「複合仕訳の単一仕訳への分解」

 

2020年(令和2年)8月13日(最終更新2021年7月5日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・複合仕訳と単一仕訳

 

 仕訳で、借方(左側)と貸方(右側)の両方あるいは片方に、複数の勘定科目・金額があるものを、複合仕訳といいます。一方、借方(左側)と貸方(右側)の勘定科目・金額が1つだけのものを、単一仕訳といいます。

 

 パソコン会計では、複合仕訳も、通常、仕訳伝票においてそのとおり入力すればよいので、何の問題もありません。ただし、パソコン会計でも、次のような場合には、複合仕訳ではなく、単一仕訳の形で入力したいということがあります。

① 複合仕訳で入力すると、総勘定元帳などの相手勘定科目が「諸口」と表示されてしまう。

② 会計ソフトより連動してキャッシュフロー計算書や資金繰り表を作成している場合、複合仕訳だと正しく表示されない。

③ 仕訳伝票ではなく、現金出納帳または預金出納帳より入力している。

④   複合仕訳での入力が不可能・困難あるいはわかりにくい。

 

 複合仕訳を単一仕訳に分解する方法には、次の3とおりあります。第2法が内容に従って分けるので自然でよいかなと思いますが、臨機応変にそのときどきで使い分ければよいと思います。なお、会計ソフトによっては、「諸口」という勘定科目は、「複合」となります。

第1法…相手勘定科目を諸口とする方法

第2法…勘定科目と金額を分割する方法

第3法…相手勘定科目を現金(または預金)とする方法

 

 以下、いくつかの設例を使って、複合仕訳を単一仕訳に分解する3つの方法を見ていきます。

 

・給料の設例

 

(設例)

 次の複合仕訳を単一仕訳で表すと、どのようになりますか。

(借) 給   料 1,000,000  (貸) 現     金    800,000

    旅費交通費   100,000      源泉所得税預り金   90,000

                      住民税預り金     50,000

                      社会保険預り金   150,000

                      雇用保険預り金   10,000

 

 第1法 相手勘定科目を諸口とする方法

 

(借) 給   料 1,000,000   (貸) 諸    口   1,000,000

(借) 旅費交通費  100,000   (貸) 諸    口      100,000

(借) 諸   口  800,000     (貸) 現     金       800,000

(借) 諸   口    90,000     (貸) 源泉所得税預り金    90,000

(借) 諸   口    50,000     (貸) 住民税預り金      50,000

(借) 諸   口  150,000     (貸) 社会保険預り金    150,000

(借) 諸   口    10,000     (貸) 雇用保険預り金     10,000

 

  7つの単一仕訳に分け、相手科目を諸口とする方法です。この方法は単純で簡単です。ただ相手科目を「諸口」として、仕訳をすればよいわけです。「諸口」は、トータルで借方と貸方が同額となり、残高が0となります。

 ただし、この方法では、総勘定元帳の給料・旅費交通費などの相手科目の表示は、複合仕訳での入力と同じ、「諸口」となります。

 

第2法 勘定科目と金額を分割する方法

 

(借) 給   料   700,000   (貸) 現    金    700,000

(借) 旅費交通費  100,000   (貸) 現    金       100,000

(借) 給   料   90,000      (貸) 源泉所得税預り金     90,000

(借) 給   料   50,000    (貸) 住民税預り金       50,000

(借) 給   料  150,000   (貸) 社会保険預り金     150,000

(借) 給   料    10,000   (貸) 雇用保険預り金       10,000

 

 

 内容に即して、6つの単一仕訳に分けます。給料の額を、現金の支払い、各種預り金の計上に合わせて、分割で計上します。

 この方法は、まず現金払いの手取り額の記帳を行い、各種預り金の記帳は後日行うという場合に適しています。

 短所は、給料の総額1,000,000円は、単一仕訳をすべて合計してみないとわからないという点です。

 

第3法 相手勘定科目を現金(または預金)とする方法

 

(借) 給   料 1,000,000   (貸) 現    金   1,000,000

(借) 旅費交通費  100,000   (貸) 現    金        100,000

(借) 現   金    90,000      (貸) 源泉所得税預り金       90,000

(借) 現   金    50,000    (貸) 住民税預り金         50,000

(借) 現   金  150,000    (貸) 社会保険預り金       150,000

(借) 現   金    10,000    (貸) 雇用保険預り金         10,000

 

 相手科目を現金とした6つの単一仕訳となります。この方法は、まず給料1,000,000円と交通費100,000円を現金で支払い、その後、各種預り金が現金で返金されたと、現金の流れを仮定するものです(預金から出金している場合には、現金の箇所は普通預金などとなります。)。

 この方法は、すべて現金(または預金)を通すので、現金出納帳や預金出納帳から入力する場合に適しています。

 短所は、実際の現金の流れとは違うという点です(実際の現金の出金は800,000円なのに、いったん1,100,000円の出金という記入をする点)。

 

 

・売掛金入金の設例

 

 (設例)

 次の複合仕訳を単一仕訳で表すと、どのようになりますか。

(借)普通預金   54,500  (貸)売掛金 60,000

    諸会費   5,000

     支払手数料       500

 

第1法…相手勘定科目を諸口とする方法

 

(借)普通預金  54,500  (貸)諸  口 54,500

(借)諸会費    5,000      (貸)諸  口  5,000

(借)支払手数料       500  (貸)諸  口    500

(借)諸  口  60,000  (貸)売掛金  60,000

 

 単純に、相手科目を諸口として、仕訳をします。

 

第2法…勘定科目と金額を分割する方法

 

(借)普通預金  54,500  (貸)売掛金  54,500

(借)諸会費     5,000      (貸)売掛金   5,000

(借)支払手数料        500  (貸)売掛金        500

 売掛金60,000円の減少を、内容別に3つに分けます。54,500円は普通預金に入金になり、また、5,000円は諸会費、500円は支払手数料という経費になったとするものです。

 

第3法…相手勘定科目を現金(または預金)とする方法

 

(借)普通預金  60,000  (貸)売掛金   60,000

(借)諸会費     5,000      (貸)普通預金      5,000

(借)支払手数料        500  (貸)普通預金    500

 売掛金60,000円の全額がまず普通預金に入金になったと仮定し、その後、普通預金から5,000円の諸会費と500円の支払手数料を支払ったと仮定するものです。預金通帳の記帳と仕訳とが異なる記入になるのが(残高は同じ結果ですが)、少し気になる点です。

 

・長期借入金の設例

 

(設例)

 次の複合仕訳を単一仕訳で表すと、どのようになりますか(支払手数料は融資手数料、租税公課は収入印紙)。

(借)普通預金  4,987,000  (貸)長期借入金 5,000,000

   支払利息   10,000

   支払手数料    2,000

   租税公課     1,000

 

第1法…相手勘定科目を諸口とする方法

 

(借)普通預金  4,987,000   (貸)諸  口  4,987,000

(借)支払利息     10,000  (貸)諸  口         10,000

(借)支払手数料       2,000   (貸)諸  口    2,000

(借)租税公課      1,000   (貸)諸  口    1,000

(借)諸  口  5,000,000   (貸)長期借入金 5,000,000

 

第2法…勘定科目と金額を分割する方法

 

(借)普通預金  4,987,000  (貸)長期借入金 4,987,000

(借)支払利息   10,000  (貸)長期借入金       10,000

(借)支払手数料   2,000  (貸)長期借入金    2,000

(借)租税公課    1,000  (貸)長期借入金    1,000

 

第3法…相手勘定科目を現金(または預金)とする方法

 

(借)普通預金  5,000,000  (貸)長期借入金 5,000,000

(借)支払利息   10,000  (貸)普通預金          10,000

(借)支払手数料   2,000  (貸)普通預金         2,000

(借)租税公課    1,000  (貸)普通預金             1,000

 

 

・固定資産売却の設例

 

(設例)

 次の複合仕訳を単一仕訳で表すと、どのようになりますか。

(借)未収入金     900,000  (貸)車両運搬具 1,000,000

  固定資産売却損100,000   

 

第1法…相手勘定科目を諸口とする方法

 

(借)未収入金       900,000     (貸)諸  口      900,000

(借)固定資産売却損100,000   (貸)諸  口        100,000

(借)諸  口   1,000,000    (貸)車両運搬具 1,000,000

 

第2法…勘定科目と金額を分割する方法

 

(借)未収入金       900,000  (貸)車両運搬具 900,000

(借)固定資産売却損100,000  (貸)車両運搬具 100,000

 

第3法…相手勘定科目を現金(または預金)とする方法

 

 実際に、現金や預金は動いていないので、この方法は不可能ではありませんが、採らない方がよいと思います。

 

 

・固定資産購入の設例

 

(設例)

 次の複合仕訳を単一仕訳で表すと、どのようになりますか。

(借)車両運搬具   2,000,000  (貸)普通預金    100,000

    消耗品費       200,000     未払金  2,100,000

 

第1法…相手勘定科目を諸口とする方法

 

(借)車両運搬具   2,000,000   (貸)諸  口   2,000,000

(借)消耗品費       200,000   (貸)諸  口       200,000

(借)諸  口       100,000   (貸)普通預金     100,000 

(借)諸  口    2,100,000   (貸)未払金    2,100,000

 

 

第2法…勘定科目と金額を分割する方法

 

(借)車両運搬具      100,000   (貸)普通預金  100,000

(借)車両運搬具   1,900,000   (貸)未払金  1,900,000

(借)消耗品費       200,000  (貸)未払金    200,000

 

第3法…相手勘定科目を現金(または預金)とする方法

 

 預金が動いたのは100,000円だけで、2,100,000円の預金は動いていないので、この方法は不可能ではありませんが、採らない方がよいと思います。

 

 

※仕訳の訂正方法については、「仕訳の訂正」参照。 

※振込手数料の各種ケースについては、「振込手数料の会計処理(仕訳)」参照。

※社会保険料の各種方法については、「社会保険の内容と会計処理(仕訳)」参照

※労働保険料の各種方法については、「労働保険の税務と会計処理(仕訳)」参照。

※信用保証料の前払費用説・繰延資産説や表示などについては、「信用保証料の会計と税務」参照。

※実務的な消費税のパソコン入力方法については、「税込経理方式・税抜経理方式と仕訳入力」「消費税の内税入力」参照。

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。