「現金預金の内容と会計処理(仕訳)」

 

2020年(令和2年)3月28日(最終更新2021年7月5日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・現  金

 

 現金預金は、貸借対照表の流動資産の一番初めに表示されます。現金は、正常営業循環過程の内にあると考え、流動資産とされます。

 

 現金には、手元の実際の現金だけでなく、小切手・配当金領収書・期限の到来した公社債の利札(りふだ)など現金と同様の性格を持つものも含まれます。

 なお、金庫の中に、現金と一緒に、切手・収入印紙などが入っていても、少額の場合には、通常、現金扱いしないことが多いと思われます。

 

 以下、各種の設例を見ていきます。

(設例)

 上場会社の株式を保有しており、配当金領収書が送られてきた。配当金額30,000円(うち所得税2,100円)。

 

(借)現   金    27,900 (貸)受取配当金 30,000

  法 人 税 等   2,100

 配当金は金融機関に振り込んでもらうことが望ましいのですが、その手続きを採っていない場合には配当金領収書が送られてきます。配当金領収書は金融機関に持ち込めばすぐに受け取れるので、手元にある場合でも現金扱いします。

 国税である所得税は、原則として、法人税の前払いとなるので、「法人税等」(正式名称は、「法人税、住民税及び事業税」)で処理します。

 

(設例)

 公社債の利札40,000円(うち所得税6,000円)の期限が到来した。

 

(借)現    金 32,000 (貸)有価証券利息 40,000

  法 人 税 等   6,000

 支払期日の到来した公社債の利札も、金融機関に持ち込めばすぐに受け取れるので、手元にある場合でも現金扱いします(逆に、期日のまだ来ていない利札は、現金扱いしません)。有価証券の利息は受取利息ではなく、「有価証券利息」を用います(財務諸表等規則90条)。

 

(設例)

① 本日の営業終了後、現金の実際残高が出納帳よりも200円少なかった。顧客への釣銭の誤りと思われるが、原因は不明である。

② 別の日、現金の実際残高が出納帳よりも800円多かった。原因は不明である。

③ 決算を迎えた。

 

①(借)雑 損 失 200  (貸)現   金 200

②(借)現     金 800  (貸)雑 収 入 800

③(借) 雑 収 入  200  (貸)雑 損 失 200

 

 実際の現金が帳簿よりも多い場合には営業外収益の雑収入、不足している場合には営業外費用の雑損失とします。「現金過不足」という勘定科目を使ってもかまいません。

  雑収入と雑損失の両方が存在している場合には、相殺して表示するのがよいでしょう。この設例では、③の決算整理仕訳の結果、雑損失は0となり、損益計算書の雑収入に600円と表示されます。

 

(設例)

① 切手4,000円を現金で購入した。期末には、未使用の切手1,500円が残っていた。

② 収入印紙50,000円を現金で購入した。期末には、未使用の収入印紙3,000円が残っていた。

③ JRのプリペイドカードに、10,000円現金でチャージした。期末の未使用残高は2,000円であった。

 

①(借)通 信 費     4,000     (貸)現   金  4,000

②(借)租税公課  50,000   (貸)現   金 50,000

③(借)旅費交通費 10,000   (貸)現   金 10,000

 

 切手、収入印紙、プリペイドカードなどは、支払時に費用処理し、期末に未使用のものが残っていても、通常、少額であるので、資産計上(前払費用または仮払金)はしないのが通例です。つまり、簿外処理となります。少額の場合には、税務上も許容されるものと考えます。ただし、これらについては、受け払い(購入・使用・残高)の管理簿を付けることが望ましいといえます。

 費用科目は、一般的に、切手は通信費、収入印紙は租税公課、JR・私鉄のプリペイドカードは旅費交通費となります。

 

 

・預  金

 

 預金は、決算日の翌日から1年以内に期限が到来するものは、正常営業循環過程の内にあるとみなして、流動資産とされます。預金で、決算日の翌日から1年を超えて期限到来するものは、正常営業循環過程の外にあるとみなして、固定資産(投資その他の資産)とされます。当初1年超であっても、決算時に1年以内となった預金は、流動資産となります。

 

  金融機関の預金には、次のような種類があります。

① 当座預金

  小切手や手形で引き出す決済用の預金です。利息は付きません。通帳はなく、金融機関から、毎月の入出金を記録した当座勘定照合表という明細表が来ます。

② 普通預金

  いつでも出し入れできる預金なので、利率は最も低くなっています。さいふ代わりに用います。

③ 通知預金

  預入日から7日間は据置期間となり、原則、引き出しができません(据置期間内に引き出すと、普通預金の利率になってしまいます。)。近い将来、使う予定があるお金を短期間運用する場合などに用います。引き出す場合には、金融機関に2日前までに通知(連絡)する必要があるため、この名前が付きました。

④ 定期預金

  あらかじめ定めた預入期間(3ヶ月、6ヶ月、1年など)は、原則として引き出しができないので、普通預金より利率が高い預金です(期限前に解約すると、普通預金の利息しか付きません。)。しばらくの間、使う予定のないお金を預けるときに用います。

⑤ 定期積金

  一定の金額を継続的に積み立て、満期日に元金と利息を受け取る預金です(利息のことを給付補填金といいます。)。将来の目標額を決め、それに向かって毎月積み立てる場合などに用います。定期積金は、信用金庫、信用組合などに限られます。都市銀行、地方銀行では、同様の商品を、積立定期預金といいます。

⑥ 納税準備預金

  引き出しを税金の納付目的に限定した預金です。利率は普通預金より高くなっており、利息には国税(所得税)はかからず非課税です。ただし、納税以外の目的で引き出すと、普通預金の利率となり、利息にも国税(所得税)が課税されます。

 

 当座勘定照合表や普通預金通帳などは、預金の増加(入金)が貸方(右側)、預金の減少(出金)が借方(左側)に記載されています。簿記のルールからすると、逆です。

 これは、金融機関の元帳のコピーだからです。金融機関から見れば、入金は預り金(負債)の増加なので貸方(右側)、出金は預り金の減少なので借方(左側)となります。

 

  預金に関するいろいろな設例を見ていきたいと思います。

 

(設例)

 普通預金の利息が、通帳に2,000円記帳された。

 

(借)普通預金  2,000  (貸)受取利息  2,361

  法人税等   361 

 

 普通預金の利息(*)は、通常、計算書が来ないので、国税(所得税)の金額を算出する必要があります。

2,000円÷0.84685=2,361円(円未満切り捨て)

2,361円×0.15315=361円(円未満切り捨て)

 そして、次のような、国税(所得税)が受取利息の15.315%以下になっているかのチェックが必要です。

国税361円≦(2,000円+361円)×0.15315

*利息には、15%の国税(所得税)がかかりますが、2037年末まではさらに復興特別所得税2.1%が加わります。その結果、国税(所得税)は15%×1.021=15.315%となります。したがって、手取額は、1-0.15315=0.84685となります。

 

 なお、一般的に、普通預金利息に限らず、国税(所得税)が少額な場合には、法人税等の記入および法人税の税額控除を省略する場合もあります。

 

(設例)

 1年間毎月掛けた定期積金2,400,000円が満期になったので、現金で引き出した。計算書を見ると、利息(給付補填金)12,000円(うち所得税1,800円)が付いていた。

(借)現  金  2,410,200    (貸)定期積金  2,400,000

  法人税等    1,800      受取利息     12,000

 積み立てた2,400,000円と利息の手取額10,200円を、現金で受け取ったという設例です。

 

(設例)

 自動継続の定期預金2,000,000円が満期となったので、利息20,000円(うち所得税3,000円)を元金に繰り入れ、継続した。

 

(借)定期預金  2,017,000    (貸)定期預金  2,000,000

  法人税等    3,000        受取利息    20,000

 

 または、利息だけを認識する仕訳でも、同じ結果になります。

(借)定期預金     17,000    (貸) 受取利息    20,000

  法人税等    3,000      

  利息の手取額17,000円を元金に繰り入れるので、新しい元金は2,017,000円となります。

 

(設例)

 期末(決算日)において、2年物の定期預金3,000,000円があり、期日までの期間は1年2か月であった。

 

(借)長期預金 3,000,000   (貸)定期預金 3,000,000

 貸借対照表における定期預金の表示は、1年基準によります。すなわち、決算日の翌日から1年以内に期日の到来しない定期預金は、流動資産の現金預金ではなく、投資その他の資産に表示されます。

 

 なお、「当座貸越」(借りる会社側からいえば「当座借越」)ですが、簿記検定や教科書では、当座預金の残高以上に小切手を振出し、当座預金をマイナスにすることと説明されています。しかし、実際には、そのような意味での当座貸越はまれです。

 実務的には、自由に借入れ・返済をできる限度額を設定し、その枠内で借りる借入金を当座貸越と呼んでいます。その当座貸越で通帳に入金になったときは、通常の短期借入金で処理します。

 金融機関の残高証明書では、借入金は「手形貸付」または「証書貸付」と記載されますが、この意味の当座貸越は残高証明書においても「当座貸越」と記載されます。貸借対照表の表示は、短期借入金に含めます。

 

・振り込みの誤り

 

 振り込みの相手先や金額を間違えてしまう場合があります。その場合の処理を考えてみます。

 

(設例)

① 広告掲載料200,000円を普通預金より振り込み(振込手数料500円は、同時に普通預金より支払ったが、相手先負担とする)。

② この振り込みは相手先を誤ったため、振込手数料500円を差し引いて普通預金に振り込みで返金してもらった。

③ 正しい相手先に広告掲載料200,000円を普通預金より振り込み(振込手数料500円は同時に普通預金より支払ったが、相手先負担とする。)。

 

①(借)広告宣伝費 200,000 (貸)普通預金 200,000

  普通預金200,000円のうち500円は金融機関に支払い、先方には199,500円支払います。

 

②(借)普通預金  199,000 (貸)広告宣伝費 200,000

        支払手数料    1,000

  広告宣伝費を取り消す処理を行います。相手先には199,500円入金になっていますが、それから500円差し引いて199,000円当社に戻してもらったわけです。すると、200,000円との差額1,000円(振込手数料2回分)は、結果的に当社の負担となります。

 

③(借)広告宣伝費 200,000 (貸)普通預金 200,000

 

  ①と②は広告宣伝費を支払ったことにはならないので、すぐに間違いに気付けば、最初から、広告宣伝費ではなく仮払金で処理する方が望ましいです。

 

①(借)仮払金    200,000   (貸)普通預金 200,000

②(借)普通預金  199,000 (貸)仮払金   200,000

        支払手数料  1,000

 

(設例)

① コピー用紙・トナー代152,000を当座預金より振り込むところ、誤って153,000円振り込んでしまった(振込手数料500円は当方負担とする)。

② 過大分1,000円は封筒に切手を入れて返金してもらった(郵送料100円を差し引かれた。)。

 

 ①(借)消耗品費  153,000   (貸)当座預金153,500

    支払手数料  500

 

②(借)通信費    900    (貸)消耗品費 1,000

      通信費    100

 切手代は通信費で費用処理しますが、当社の手元には900円分の切手が残ることになります。

 

 前の設例と同様に、過大分については仮払金を使用する、次のような仕訳も考えられます。

①(借)消耗品費  152,000    (貸)当座預金 153,500

       仮払金     1,000

     支払手数料      500

 

②(借)通信費    900    (貸)仮払金   1,000

      通信費    100

 

 

※本稿は、次の拙稿を加筆修正したものです。

寺田誠一稿『経理の疑問点スッキリ解明 第16回 現金預金』月刊スタッフアドバイザー 2010年7月号

 

 

※仕訳の訂正の各種方法については、「仕訳の訂正」参照。

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。