「A4 1枚で理解する電子帳簿保存法の初歩」

 

2022年(令和4年)10月17日(最終更新2023年2月13日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・電子帳簿保存法の3つの内容

 

 現在、企業の経理事務関係では、インボイス(2023年10月1日より実施)と電子帳簿保存法(2024年1月1日より完全実施)の2つが、大きなトピックスです。電子帳簿保存法の内容は、下記のⅠ、Ⅱ、Ⅲの3つに分かれますが、Ⅰ電子取引がまず一番重要となってきます。

 

Ⅰ 電子取引

 

 契約書・見積書・納品書・請求書・領収書などの書類が、紙ではなく電子取引で受け渡しされた場合には、電子データのまま保存しなければならないというものです。電子取引は、仕入先などから受領した書類だけでなく、自社がデータで発行した書類の控も対象です。

 つまり、電子取引のデータは、紙で出力したものを保存しておくだけではダメということです(電子データ保存の義務化)。原本は、紙ではなく、電子データであるという考えです。経理実務が、従来と大きく変わります。

  

  データ保存については、「検索要件」があります。①取引年月日、②取引金額(税込・税抜どちらも可)、③取引先名の3つで検索できることが必要です。

 

 データについては、「改ざん防止要件」も必要です。次のいずれかの方法が要求されます。①が一番簡単で、次が②です。

① 「電子取引データの訂正削除の防止に関する事務処理規定」を作成・運用すること(国税庁ホームページに、書式のサンプルが掲載されています。)。

② データの訂正削除を行った場合にはその記録が残るシステム、または、訂正削除ができないシステムを利用すること。

③ 速やかに(2か月+おおむね7営業日以内)タイムスタンプを付すこと。

 

 以上の内容が現実にはなかなか難しいということで、令和5年度税制改正により、猶予措置が設けられます。

① 相当の理由がある場合には、検索要件・改ざん防止要件の両方が不要となります(出力書面の整然明瞭が条件)。

② 改ざん防止要件を備えていれば、検索要件は不要となります。

 ②-1:出力書面が整然明瞭で、日付・取引先ごとに整理が条件…対象者に制限なし

 ②-2:②-1の条件なし…前々年度の売上5千万円以下の事業者

  

Ⅱ スキャナ保存

 

 契約書・見積書・納品書・請求書・領収書などの書類を、紙で受領した場合、スキャナ保存することにより、原本である紙を破棄してもよいとするものです。

 

 スキャナ保存は、次のいずれかの方法によることが必要です。

① データの訂正削除を行った場合にはその記録が残るシステム、または、訂正削除ができないシステムを利用すること。

② 速やかに(2か月+おおむね7営業日以内)タイムスタンプを付すこと。

 

 これは、ペーパーレス化・デジタル化の一環です。中小企業では、今すぐというものではなく、今後の課題ということでよいと思います。

 

Ⅲ データ保存

 

 自社の決算書・申告書・総勘定元帳・契約書控・見積書控・納品書控・請求書控・領収書控などをデータとして作成し、その後、紙で出力して保存している場合、紙の保存を止めて、データのまま保存してもよいとするものです。

 

 これも、ペーパーレス化・デジタル化の一環です。中小企業では、とりあえず、従来どおり、紙の方が見やすいものは紙による出力でよいと思います。

 

・電子帳簿保存法への対処の仕方

 

 下記の2段階に分けて考えるのがよいと思います(もちろん、第1段階と第2段階とを同時に実施することも可能です。)

① 第1段階

 Ⅰ電子取引については、2024年1月以降、整然・明瞭に保存が必要です。

② 第2段階

 経理実務ではデータと紙とが混在することになります。それを解消して紙を無くし全部データにする場合や、紙を減らしてデータを多くする場合に、Ⅱスキャナ保存とⅢデータ保存を考えることになります。

 

 保存のためのシステムが数多く登場し、デジタルインボイスの普及も進むと思われるので、よく比較検討することが大事です。

 

 

※インボイスについては、「インボイス制度の取引先への具体的対応」参照。

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。