「初級簿記」 まえがき

 

2019年(令和元年10月1日)(最終更新2021年7月14日)

寺田 誠一

 

 

 会計事務所を営んでいると、ときおり、お客様から次のような依頼を受けることがあります。

 

 「今までサラリーマンでしたが、今度、起業して、自分で会社を始めることとしました。私が社長で営業をやり、妻が専務で事務を担当します。

 さしあたり、従業員を雇う余裕がないので、私と妻2人だけの会社です。

 ところで、妻は経理の経験がまったくありません。そこで、妻に簿記の初歩を教えていただけないでしょうか。」

 

「経理を担当していた社員が急病で1か月入院することになり、営業を担当していた私がピンチヒッターで経理もみることになりました。

 経理はパソコンでやっているのですが、画面をみると借方とか貸方とか全然わかりません。簿記のイロハを簡単に教えていただけませんか。」

 

 本稿は、そのような、初めて簿記を学ぼうと思われた方を対象に、簿記の初歩すなわち仕訳ができるまでを説明したものです。また、簿記検定の3級を受験される方や、商業高校・大学などで簿記の基本を学ばれる方にとってもテキストと併用して、本稿を読んでいただければ、仕訳の理解が早まるものと思います。

 

 本稿の大きな特徴は、仕訳の基本ルールとして、次の2つを示したことです。この方式により、仕訳を短時間でマスターできると確信しています。

 

仕訳の基本ルール

① 勘定科目には、本来の場所(左側または右側)が決まっている。

② 勘定科目は、増加したときは「本来の場所」に記入し、減少したときは「本来の場所の反対側」に記入する。

 

 なお、読みにくいと思われる漢字の読み方を、いくつか掲げておきます。

仕訳:しわけ

総勘定元帳:そうかんじょうもとちょう

売掛金:うりかけきん

買掛金:かいかけきん

貸付金:かしつけきん

借入金:かりいれきん

仮払金:かりばらいきん

仮受金:かりうけきん

相殺:そうさい

出納:すいとう