-受取利息配当金の国税=貸借対照表の未払法人税等

 

 受取利息配当金に課税される国税(源泉所得税)は法人税から控除することができます(たとえば、預金利息にかかる国税は利息額の15.315%です(本来15%の源泉所得税に、その2.1%の東日本大震災の復興特別所得税が加わります。)。それらは、すでに支払済みの法人税等(法人税等の前払い)という性格です。したがって、損益計算書の法人税等には含まれますが、貸借対照表の未払法人税等には含まれません。

 

 ただし、受取利息配当金に課税される国税のうちには、税額控除の適用を受けられない金額、すなわち法人税から差し引けない部分があります。これらは、営業外費用に記載します(勘定科目は、「営業外租税」など)。受取配当金の元本である有価証券などを保有している場合、元本の所有期間に対応する部分のみが税額控除の対象となり、対応しない部分は税額控除の対象とならないからです。預金の受取利息にかかる国税は、すべて税額控除の対象となります。なお、税額控除の対象とならない国税であっても、金額の重要性が乏しい場合には、税引前当期純利益の次の法人税等に含めることができます。通常、税額控除の適用を受けない額は少額なので、この処理を適用することが多いと思われます。

 

 さて、法人税と法人住民税(法人都道府県民税、法人市町村民税)は、法人の利益の一部を国や地方自治体に分配するという考え方に基づいています。したがって、法人税・法人住民税は、会計上は費用ですが、法人税法上は、損金不算入となっています。

 

 

・追徴税額・還付税額

 

 法人税・法人住民税・法人事業税の修正申告や更正(※1)・決定(※2)による追徴税額・還付税額は、損益計算書上、法人税等の次にその内容を示す科目で表示します。延滞税(※3)・加算税(※4)・延滞金(※3)・加算金(※4)も、追徴税額に含めます。

 ただし、追徴税額・還付税額の金額の重要性が乏しい場合には、法人税等に含めて表示することができます。この場合も、通常、法人税等に含めることが多いと思われます。

 法人税の税務上、追徴税額は損金不算入、法人税・法人住民税の還付税額は益金不算入です。

 

※1:修正申告:当初申告の所得・税額が過小であった場合に、正しい所得・税額で申告すること(増額の場合です。)

※1更正:納税者の申告内容に誤りがある場合、税務署が正しい所得・税額に直すこと(増額と減額両方の場合があります。)。減額の場合には、通常、納税者が先に「更正の請求」という手続きを行うことが必要です。

※2決定:納税者が申告をしなかった場合、税務署が所得・税額を決めること。

※3延滞税、加算税:納期限より遅れたことに対する利息。延滞税は国税、延滞金は地方税。

※4加算税、加算金:納期限より遅れたことに対する罰金。加算税は国税、加算金は地方税。

 

 追徴税額のうち未納付額は貸借対照表上、「未払法人税等」に含めて表示します。還付税額のうち未収分は、「未収還付法人税等」などその内容を示す科目で表示します。

 

 

・法人住民税

 

 法人住民税には、法人都道府県民税と法人市町村民税の2種類があります。

 

① 法人都道府県民税

 東京都では法人都民税、大阪府では法人府民税、北海道では法人道民税、その他の県では法人県民税となります。

② 法人市町村民税

 市では法人市民税、町では法人町民税、村では法人村民税となります。

 

 なお、東京23区では、法人市町村民税は存在しません。それに相当する税額は、法人都民税のうちに含まれています。

 

 

・法人事業税、特別法人事業税

 

 法人事業税は地方税であり、都道府県の税金です。ただし、法人事業税は、利益の分配ではなく、法人が都道府県から受けている各種行政サービスに対する対価であると説明されます。

 

 そのため、法人事業税は、税務上、法人税・法人住民税とは異なり、損金算入されます。正確には、法人事業税の申告書を提出した事業年度、すなわち翌事業年度で損金となります。いいかえると、通常、申告と納付は同じ年度に行うので、法人事業税は現金主義で損金になるということです。たとえば、×2年3月期の法人事業税は、申告書の提出は翌期になるので、×3年3月期において損金となります。×2年3月期で未払計上しても、損金とはなりません。

 

 なお、法人事業税の上期分について中間申告(※)を行う場合には、中間申告書を提出した事業年度、すなわちその期で損金となります。たとえば、×2年3月期の上期(×1年4~9月)分の法人事業税の中間申告書は下期(×1年10月~11月)に提出するので、上期分については×2年3月期において損金となります。

※中間申告::前年度の法人税が20万円を超えた場合、当年度に法人税や法人事業税などの中間申告を行う必要があります。

 

 資本金1億円超の会社には、法人事業税の外形標準課税が行われています。この外形標準課税の付加価値割・資本割の金額については、「販売費及び一般管理費」(以下、「販管費」)に表示します。利益(所得)を基準に計算されてはいないからです。貸借対照表上の未納付額は、未払法人税等に含めて記載します。

 

 特別法人事業税は、国税ですが、法人事業税と一緒に(同じ申告書で)都道府県に申告納付します。その後、いったん国へ払い込み、再度、人口を基準として都道府県に配分されます。特別法人事業税は、法人事業税の一種と考えられるので、税務上、法人事業税と同じ取扱いになります。

 

 

 (2) それ以外の税金

 

・事業所税

 

 事業所税は、大都市の都市環境の整備・改善に要する費用に充てるための地方税(市町村税)です(東京23区では都税。)。東京23区など、人口30万人以上の都市にある事業所に課税されます。

 計算方法は、都市ごとに、次のようになります。

資産割(床面積×600円)+従業者割(給与総額×0.25/100)

 なお、免税点があり、資産割は事業所の合計床面積が1,000㎡以下、従業者割は従業者数100人以下の場合には、課税されません。

 

 事業所税は、損益計算書の販管費に表示します。(勘定科目は、租税公課)。製造業において工場などに課税されるものには、製造原価に算入されます(製造原価報告書の経費に記載。)。事業所税の未納付額は、「未払事業所税」などの適当な名称を付して、貸借対照表に記載します。ただし、その金額が重要でない場合には未払金などに含めることができます。

 

 申告納付は、決算日の翌日から2か月以内です。つまり、法人税・法人住民税・法人事業税・消費税と同じです(ただし、申告期限の延長制度はありません。)。

 

 税務上は、事業所税の申告書を提出した日の属する事業年度において損金に算入されます。したがって、未払計上は損金となりません。翌期の納付時に、損金となります(ここまでは事業税と同じですが、事業所税には、事業税と異なり、中間申告はありません。)。中小企業においては、重要性の原則を適用して、未払計上しないこともあると思われます。

 なお、製造原価に算入される事業所税を未払計上した場合には、その部分に限り損金算入が認められています。損金不算入とした場合には、期末の仕掛品や製品は損金となっていないので、事業所税の調整計算が複雑になるからでしょう。納税者の事務手数に配慮した規定です。

 

 

・固定資産税、都市計画税

 

 固定資産税・都市計画税は、地方税(市町村税)です(東京23区では都税。)。固定資産税は、毎年、1月1日現在の固定資産の所有者に対して課税される税金です。都市計画税は、毎年、1月1日現在の市街化区域内などの土地・建物(家屋)の所有者に対して課税される税金です。資産の存在する市町村ごとに、計算し課税されます。固定資産税評価額に税率を乗じて税額が算出されます。税率は、固定資産税1.4%、都市計画税0.3%です。

 

 固定資産税は、土地・建物(家屋)と償却資産とに分かれます。土地・建物(家屋)は市町村が独自に調べて課税しますが、償却資産は納税者が申告します。

 

 償却資産とは、構築物・機械装置・工具器具備品などをいいます。車両運搬具は、自動車税・軽自動車税が課税されるので、固定資産税は課税されません。

 償却資産に関する固定資産税は、取得価額から減価償却累計額を差し引いた額を課税標準とし、それに1.4%をかけます。ただし、原則として、減価償却の計算は市町村で行うので、資産の名称・取得年月・取得価額・耐用年数などだけの申告となります。償却資産の申告には免税点があり、1つの市町村における課税標準が150万円未満の場合には課税されません。

 

 ①固定資産税(土地・建物)と都市計画税を合計した納付書と、②固定資産税(償却資産)の納付書は、市町村より別々に4月頃送られてきます。それぞれ年4回で分割して納めます。もちろん、1回で納めてもかまいません。

 

 固定資産税(土地建物、償却資産)と都市計画税は、損益計算書の販管費に記載します(勘定科目は、租税公課)。なお、製造業において工場などに課税されるものには、製造原価に算入されます(製造原価報告書の経費に記載。)。

 

 なお、不動産売買取引のとき、固定資産税は1月1日現在の所有者に課税されるので、通常、買主から売主に、売買日から12月31日までの固定資産税按分額が支払われます。ただし、これは、固定資産税そのものではなく、あくまで固定資産税相当額であり、不動産の売買金額の一部とされます。支払った買主は、租税公課ではなく、土地または建物の取得価額となります。

 

 

・不動産取得税

 

 不動産(土地・建物)を取得(贈与も含みます。)したときに課税される地方税(都道府県税)です。固定資産税評価額に税率を乗じて、税額が算出されます。税率は土地・住宅用の建物(家屋)は3%、住宅用以外の建物(家屋)は4%です。なお、各種の特例や減額措置があります。

 

 不動産取得税の納付書が都道府県より送られてくるのは、不動産を取得してから1年くらい経ってからです。したがって、実務上、土地建物の取得価額に算入することは不可能です。したがって、不動産取得税は販管費とします(勘定科目は、租税公課)。製造業において工場の取得などに課税されるものは、製造原価に算入します(製造原価報告書の経費に記載。)。

 

 

・消費税

 

 税込経理方式を採った場合の消費税は、販管費に記載します(勘定科目は、租税公課)。未払いの消費税は、貸借対照表の流動負債に記載されます(勘定科目は、未払金または未払消費税(等))。

 

 

・印紙税

 

 印紙税(具体的には、収入印紙を購入したとき)は、販管費に記載します(勘定科目は、租税公課)。製造業において工場などで購入したものは、製造原価に算入されます(製造原価報告書の経費に記載。)。

 

 

※本稿は、次の拙稿をもとに、大幅に加筆修正したものです。

寺田誠一稿『経理の疑問点スッキリ解明 第10回 法人税等』月刊スタッフアドバイザー 2010年(平成22年)1月号

寺田誠一稿『会計と税務の交差点スッキリ整理! 第1回 「会計」と「税務」の多重構造を理解する!』月刊スタッフアドバイザー 2011年(平成23年)8月号

 

 

※損益計算書の「法人税等」と貸借対照表の「未払法人税等」の関係について詳しくは、「「法人税等」と「未払法人税等」の計上手順と設例」参照。

※利益と所得の違いについては、「会計上の「利益」と税務上の「所得」の違い」参照。

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。