「勘定科目の名前…複数の科目が考えられる取引」

 

2019年(令和元年)8月25日(最終更新2021年8月29日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・はじめに

 

  今まで、貸借対照表における資産・負債・資本、損益計算書における収益・費用という用語を使ってきましたが、それらは仕訳における勘定科目(かんじょうかもく)を包括した名称です。

 

 資産・負債・資本・収益・費用には、いろいろな勘定科目があります。逆にいえば、勘定科目は、資産・負債・資本・収益・費用の5グル-プに分かれます。勘定科目は、例外なく、必ずこの5グル-プのいずれかに属します。

 

 これから、代表的な勘定科目をみていきます。ご注意いただきたいのは、実務的には、会社が経営管理上必要だと考えた勘定科目を自由に設定すればよいわけです。よく使われる勘定科目はありますが、絶対にこの勘定科目を使わなくてはならない、ということはありません。特に、収益と費用については、その会社の営業内容に合わせた独自の勘定科目がよく用いられます。。

 

 

・貸借対照表の勘定科目

 

① まず、資産に属する勘定科目を挙げてみます。

 

現金:紙幣や硬貨などのお金をいいます。他社振出しの小切手も、手元にある場合には、現金扱いします。

 

当座預金:当座預金には利息が付きませんが、小切手や手形を振り出すとき必要な預金です。小切手や手形は、当座預金から引き落とされます。2つ以上取引金融機関がある場合には、「○○銀行当座預金」というように金融機関別の勘定科目とするか、または、金融機関別の補助科目(補助コ-ド)を設けます。

 

普通預金:普通預金とは、日常の入出金のサイフ代わりに用いる預金です。2つ以上取引金融機関がある場合には、金融機関別に勘定科目を設定する点は、当座預金と同じです。

 

定期預金:定期預金とは、余裕資金を運用するための預金です。2つ以上取引金融機関がある場合には、金融機関別に勘定科目を設定する点は、当座預金や普通預金と同じです。

 

受取手形:受取手形とは、商品などの販売代金として、得意先より受け取った手形をいいます。

 

売掛金:売掛金(うりかけきん)とは、商品などの販売代金の未収をいいます。すなわち、代金を後日に回収する掛け売りの際に生ずる得意先に対する債権です。

 

有価証券:有価証券とは、他社の株式・社債、国などの国債・公債などをいいます。

 

商品:商品とは、販売目的であるが、決算日現在まだ販売されておらず、会社に残っている在庫をいいます。

 

前渡金(前払金):前渡金(まえわたしきん、ぜんときん))または前払金(まえばらいきん)とは、商品などの仕入以前における代金の前払分をいいます。

 

立替金:立替金とは、従業員や取引先などのために一時的に立て替えた支払いをいいます。

 

未収入金(未収金):未収入金とは、有価証券や車両など、販売目的以外で所有していた資産の売却代金の未収分をいいます。商品などの販売代金の未収である売掛金との区別にご注意ください。

 

短期貸付金:短期貸付金とは、1年以内の返済期限で、他社や他人にお金を貸したときに用いる勘定科目をいいます。

 

仮払金:仮払金(かりばらいきん)とは、出張旅費などの一時仮払いをいいます。仮払金は、できるだけ早く精算して、残高を0にすることが望ましい勘定科目です。

 

建物:建物とは、本社・支社・工場・店舗など会社の建物を建てたときや購入したときに支払った建築代金の金額を示す勘定科目をいいます。

 

建物付属設備:建物付属設備とは、電気設備・給排水設備・冷暖房設備・エレベーターなど建物の付随する各種設備をいいます。ただし、建物の中に含める場合もあります。

 

車両運搬具:車両運搬具とは、乗用車やライトバンなど会社で使用する自動車を購入したときに用いる勘定科目をいいます。

 

工具器具備品(器具備品):パソコン・複写機・机・いすなどを購入したときに用いる勘定科目をいいます。製造業以外では、「器具備品」とすることもあります。

 

土地:土地とは、本社・支社・工場・店舗などの敷地を、自社で所有している場合の勘定科目をいいます。

 

電話加入権:電話加入権とは、NTTに支払った電話を利用するための加入料などをいいます。

 

長期貸付金:長期貸付金とは、1年超の返済期限で、他社や他人にお金を貸したときに用いる勘定科目をいいます。

 

差入保証金(敷金):建物などを借りたときに所有者に支払う保証金・敷金をいいます。建物などを退去したときには返還されますが、家賃などの滞納がある場合には保証金・敷金から差し引かれます。

 

  

② 次は、負債に属する勘定科目の具体例です。

 

支払手形:支払手形とは、商品などの仕入代金として仕入先へ支払った手形をいいます。

 

買掛金:買掛金(かいかけきん)とは、商品などの仕入代金の未払いをいいます。すなわち、代金後日支払いの掛け買いの際に生じる仕入先に対する債務です。

 

未払金:未払金とは、有価証券や車両などの購入代金の未払い分をいいます。商品などの仕入代金の未払いである買掛金との区別にご注意ください。

 

前受金:前受金(まえうけきん)とは、商品などを販売する前に受け取った代金の前受分をいいます。

 

預り金:預り金とは、税金(所得税や住民税)や社会保険料(健康保険や厚生年金)の個人負担分を、役員・従業員の給料から天引きして一時預っているときに用いる勘定科目をいいます。それらは、会社が支払うと、0となります。

 

短期借入金:1年以内に返済する、金融機関などから借りた借入金をいいます。

 

長期借入金:1年を超えて返済する、金融機関などから借りた借入金をいいます。

 

預り保証金(預り敷金):建物などを貸したときに借り主から預かる保証金・敷金をいいます。建物などを退去したときには返還しますが、家賃などの滞納がある場合には保証金・敷金から差し引きます。

 

 

③ 資本に属する勘定科目は、主に次の2つです。

 

資本金:資本金とは、株主の払い込んだ元本・もとでをいいます。

 

繰越利益剰余金:繰越利益剰余金とは、会社の過去から当期に至る利益の蓄積額をいいます。

 

 

・損益計算書の勘定科目

 

① 収益に属する主な勘定科目は、次のとおりです。

 

売上:売上とは、商品などの販売額を示す勘定科目です。会社の営業内容に合わせて、「〇〇売上」と細分することもあります。

 

受取利息:受取利息とは、預金や貸付金の利息の受け取りを示す勘定科目です。

 

受取配当金:受取配当金とは、会社が所有している株式などに対する配当金の受け取りを示す勘定科目です。

 

有価証券売却益:有価証券売却益とは、有価証券の売却により得た利益を示す勘定科目です。

 

固定資産売却益:固定資産売却益とは、建物・車両運搬具・工具器具備品など(これらを固定資産といいます。)の売却によって得た利益を示す勘定科目です。

 

雑収入:雑収入とは、収益のうち、金額が小さく、かつ、他の勘定科目にあてはまらないものをいいます。

 

 

② 次は、費用の方に行きます。費用の勘定科目は、仕入と経費に分かれます。経費の勘定科目は、たくさんあります。

 

仕入:仕入とは、商品などの仕入額を示す勘定科目です。

 

広告宣伝費:広告宣伝費とは、インターネット・新聞・雑誌・看板・ポスターなどを用いて、会社や商品の広告宣伝を行うときに用いる勘定科目です。

 

荷造運賃:荷造運賃とは、商品などの荷造りや運送にかかる経費をいいます。宅配便などです。

 

給料(給料手当、給与):給料(給料手当、給与)とは、役員・従業員に支払った給料を計上する勘定科目です。

 

法定福利費:法定福利費とは、社会保険料(健康保険と厚生年金)の会社負担分、労働保険(雇用保険と労災保険)の会社負担分をいいます。なお、法定福利費という勘定科目を設けずに、「福利厚生費」の中に含めることもあります。

 

福利厚生費:福利厚生費とは、役員・従業員の保健・衛生・慰安などの経費(たとえば、残業時食事代)を計上するときに用いる勘定科目です。

 

旅費交通費:旅費交通費とは、役員・従業員の業務上必要な通勤費・旅費・交通費(運賃・交通系ICカードのチャージ代※・コインパーキング代・ETC料金など)をいいます。

※交通系ICカードのチャージ代をそのまま旅費交通費にするためには、他の経費に使用していないこと、チャージ時と実際の使用時との間隔が短いことなどが必要です。 

 

通信費:通信費とは、電話代・切手代・有線放送代などをいいます。

 

水道光熱費:水道光熱費とは、電気代・ガス代・水道代などをいいます。

 

消耗品費:消耗品費とは、少額の消耗品をいいます。少額とは、実務上は、税法に従って、中小企業の場合には、1個または1組の金額が300,000円未満のものを指します。300,000円以上のものは、固定資産の「工具器具備品」となります。大企業の場合には、100,000円が基準となります。

 

事務用品費(事務用消耗品費):事務用品費(事務用消耗品費)とは、少額の文房具などをいいます。少額の考え方は、消耗品費と同じです。「事務用品費(事務用消耗品費)」の勘定科目を設けずに、「消耗品費」の中に含めることもあります。

 

租税公課:租税公課とは、印紙税(収入印紙)・(軽)自動車税・固定資産税などの税金や、駐車違反罰金などをいいます。

 

支払手数料:支払手数料とは、各種の手数料をいいます。

 

交際費(交際接待費):交際費(交際接待費)とは、慶弔費・贈答品代・取引先との飲食代ゴルフ代・お中元お歳暮などをいいます。

 

会議費:会議費とは、社内や取引先とのミーティング・打合せなどの飲物代・軽食代・喫茶代などをいいます。

 

修繕費:修繕費とは、固定資産などの修理代をいいます。

 

保険料:保険料とは、自動車保険料・火災保険料・生命保険料の掛け捨て部分を支払うときに用いる勘定科目です。保険料のうち、掛け捨てでない部分は、「保険積立金」という勘定科目を用いるのでご注意ください。

 

地代家賃:地代家賃とは、借りている建物や土地について、家賃や月極(つきぎめ)駐車場代などを支払うときに用いる勘定科目です。地代家賃は、賃借料の一種ですが、法人税申告書の科目明細に記載欄があるので、別科目とした方が便利です。

 

賃借料(リース料):賃借料(リース料)とは、自動車や複写機などを借りて、リース料を支払うときに用いる勘定科目です。

 

新聞図書費:新聞図書費とは、新聞代・雑誌代・本代などを支払うときに用いる勘定科目です。

 

諸会費:諸会費とは、町内会費や同業者団体・商工会(商工会議所)・法人会などの会費を支払うときに用いる勘定科目です。

 

車両費:車両費とは、自動車のガソリン代・修理代・車検代などをいいます。

 

減価償却費:減価償却費とは、固定資産の時の経過に伴う価値の減少を計上する経費です。キャッシュは出ていかない計算上の経費であることが特徴です。

 

雑費:雑費とは、経費のうち、金額が小さく、かつ、他の勘定科目にあてはまらないものをいいます。他の勘定科目にあてはまらなくても、継続的に発生するものは、新しく単独の勘定科目を設けた方がよいでしょう。

 

支払利息:支払利息とは、金融機関などからの借入金に対する利息を支払うときに用いる勘定科目です。

 

有価証券売却損:有価証券売却損とは、有価証券の売却により損失が計上される場合に用いる勘定科目です。

 

固定資産売却損:固定資産売却損とは、固定資産の売却により損失が計上される場合に用いる勘定科目です。

 

 

・複数考えられる勘定科目

 

 次のような取引は、複数の勘定科目が考えられます。どの勘定科目にするかは、その企業が定めたルールに従います。そのつど判断して、結果的に、同一取引なのに勘定科目は異なるということは避けなければなりません。

 

車のガソリン代➡「車両費」「旅費交通費」 

 

車の修理代・車検代➡「車両費」「修繕費」

 

士業の報酬※➡「支払手数料」「支払報酬」「顧問料」「管理諸費」など

※弁護士・公認会計士・税理士・司法書士・社会保険労務士など

 

モップ・マットなどのレンタル料➡「賃借料(リース料)」「消耗品費」「雑費」

 

制服・作業服、薬➡「消耗品費」「福利厚生費」

 

金融機関の振込手数料➡「支払手数料」「通信費」「雑費」

 

複写機のカウンター料金➡「消耗品費」「事務用品費」「支払手数料」

 

NHK受信料➡「通信費」「雑費」

 

あんしん財団会費➡「諸会費」「保険料」

 

インターネット料金➡「支払手数料」「通信費」

 

建物賃借の礼金・更新料※➡「支払手数料」「地代家賃」

※20万円未満のもの。20万円以上は長期前払費用となります。  

 

少額な飲食費※➡「交際費」「少額交際費」「会議費」など

※法人税では、社外の方との飲食費で1人5,000円以下のものは、交際費の範囲からはずすことができるので、それを受けて、各種の勘定科目が考えられます。

 

 

・補助科目(補助コード)

 

 実務上、預金(当座預金、普通預金、定期預金など)が2つ以上ある場合には、金融機関ごとに勘定科目を設定します。たとえば、ただの当座預金ではなく、A銀行当座預金、B信用金庫当座預金…、ただの普通預金ではなく、C銀行普通預金、D信用組合普通預金…というようにです。

 または、預金(当座預金、普通預金、定期預金など)の勘定科目に、金融機関ごとの補助科目(補助コード)を設定します。たとえば、当座預金の補助1:A銀行、補助2:B信用金庫…、普通預金の補助1:C銀行、補助2:D信用組合…というようにです。

 

 これらの方法により、預金通帳とのチェックが簡単にできます。ただし、左右が逆(※)になることにご注意ください。預金通帳は、左が預金の出金(支払い)で、右が預金の入金になっています。

※左右が逆になるのは、預金通帳が金融機関の元帳のコピーだからです。金融機関から見れば、入金は預り金(負債)の増加なので貸方(右側)、出金は預り金の減少なので借方(左側)となります。

 

 売掛金・買掛金などにも、取引先の補助科目(補助コード)を設定することにより、取引先ごとの管理を行うことができます。たとえば、売掛金の補助1:X商会、補助2:Y商店、補助3:Z産業…というようにです。

 これにより、取引先ごとの売上台帳・仕入台帳が作成できることになります。

 

 預り金も、内容ごとに、勘定科目を設定することがあります。ただの預り金ではなく、たとえば、源泉所得税預り金、住民税預り金、社会保険預り金…などとするような場合です。勘定科目ではなく、補助科目(補助コード)で設定することもあります。たとえば、預り金の補助1:源泉所得税、補助2:住民税、補助3:社会保険…というようにです。

 これにより、それぞれの預り金の預りとその支払いの対応をチェックすることができます。

 

 

※本稿は、次の拙著・拙稿をもとに、大幅に加筆修正したものです。

寺田誠一著『事典 はじめてでもわかる簿記』中央経済社1997年 「第3章 仕訳で使う勘定科目」

寺田誠一稿『聞くに聞けない会社経理のキホン 第1回 経理課の役割と簿記の基本』月刊スタッフアドバイザー 2004年10月号

 

 

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。