「仕訳の練習2…仕入」
2019年(令和元年)9月5日(最終更新2021年7月11日)
寺田 誠一(公認会計士・税理士)
・仕入、買掛金の仕訳パターン
費用は、仕入と経費に分かれますが、ここでは、仕入の計上を考えてみます。まずはじめに、仕入代金を現金や預金で支払った場合です。
仕入は費用であり、本来の場所は借方(左側)です。費用が増加したので、本来の場所である借方(左側)に計上します。
一方、現金や預金は資産であり、本来の場所は借方(左側)です。したがって、現金や預金が減少したときは、本来の場所の反対側である貸方(右側)に記入します。
よって、現金仕入の仕訳は、次のようになります。
(借)仕 入 ××× (貸) 現 金 ×××
もし、現金でなく預金で支払えば、仕訳の貸方(右側)は、普通預金や当座預金となります。
(借)仕 入 ××× (貸) 普通預金 ×××
掛け仕入の場合には、現金や預金ではなく、買掛金となります。買掛金は負債なので、本来の場所は貸方(右側)です。したがって、買掛金が増加したときは、本来の場所である貸方(右側)に記入します。
(借) 仕 入 ××× (貸)買 掛 金 ×××
買掛金を現金で支払った場合には、買掛金の減少です。負債である買掛金が減少したので、本来の場所の反対側である借方(左側)に記入します。
(借) 買 掛 金 ××× (貸) 現 金 ×××
買掛金を預金で支払えば、仕訳の貸方(右側)は、普通預金や当座預金となります。
(借) 買 掛 金 ××× (貸) 普通預金 ×××
買掛金を手形で支払えば、仕訳の貸方(右側)は、支払手形となります。支払手形は負債なので、本来の場所は貸方(右側)です。したがって、支払手形が増加したので、本来の場所である貸方(右側)に記入します。
(借) 買 掛 金 ××× (貸) 支払手形 ×××
・仕入の計上
(設例)
仕入先より、商品100,000円を購入する契約を結んだ。
契約だけでは、資産・負債・資本・収益・費用に変動がないので、仕訳は不要です。
(設例)
仕入先より、商品180,000円を購入し、現金で支払った。
商品を購入したので、仕入の増加です。仕入は費用なので、本来の場所である借方(左側)に記入します。
一方、現金の減少です。現金は資産なので、本来の場所は借方(左側)です。現金が減少したので、本来の場所の反対側である貸方(右側)に記入します。
したがって、仕訳は次のとおりです。
(借) 仕 入 180,000 (貸)現 金 180,000
(設例)
仕入先より商品290,000円が納品され、代金は1ヶ月後に支払うこととした。
商品が納品されたので、仕入の増加です。仕入は費用なので、本来の場所である借方(左側)に記入します。
一方、負債である買掛金が増加しているので、本来の場所である貸方(右側)に記入します。
したがって、仕訳は次のようになります。
(借) 仕 入 290,000 (貸)買 掛 金 290,000
・買掛金の支払い
(設例)
仕入先に対する買掛金290,000円を、現金にて支払った。
負債である買掛金の減少なので、本来の場所の反対側である借方(左側)に記入します。一方、資産である現金が減少しているので、本来の場所の反対側である貸方(右側)に記入します。
以上をまとめて、仕訳は次のとおりです。
(借)買 掛 金 290,000 (貸)現 金 290,000
(設例)
買掛金400,000円を、普通預金より振り込んで支払った。振込手数料500円は当社で負担し、普通預金より金融機関に支払った。
負債である買掛金が減少したので、本来の場所の反対側である借方(左側)に記入します。
また、費用である支払手数料が増加したので、本来の場所である借方(左側)に記入します。
一方、資産である普通預金が減少したので、本来の場所の反対側である貸方(右側)に記入します。
したがって、2つの仕訳で表すと、次のようになります。
(借)買 掛 金 400,000 (貸)普通預金 400,000
(借)支払手数料 500 (貸)普通預金 500
貸方(右側)の普通預金はまとめて、次のように、1つの仕訳にしてもかまいません。
(借)買 掛 金 400,000 (貸)普通預金 400,500
支払手数料 500
(設例)
買掛金370,000円を普通預金より振り込むにあたり、振込手数料500円を差し引き、369,500円を仕入先に振り込んだ。振込手数料500円は、普通預金より、金融機関に支払った。
振込手数料は、買掛金より差し引いているので、当社の費用とはなりません。当社としては、普通預金より370,000円支払っていますが、そのうち仕入先には369,500円振り込み、残額500円は金融機関に支払っているわけです。
(借)買 掛 金 370,000 (貸)普通預金 369,500
普通預金 500
貸方(右側)の普通預金はまとめて、次のように、単一仕訳にしてもかまいません。
(借)買 掛 金 370,000 (貸)普通預金 370,000
(設例)
買掛金500,000円を、小切手にて支払った。
負債である買掛金の減少なので、借方(左側)に記入します。
一方、小切手を発行するということは、当座預金の減少です。資産である当座預金が減少したので、本来の場所の反対側である貸方(右側)に記入します。
よって、仕訳は次のとおりです。
(借)買 掛 金 500,000 (貸)当座預金 500,000
(設例)
買掛金550,000円を、3ヶ月先の期日の約束手形で支払った。
負債である買掛金の減少は、借方(左側)に記入します。
約束手形を振り出したときの勘定科目は、支払手形を用います。負債である支払手形が増加したので、本来の場所である貸方(右側)に記入します。
よって、仕訳は次のとおりです。
(借)買 掛 金 550,000 (貸)支払手形 550,000
(設例)
たまたま得意先より仕入れて買掛金680,000円が生じ、代金はお互いに支払わずに、売掛金680,000円と買掛金680,000円とを相殺(そうさい)した。
負債である買掛金の減少なので、本来の場所の反対側である借方(左側)に記入します。
同様に、資産である売掛金の減少なので、本来の場所の反対側である貸方(右側)に記入します。
よって、次のような仕訳になります。
(借)買掛金 680,000 (貸)売掛金 680,000
※本稿は、次の拙著・拙稿をもとに、大幅に加筆修正したものです。
寺田誠一著『事典 はじめてでもわかる簿記』中央経済社1997年 「第6章 仕入の仕訳のしかた」
寺田誠一著 『新人経理マン・経理ウーマンのための初級経理レッスン』税務研究会出版局1999年 「レッスン1-10 仕入に関する仕訳」
寺田誠一稿『聞くに聞けない会社経理のキホン 第1回 経理課の役割と簿記の基本』月刊スタッフアドバイザー 2004年10月号
※振込手数料の各種ケースについては、「振込手数料の会計処理(仕訳)」参照。
※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。