「年末調整後の事務手続き」

 

2020年(令和2年)7月14日(最終更新2021年8月26日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・ 源泉徴収票

 

 12月の年末調整が終わると、給与計算ソフトで各人ごとの源泉徴収票を作成して、年が明けた1月末までに、本人に渡す必要があります。

 源泉徴収票とは、1年間の給料・賞与や各種の所得控除、扶養親族等のすべてのデータを記載した1枚の用紙です。したがって、これにより、所得税の税額計算のチェックが可能です。

 

 1年の中途で退職した人については、原則として、年末調整は行いません。したがって、退職時に退職者に渡す源泉徴収票は、1月1日から退職時までの「支払金額」「源泉徴収税額」「社会保険料等の金額」だけが記載されたものとなります。退職の年月日も記載されます。

 なお、1年の中途で入社しその年他社からの給与がある人は、年末調整にあたり、前の勤務先から退職時にもらった源泉徴収票を、新しい勤務先の給与計算担当者に提出することが必要です。年末調整は、1月1日からの1年分の計算をするため、前の勤務先の源泉徴収票がないと、年末調整ができません。

 

 源泉徴収票は、本人に渡すだけでなく、税務署と市町村にも提出します。税務署に提出するのは、次のような場合です。法人の役員や高額の所得者などについては、税務署で資料を収集し管理をするということです。

① 法人の役員の場合:年間給与の支払金額が1,500,000円を超えるとき

② 役員以外の場合 :年間給与の支払金額が5,000,000円を超えるとき

 

 1月末までに税務署へ提出する資料には、源泉徴収票以外に、各種の支払調書があります。同一人に対し、年間一定額以上の報酬や地代家賃などを支払っていた場合、源泉徴収票と同様の「支払調書」を作成し、源泉徴収票と一緒に、表紙(「法定調書合計表」といいます。)を付けて、1月末までに税務署へ提出します。

 税務署は、報酬や地代家賃などを受け取った相手側の申告のチェックに、それらの資料を使うわけです。

 

 さて、市町村には、税務署とは異なり、全員の源泉徴収票を提出します(東京23区は、区に提出)。役員や従業員それぞれの住所地の市町村に、1月末までに提出します。市町村は、源泉徴収票を「給与支払報告書」と呼びます(わざわざ、違う名前にすることは必要ないと思うのですが。)。それぞれの市町村は、提出された給与支払報告書に基づき、住民税の計算をします。

 

 

・扶養是正

 

 配偶者や子どもがパートで働いている次のような場合、本人の年末調整をやり直し、追加の所得税を納める必要があります。これを、「扶養是正」といいます。

① 配偶者の所得を過少に見積ったため、本人の配偶者控除・配偶者特別控除が過大となっていた場合。

② 子どもに480,000円以上の所得があるにもかかわらず、本人の扶養親族としていた場合。

 

 そのような是正の手順を、ご説明します(配偶者がパートで働いているケース)。

① 本人と配偶者の住所地を所轄する市区町村に、本人の勤務先の会社と配偶者の勤務先の会社から、それぞれ給与支払報告書が送られてきます。

② 市区町村では、家族単位に名寄せをして、所得税の計算のチェックを行います。もし、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除などの誤りを発見したら、本人の勤務先の所轄税務署に連絡します。

③ 税務署は、本人の勤務先の会社に連絡します。

④ 本人の勤務先は、正しい年末調整をしたときとの差額の所得税を、税務署に納めます。本人の勤務先は、その分を本人より徴収し、一連の流れが終了します(その後、本人の住民税も、当然、増えます。)。

 

 このように、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除などが過大で所得税納税額が少なすぎた場合には、課税当局から連絡がきます。しかし、逆に、それらの控除額などが過少で納税額が多すぎた場合には、課税当局からは特に何も言ってこないので、税金を戻してもらうためには本人から税務署に申し出る必要があります。

 配偶者がパートで働いている場合や、大学生の子どもがアルバイトをしている場合などは、本人の年末調整において、注意をする必要があります。

 

 

・住民税

 

 市区町村は、1月末までに送られてきた給与支払報告書に基づいて、住民税を計算します。したがって、住民税は、本人や企業で計算する必要はありません。住民税とは、都道府県民税と市町村民税を指します(東京23区は、市町村民税ではなく、区民税となります)。

 

 住民税は、均等割と所得割との合計から成ります。

 均等割とは、各個人に定額5,000円で課税されるものです(都道府県市町村によっては、超過課税で5,000円より高い場合もあります。)。

 住民税の所得割は、一律に10%です(都道府県市町村によっては、超過課税で10%より高い場合もあります。)。所得税と異なり、課税所得に応じた累進税率は採っていません。所得税の税率は、課税所得1,950,000円以下は5%で、1,950,000円超~3,300,000円は、10%の累進税率です。したがって、これらの課税所得の方は、所得税よりもむしろ住民税の方が高いということになります。

 

 なお、細かいことをいうと、所得控除の各項目は、おおむね住民税の方が所得税よりも少額なので、課税所得は住民税の方が所得税よりも多くなります。これなども、統一してほしいものです。

 

 住民税の徴収方法には、特別徴収と普通徴収という2つの方法があります。

 

 特別徴収とは、住民税を、6月から翌年5月までの毎月の給料より天引きして徴収する方法です(賞与からは天引きしません。)。年間の住民税額を12等分し、100円未満の端数は6月に徴収します。したがって、7月から翌年5月までは、毎月同じ額になります。

 企業は、毎月、特別徴収した住民税を、翌月10日までに納付します。ただし、住民税の納期の特例として、常時10人未満の企業は、市町村の承認を得て、半年分まとめて、6月分~11月分は12月10日までに、12月分~翌年5月分は6月10日までに、それぞれ納付することもできます。ただし、所得税の納期の特例と1か月ずれているので、あまり利用されていません。住民税は、毎月、納付していることが多いと思われます。

 

 普通徴収とは、住民税を、年4回分割(6月・8月・10月・1月の各末日まで)して、個人で納める方法です。普通徴収の場合には、勤務先の企業は無関係となります。

 したがって、市町村からの金額の通知と納付書は、特別徴収ならば勤務先へ、普通徴収ならば個人の住所へ、それぞれ送られてきます。

 

 給与所得者の場合には、給与から差し引く特別徴収が原則です。普通徴収は、例外的な制度で、給与が少なく税額が引けない方や給与の支払いが不定期な方だけが可能です。その場合には、1月に市町村に送る給与支払報告書の摘要欄に、「普通徴収希望」と記入することが必要です。

 

 住民税の基準は、1年遅れになっています。たとえば、×2年6月から開始する住民税の課税は、前年分すなわち×1年1月~12月分の所得が基準となっています。

 したがって、×2年3月に退職して4月から所得が減る人でも、6月からの住民税は、前年の退職前の所得が基準となるので、×3年5月までは高いままとなります。退職した年は、所得が減っても、住民税は減らないということになります。

 

 

 ・償却資産申告書

 

 1月末までに市町村へ提出が必要な書類としては、給与支払報告書以外に、償却資産申告書があります。

 償却資産とは、構築物・機械装置・工具器具備品などをいい、申告に基づき、固定資産税が課税されます。なお、土地・建物については、市町村が独自に調べて、固定資産税を課税するので、償却資産の申告には含めません。また、自動車税・軽自動車税が課税される車両運搬具は、固定資産税が課税されないので、償却資産には含まれません。

 

 償却資産に関する固定資産税は、取得価額から減価償却累計額を差し引いた額を課税標準とし、それに1.4%の税率を乗じた額です。ただし、原則として、減価償却の計算は市町村で行うので、資産の名称・取得年月・取得価額・耐用年数などだけの申告となります。

 償却資産の申告は、資産の存在する市町村ごとに行います。なお、償却資産の申告には免税点があり、1つの市町村における課税標準が1,500,000円未満の場合には課税されません。

 

 

※本稿は、次の拙稿・拙著をもとに、大幅に加筆修正したものです。

寺田誠一稿『聞くに聞けない会社経理のキホン 第4回 源泉徴収票(給与支払報告書)と住民税』月刊スタッフアドバイザー 2005年(平成17年)1月号

寺田誠一著 『新人経理マン・経理ウーマンのための初級経理レッスン』税務研究会出版局1999年(平成11年) 「レッスン2-8、2-9、2-10 年末調整後の事務」

 

 

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。