「仕訳の練習3…経費」
2019年(令和元年)9月6日(最終更新2021年7月5日)
寺田 誠一(公認会計士・税理士)
・経費計上のパターン
費用のうち仕入以外のもの、すなわち各種の経費について、仕訳の練習をします。経費は、現金や預金で支払うことが多いと思われます。
この場合、経費の増加と現金・預金の減少です。経費は費用であり、本来の場所は借方(左側)です。したがって、経費が増加したときは、本来の場所である借方(左側)に記入します。
一方、現金や預金は資産であり、本来の場所は借方(左側)です。したがって、現金が減少したときは、本来の場所の反対側である貸方(右側)に記入します。
よって、経費の現金払いの仕訳は、次のようになります。
(借)○ ○ 費 ××× (貸)現 金 ×××
もし、現金でなく預金で支払えば、仕訳の貸方(右側)は、普通預金や当座預金となります。
(借)○ ○ 費 ××× (貸)普通預金 ×××
請求書などに基づいて、まだ未払いではあるが経費を計上するというときは、勘定科目は未払金を用います。負債である未払金の本来の場所は貸方(右側)です。未払金が増加したので、本来の場所である貸方(右側)に記入します。
(借)○ ○ 費 ××× (貸)未 払 金 ×××
未払金を、現金や預金で支払う場合には、未払金の減少です。負債である未払金の本来の場所は貸方(右側)です。未払金が減少したので、本来の場所の反対側である借方(左側)に記入します。
(借) 未 払 金 ××× (貸)現 金 ×××
・現金払いの設例
(設例)
薬局で社内用の常備薬を買い、4,000円を現金で支払った。
勘定科目は、通常、福利厚生費を用います。費用である福利厚生費の増加なので、本来の場所である借方(左側)に記入します。
一方、資産である現金が減少しているので、本来の場所の反対側である貸方(右側)に記入します。
(借)福利厚生費 4,000 (貸)現 金 4,000
(設例)
コインパーキング代1,000円を、現金で支払った。
時間貸しの駐車料金は、通常、旅費交通費(または、車両費)を用います。費用である旅費交通費の増加なので、本来の場所である借方(左側)に記入します。
一方、資産である現金が減少しているので、本来の場所の反対側である貸方(右側)に記入します。
(借)旅費交通費 1,000 (貸)現 金 1,000
時間貸しの駐車料金は少額なので、別途ノートなどに記入して、一定期間(1か月など)分をまとめて、仕訳してもかまいません。
(設例)
郵便局で、切手5,000円、収入印紙15,000円を買い、現金で支払った。
切手は通信費、収入印紙は租税公課を用います。費用である通信費・租税公課の増加なので、本来の場所である借方(左側)に記入します。
一方、資産である現金の減少なので、本来の場所の反対側である貸方(右側)に記入します。
(借)通 信 費 5,000 (貸)現 金 20,000
租税公課 15,000
次のように、2つの仕訳としてもかまいません。
(借)通 信 費 5,000 (貸)現 金 5,000
(借)租税公課 15,000 (貸)現 金 15,000
(設例)
ガソリンスタンドで、ガソリン代7,000円、タイヤ代20,000円を、現金で支払った。
ガソリン代は車両費(または、燃料費、旅費交通費)、タイヤ代は消耗品費(または車両費)を用います。費用である車両費、消耗品費の増加なので、本来の場所である借方(左側)に記入します。
一方、資産である現金の減少なので、本来の場所の反対側である貸方(右側)に記入します。
(借)車 両 費 7,000 (貸)現 金 27,000
消耗品費 20,000
次のように、2つの仕訳としてもかまいません。
(借)車 両 費 7,000 (貸)現 金 7,000
(借)消耗品費 20,000 (貸)現 金 20,000
(設例)
月極(つきぎめ)駐車場代30,000円を、普通預金より地主に支払った。振込手数料500円は、普通預金より金融機関に支払った。
月極駐車場代は地代家賃、振込手数料は支払手数料(または、通信費、雑費)を用います。費用である地代家賃・支払手数料の増加なので、本来の場所である借方(左側)に記入します。
一方、資産である普通預金の減少なので、本来の場所の反対側である貸方(右側)に記入します。
(借)地代家賃 30,000 (貸)普通預金 30,500
支払手数料 500
次のように、2つの仕訳としてもかまいません。
(借)地代家賃 30,000 (貸)普通預金 30,000
(借)支払手数料 500 (貸)普通預金 500
・未払金の設例
(設例)
事務機器販売店より、複写機の修理代30,000円、コピ-用紙代20,000円の請求書が届いた。
修理代は通常、修繕費、コピ-用紙代は通常、消耗品費(または事務用品費)という勘定科目を用います。費用である修繕費・消耗品費の増加なので、本来の場所である借方(左側)に記入します。
一方、負債である未払金の増加なので、本来の場所である貸方(右側)に記入します。
(借)修 繕 費 30,000 (貸)未 払 金 50,000
消耗品費 20,000
次のように分けて、2つの単一仕訳としてもかまいません。
(借)修 繕 費 30,000 (貸)未 払 金 30,000
(借)消耗品費 20,000 (貸)未 払 金 20,000
・仮払計上
(設例)
営業マンが出張に行くので、旅費の仮払い代40,000円を現金で渡した。
営業マンが出張より帰り、仮払金の精算を行った。宿泊代・交通費が37,000円、電話代が2,000円であり、残りの現金1,000円が返却された。
仮払金は資産であり、本来の場所は借方(左側)です。仮払金が増加したので、本来の場所である借方(左側)に記入します。
一方、資産である現金が減少したので、本来の場所の反対側である貸方(右側)に記入します。
(借)仮 払 金 40,000 (貸)現 金 40,000
精算のときは、資産である仮払金が減少したので、本来の場所の反対側である貸方(右側)に記入します。
一方、費用である旅費交通費と通信費、資産である現金が、それぞれ増加したので、本来の場所である借方(左側)に記入します。
(借)旅費交通費 37,000 (貸)仮 払 金 40,000
通 信 費 2,000
現 金 1,000
※本稿は、次の拙著をもとに、大幅に加筆修正したものです。
寺田誠一著『事典 はじめてでもわかる簿記』中央経済社1997年 「第7章 経費の仕訳のしかた」
寺田誠一著 『新人経理マン・経理ウーマンのための初級経理レッスン』税務研究会出版局1999年 「レッスン1-11 経費に関する仕訳」
※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。