「200%定率法への減価償却税務改正」

 

2021年(令和3年)1月23日(最終更新2021年7月6日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・250%定率法から200%定率法への変更

 

 2012年(平成24年)4月1日から、減価償却の税務上の取扱いが変わりました。具体的には、事業年度にかかわらず、2012年(平成24年)4月1日以後取得する減価償却資産から、従来の250%定率法に代わり、200%定率法が適用されることになりました。なお、変更は定率法だけで、定額法については変更ありません。

 

 250%定率法とは、定額法償却率を2.5倍した償却率を用いるものです。具体的には、1÷耐用年数×2.5で、小数第4位以下を四捨五入して小数第3位までとします。200%定率法とは、定額法償却率を2倍したもので、1÷耐用年数×2.0で、小数第4位以下を四捨五入します。税務上は償却率の表があるので、実務的にはその表を用います。

250%定率法の償却率=定額法償却率×2.5

200%定率法の償却率=定額法償却率×2.0

 

 固定資産の取得から耐用年数経過時まで、取得価額から備忘価額1円を差し引いた額が減価償却費として費用計上されます。その減価償却費の各事業年度への按分計算を定めたものが、定率法や定額法などの償却方法です。トータルでの費用額は変わりませんが、償却方法により各年度への配分額が異なります。250%定率法から200%定率法に変わったことにより、償却のスピードが鈍り費用化が遅くなります。つまり、初期の年度の減価償却費が少なくなり、後半の年度の減価償却費が増えます。

 

 250%定率法から200%定率法に変更する理由ですが、それは、2010年(平成22年)12月16日発表の政府税制調査会の「平成23年度税制改正大綱」に記載されています。

 大綱では、企業の国際競争力強化のため、国際的に高い水準にある法人税率の引き下げを行うとされています。一方、税収の減少を防ぐため、税金の課税される対象を広げる課税ベースの拡大により財源確保を図るとしています。課税ベースの拡大として、租税特別措置である特別償却や準備金の縮小・廃止、大法人についての欠損金繰越控除の一部制限などと並んで、減価償却の償却速度を主要国並みに見直すことが挙げられています。

 その具体策として、250%定率法から200%定率法に変更されるわけです。250%定率法では、初期の損金算入額が大きく、つまり、所得の圧縮効果が大き過ぎるというわけです。

 

 ところで、減価償却の税務は、2007年度(平成19年度)の税制改正で、大きく変わりました。2007年(平成19年)4月1日以後取得する減価償却資産から、残存価額が廃止され、旧定率法から250%定率法に変更されました。5年後の2012年(平成24年)4月1日から、再び大きな変更が行われたというわけです。

 

 旧定率法、250%定率法、200%定率法の各償却率を示してみると、次のとおりです。

耐用年数

2

3

4

5

6

7

8

9

10

旧定率法

0.684

0.536

0.438

0.369

0.319

0.280

0.250

0.226

0.206

250%定率法

1.000

0.833

0.625

0.500

0.417

0.357

0.313

0.278

0.250

200%定率法

1.000

0.667

0.500

0.400

0.333

0.286

0.250

0.222

0.200

 

 

 ここで、200%定率法の償却率を、旧定率法の償却率と比較してみます。耐用年数2~7年では、200%定率法の償却率が旧定率法の償却率を上回りますが、8年では同じとなります。そして、耐用年数9年以上では、200%定率法の償却率が旧定率法の償却率を下回ります。つまり、償却率は、元どおりではなく、元どおり以下になってしまったということです。それならば、むしろ、旧定率法のままの方がよかったといえます。

 減価償却は、会計の根幹を成すものです。そして、減価償却の会計実務は、税務に多く拠っています。そのため、税務の減価償却に関する規定には、安定性が求められると思います。2007年(平成19年)に変更しわずか5年でまた変えたということは、制度を複雑にしてしまい、望ましいことではなかったと思います。

 

 

・2種類の特例措置

 

 2012年(平成24年)の改正で200%定率法を適用するにあたり、2つの特例措置が設けられました。いずれも、会社の事務処理の軽減を図るためのものです。

 

(1) 事業年度開始適用措置

 

 200%定率法は、2012年(平成24年)4月1日以後取得する減価償却資産から適用されます。そのため、改正事業年度においては、複数の取得資産がある場合、その取得日に応じて、250%定率法と200%定率法とに分かれてしまう可能性があります。

 それを避けるため、改正事業年度においては、2012年(平成24年)4月1日~改正事業年度末の取得資産については、それらを2012年(平成24年)3月31日以前に取得したものとみなすことができるという特例が設けられました。つまり、それらの資産は250%定率法により償却することができるということです。

 この特例により、改正事業年度において取得した資産は、すべて250%定率法により償却することができます。また、この特例は会社が任意に適用することができ、税務署への届出も必要ありません。

 この特例は、適用した方が費用化が速くなって会社にとって有利なので、多くの会社が選択するものと思われます。なお、この特例は、改正事業年度1回限りのものです。また、3月決算法人には、この特例の適用はありません。

 

(2) 当初年数償却終了措置

 

 2012年(平成24年)4月1日以後に取得する減価償却資産は200%定率法が強制されますが、2007年(平成19年)4月1日~2012年(平成24年)3月31日に取得した資産については250%定率法となります。そこで、2012年(平成24年)4月1日以後に取得した資産と以前に取得した資産が両方存在している場合には、200%定率法と250%定率法が混在することになります。それらの資産については別個に計算を行っていくことになります(本稿では、これを第1法と名付けることにします。)。

 

 こうした煩雑さを避けるため、それらの定率法適用資産をすべて200%定率法で計算することが考えられます。ただし、そうすると当初250%定率法適用資産を途中から200%定率法で計算することになり、法定耐用年数で償却が終わらず償却期間が長くなってしまう可能性があります(これを第2法とします。)。

 

 そのような会社の不利益を避けるため、変更事業年度以後の年度において200%定率法を適用しても、当初の法定耐用年数で償却が終わるようにする特例が設けられました(これを第3法とします。)。

 この第3法の特例の適用を受ける場合には、250%定率法適用資産のすべてが対象となります。個々の資産ごとや資産の種類ごと(建物、構築物、車両運搬具…)に選択することはできません。また、この特例の適用を受けるためには、改正事業年度の確定申告書の提出期限までに税務署へ届出をすることが必要です。

 

 

 第1法~第3法のイメージは、次のような感じです。実際には減価償却ソフトに計算させるので、別々であっても煩雑ではないので、原則的方法である第1法が多いと思われます。第2法や第3法は少ないでしょう。

 

・第1法、第2法、第3法の設例

 

(第1法の設例)

 3月決算のH社が、取得価額10,000,000円の減価償却資産を平成23年4月1日に取得 耐用年数6年 250%定率法(償却率0.417) 改定償却率0.500  保証率0.05776

 

平成24年3月期(1年目)

定率法償却額:取得価額10,000,000円×償却率0.417=4,170,000円

償却保証額:取得価額10,000,000円×保証率0.05776=577,600円

償却限度額:4,170,000円

 この期は、定率法償却額4,170,000円と償却保証額577,600円とを比較して、定率法償却額の方が大きいので、定率法償却額4,170,000円が償却限度額となります(以下、平成27年3月期まで同じ)。償却保証額577,600円は、毎期同額となります。

 

平成25年3月期(2年目)

償却限度額:期首帳簿価額5,830,000円×償却率0.417=2,431,110円

 

平成26年3月期(3年目)

償却限度額:期首帳簿価額3,398,890円×償却率0.417=1,417,337円

 

平成27年3月期(4年目)

償却限度額:期首帳簿価額1,981,553円×償却率0.417=826,307円

 

平成28年3月期(5年目)

定率法償却額:期首帳簿価額1,155,246円×償却率0.417=481,737円

償却限度額:改定取得価額1,155,246円×改定償却率0.500=577,623円

 この期は、定率法償却額481,737円が償却保証額577,600円を下回るので、改定取得価額(28年3月期の期首帳簿価額)1,155,246円に改定償却率0.500を乗じた額が償却限度額となります。

 

平成29年3月期(6年目)

償却限度額:改定取得価額1,155,246円×改定償却率0.500-備忘価額1円=577,622円

 この期は最終年度なので、備忘価額1円を差し引きます。

 

 第1法は、平成24年4月1日より以前の取得なので、その後の年度において250%定率法をそのまま適用していく事例です。

 

(第2法の設例)

 3月決算のH社が、取得価額10,000,000円の減価償却資産を平成23年4月1日に取得

耐用年数6年 平成24年3月期は250%定率法 平成25年3月期より200%定率法(償却率0.333)で償却費を計上  改定償却率使用後は250%定率法の償却率を使用して償却限度額まで償却費を計上

 

平成24年3月期(1年目)

定率法償却額:取得価額10,000,000円×償却率0.417=4,170,000円

償却保証額:取得価額10,000,000円×保証率0.05776=577,600円

償却限度額:4,170,000円

 

平成25年3月期(2年目)

定率法償却額:期首帳簿価額5,830,000円×償却率0.333=1,941,390円

 

平成26年3月期(3年目)

定率法償却額:期首帳簿価額3,888,610円×償却率0.333=1,294,907円

 

平成27年3月期(4年目)

定率法償却額:期首帳簿価額2,593,703円×償却率0.333=863,703円

 

平成28年3月期(5年目)

定率法償却額:期首帳簿価額1,730,000円×償却率0.333=576,090円

 

平成29年3月期(6年目)

定率法償却額:期首帳簿価額1,153,910円×償却率0.333=384,252円

償却限度額:改定取得価額1,153,910円×改定償却率0.500=576,955円

 この期は、本来の定率法償却額(期首帳簿価額1,153,910円×250%償却率0.417=481,180円)が償却保証額577,600円を下回るので、改定取得価額(29年3月期の期首帳簿価額)1,153,910円に改定償却率0.500を乗じた額が償却限度額となります。

 

平成30年3月期(7年目)

償却限度額:改定取得価額1,153,910円×改定償却率0.500-備忘価額1円=576,954円

この期は最終年度なので、備忘価額1円を差し引きます。

 

 第2法は、その後の年度において200%定率法に変更したが特例措置の届出はしなかった場合の事例です。この事例では、2年目から5年目は、法人税法上の償却限度額以下の額を計上しているということになります。本来の耐用年数である6年で償却が終わらず、償却期間が7年目まで伸びています。

 

(第3法の設例)

 3月決算のH社が、取得価額10,000,000円の減価償却資産を平成23年4月1日に取得

耐用年数6年 平成24年3月期は250%定率法 平成25年3月期より耐用年数5年の200%定率法(償却率0.400) 改定償却率0.500 保証率0.10800 当初年数償却終了措置適用

 

 

平成24年3月期(1年目)

定率法償却額:取得価額10,000,000円×償却率0.417=4,170,000円

償却保証額:取得価額10,000,000円×保証率0.05776=577,600円

償却限度額:4,170,000円

 

平成25年3月期(2年目)

定率法償却額:期首帳簿価額5,830,000円×償却率0.400=2,332,000円

償却保証額:取得価額5,830,000円×保証率0.10800=629,640円

償却限度額:2,332,000円

 

平成26年3月期(3年目)

償却限度額:期首帳簿価額3,498,000円×償却率0.400=1,399,200円

 

平成27年3月期(4年目)

償却限度額:期首帳簿価額2,098,800円×償却率0.400=839,520円

 

平成28年3月期(5年目)

定率法償却額:期首帳簿価額1,259,280円×償却率0.400=503,712円

償却限度額:改定取得価額1,259,280円×改定償却率0.500=629,640円

 この期は、定率法償却額503,712円が償却保証額629,640円を下回るので、改定取得価額(28年3月期の期首帳簿価額)1,259,280円に改定償却率0.500を乗じた額が償却限度額となります。

 

平成29年3月期(6年目)

償却限度額:改定取得価額1,259,280円×改定償却率0.500-備忘価額1円=629,639円

 この期は最終年度なので、備忘価額1円を差し引きます。

 

 第3法は、その後の年度において200%定率法に変更して特例措置の届出をした場合の事例です。この場合には、本来の耐用年数である6年で償却が終わっています。

 

 3月決算法人が第3法を適用する場合、200%定率法に変更するのは、2013年(平成25年)3月期に限られます。実際の計算は、平成25年3月期の期首帳簿価額から未償却割合を算出して、経過年数表にあてはめて経過年数を求め、それを法定耐用年数から差し引いて新しい耐用年数とします。複雑な手順です。

 

・資本的支出の特例

 

 資本的支出とは、固定資産の価値を高めるためや耐久性を増すための修理・改良を行った場合、元の資産(本体資産)の取得価額に追加される支出をいいます。維持管理や原状回復のための修繕費と対比される概念です。

 たとえば、蛍光灯をLEDランプに取り替えた場合を考えてみます。LEDランプは、照明設備(建物附属設備)がその効用を発揮するための1つの部品です。そして、その部品の性能が高まったことをもって、建物附属設備としての価値が高まったとまではいえないので、資本的支出ではなく、修繕費とされます。 

 

 資本的支出があった場合には、本体資産とは別個の資産として償却するのが原則です。ただし、定率法を適用している資産について資本的支出があった場合には、その翌年度からは本体資産と資本的支出とを一緒にして償却することもできるという特例があります。

 2007年(平成19年)4月1日~2012年(平成24年)3月31日に取得した本体資産に対して、同じ期間内の資本的支出があるときは、この特例の適用があります。また、2012年(平成24年)4月1日以後に取得した本体資産に対して、同日以後の資本的支出があった場合にも、この特例が認められます。

 ただし、2007年(平成19年)4月1日~2012年(平成24年)3月31日に取得した本体資産に対して、2012年(平成24年)4月1日以後に資本的支出が行われた場合には、償却率が異なるため、この特例の適用は認められません。

 

 

※本稿は、次の拙稿を加筆修正したものです。

寺田誠一稿『会計と税務の交差点スッキリ整理! 第10回 「減価償却改正」の三者三様』月刊スタッフアドバイザー 2012年5月号

 

 

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。