「一括比例配分方式と個別対応方式」

 

2020年(令和2年)8月10日(最終更新2021年8月19日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・仕入税額控除の方式

 

(1) 全額控除方式(95%ルール)

 

 課税売上割合が95%以上で、かつ、当事業年度の課税売上高(税抜)が5億円以下の事業者は、課税仕入れの消費税額が全額控除できます。これを95%ルールといいます。事務の簡便化のため、課税仕入れは全額(100%)課税売上げに対応している、すなわち課税売上割合を100%とみなしているわけです。この場合、一括比例配分方式や個別対応方式の計算は不要です。

 通常の業種の場合、企業の非課税売上げは預金利息、貸付金利息、社宅家賃個人負担分くらいなので、課税売上割合は95%以上になることが一般的です(多くの場合は99%以上)。

課税売上げの消費税額-課税仕入れの消費税額(仕入控除税額)=納付額

                                

(2) 一括比例配分方式

 

 課税売上割合95%未満の事業者、または、課税売上割合95%以上であっても課税売上高(税抜)5億円超の事業者は、課税仕入れを按分して、課税売上げに対応する分だけを控除することが必要となります。その仕入税額控除の按分方法には、一括比例配分方式と個別対応方式とがあります。

 一括比例配分方式では、課税仕入れ全体に課税売上割合を乗じた額が仕入控除税額となります。

仕入控除税額=課税仕入れの消費税×課税売上割合

 

(3) 個別対応方式

 

 個別対応方式は、課税仕入れの消費税を、①課税売上対応分、②非課税売上・不課税売上対応分、③共通対応分の3つの用途に区分します。必ず、この3つに区分することが必要です。たとえば、課税仕入れ全額から①課税売上対応分を差し引いて、残額を③共通対応分にするというような2区分は認められません。

 個別対応方式によった場合の仕入控除税額は、次の式のようになります。

仕入控除税額=①課税売上対応分の消費税+(③共通対応分の消費税×課税売上割合)

 

(4)  一括比例配分方式と個別対応方式の選択

 

 一括比例配分方式と個別対応方式は、事業者が自由に選択できますが、一括比例配分方式を選択した場合には2年間の継続適用が強制されます。

 仕入税額控除は個別対応方式が原則ですが、用途区分に事務手数がかかります。事務手数を省くため認められた方法が一括比例配分方式であるという位置付けです。そのため、簡便法である一括比例配分方式を採用する場合には、2年間の継続という縛りがあるわけです。

 

・課税売上割合

 

ところで、課税売上割合とは、次の分数式で表わされます(消費税抜きの金額)。

 課税売上割合の式は、仕入控除税額を当期の課税売上高と当期の非課税売上高の割合で按分して、課税売上高に対応する額を求めています。

 課税対象外売上高は、分母に入っていません。理論的には入れるべきですが、もし、分母に対象外売上高を入れると、課税売上割合はその分小さくなり、仕入控除税額が少なくなります。分母に対象外売上げを入れないということは、本来ならば対象外売上高に対応する部分の一部も、課税売上高対応として仕入控除税額に含まれると考えられます。仕入控除税額が多くなるので、納税者有利になっているということです。

 民間企業は、通常、対象外売上高(有価証券の配当金、保険会社からの保険金、国からの補助金・助成金など)はそれほど多額にならないので、割り切ったということもいえます。ただし、非営利法人では、補助金などの対象外売上げがかなりの比重を占めることが考えられるため、民間企業とは異なる計算方法が採られています。

 

 輸出価額には消費税を転嫁しないことが国際的なルールなので、輸出売上げについては消費税率0%としています。これを輸出の免税売上高といいます。税率0%ですが課税売上げに含まれるので、課税売上割合の式の分母と分子にともに計上されます。

 土地を除く有形無形固定資産の売却額は、分母と分子の課税売上げに含まれます。土地の売却額は、分母の非課税売上げに含まれます。有価証券の売却額は、原則、その5%が分母の非課税売上げに含まれます。有価証券の場合、売却額をそのまま分母の非課税売上げに含めたのでは、課税売上割合が小さく仕入控除税額が少なくなってしまうためです。これも、納税者有利の規定です。

 

・全額控除の縮小

                                         

 2012年(平成24年)4月1以後開始の事業年度から、消費税改正により、課税売上割合が95%以上であっても当事業年度の課税売上高が5億円を超える場合には、全額、仕入控除税額とすることができなくなりました。一括比例配分方式または個別対応方式で按分することが必要です(課税売上割合が95%未満の場合には、従前から按分が必要です。)。

 これは、理論上、妥当ですが、納税側からすると増税になります。また、課税売上げが5億円を超えるような規模の企業は、事務手数の増加に耐えられるだろうという趣旨です。

 

 まとめると、現在、仕入税額控除は次のようになります。2012年改正の対象は、当事業年度の課税売上げ5億円超の事業者です。5億円は、前々期や前期ではなく、あくまで当期の数値です。5億円以下の事業者は、2012年改正は影響なく、従前どおり95%ルールが適用できます。

① 全額、仕入控除税額となる場合

 課税売上げ(税抜き)5億円以下かつ課税売上割合95%以上の事業年度

② 一括比例配分方式または個別対応方式で按分する場合

 課税売上げ(税抜き)5億円超の事業年度または課税売上割合95%未満の事業年度

・一括比例配分方式と個別対応方式

 

 全額仕入控除税額となる場合や一括比例配分方式を取った場合には、支払側を①課税仕入れと②課税仕入れにならないもの(非課税仕入れまたは対象外仕入れ)の2つに分けることが必要です。パソコンの会計ソフトを使用する場合、消費税の区分欄でそれら2つを選択します。

 

 一方、個別対応方式を採った場合には、支払側を①課税売上対応分の課税仕入れ、②非課税売上対応分の課税仕入れ、③共通対応分の課税仕入れ、④課税仕入れにならないもの(非課税仕入れまたは対象外仕入れ)の4つに区分する必要があります。パソコンの会計ソフトを使用する場合、消費税の区分欄でそれら4つを選択します。つまり、個別対応方式を採ると一括比例配分方式よりも入力の事務手数がかかります。

 

 その代わり、通常、個別対応方式の方が一括比例配分方式より仕入控除税額が多くなるので、消費税の納税額は少なくなります。一括比例配分方式は、課税仕入れ全体を課税売上割合で按分して、仕入控除税額を算出します。一方、個別対応方式は、課税売上対応分をそのまま仕入控除税額とし、按分するのは共通対応分だけとなるからです(非課税売上対応分は按分できなくなりますが、通常、少額です。)。

 

 したがって、どちらの方式を採るかは、個別対応方式の採用による節税額(一括比例配分方式との差額)というメリットと事務手数の増加というデメリットを勘案して決めることになるでしょう。

 

 なお、支払側については、非課税仕入れと対象外仕入れとの区別は不要です。支払側については、課税仕入れに該当するか否かの区別さえ付けばよいわけです。両方とも、対象外としてもかまいません。どちらも消費税の計算には影響しないからです。 

 

 一方、受取側の非課税売上げと対象外売上げの区別は重要です。課税売上割合の計算に非課税売上げは関係するのに対して、対象外売上げは無関係だからです。レアケースですが、非課税売上対応分の課税仕入れが多いと、一括比例配分方式の方が個別対応方式よりも納税額が少なくなることがあります。

 

 また、「非課税仕入れ」(たとえば、土地の購入)と「非課税売上対応分の課税仕入れ」(たとえば、土地売上に対応する仲介手数料の支払い)の区別に、ご注意ください。

・個別対応方式の用途区分

 

 個別対応方式の課税売上対応分とは、課税売上げにのみ要する課税仕入れをいいます。非課税売上対応分とは、非課税売上げにのみ要する課税仕入れをいいます。共通対応分とは、原則として、課税売上げと非課税売上げとに共通して要する課税仕入れをいいます。ただし、3つのどれかに区分しなければならないので、実際には、共通対応分とは、課税仕入れのうち、課税売上げ対応分と非課税売上げ対応分以外のものすべてということになります。

共通対応分=課税仕入れ-課税売上げ対応分-非課税売上げ対応分

 

 受取配当金や受取保険金などの課税対象外売上げ(不課税売上げ)に対応する課税仕入れは、課税売上対応分でも非課税売上対応分でもないので、共通対応分となります。また、同一事業年度での対応である必要はなく、他の事業年度での対応であってもかまいません。

 事業部門ごとに業務内容が明確に分かれている場合には、用途区分を事業部門ごとに行うことも認められます。つまり、課税売上げのみが生ずる事業部門で発生する費用は、すべて課税仕入れにすることが可能であるということです。この考え方は、勘定科目ごとに用途区分を行う場合も同様です。

 

(設例)

 M社の損益計算書の売上高は、すべて課税売上げである。他に、非課税売上げとして、預金の受取利息がある。

 M社が消費税の計算において個別対応方式を採る場合、損益計算書の次の各勘定科目の用途区分は、通常、どのようになりますか。

 当期商品仕入高、広告宣伝費、倉庫料、運送費、交際費、消耗品費、通信費、水道光熱費、地代家賃、雑費

 

 国税庁の「95%ルールの適用要件の見直しを踏まえた仕入控除税額の計算方法に関するQ&A」によれば、非課税売上げが預金の受取利息だけであるとしても、総務・経理部門などにおける事務費など、課税売上対応分として特定されない課税仕入れは、共通対応分に区分されるとしています。

 したがって、設例の場合、通常、当期商品仕入高と販売費(広告宣伝費、倉庫料、運送費)は課税売上対応分となり、一般管理費(交際費、消耗品費、通信費、水道光熱費、地代家賃、雑費)は共通対応分になると考えます。この設例では、非課税売上対応分はないと思われます。

 なお、製造業の製造原価も、通常、課税売上対応分となります。

 

・一括比例配分方式と個別対応方式の設例

 

(設例)

 N社は、課税売上げ(税抜き)6億円、課税仕入れ(税抜き)5億円(課税売上対応分4.5億円、共通対応分0.5億円、非課税売上対応分なし)。消費税10%、課税売上割合99.9%とする。

残高試算表の表示

 仮払消費税等 50,000,000   仮受消費税等 60,000,000

① 仕入控除税額はいくらですか。

①-1 全額控除の場合

①-2 一括比例配分方式の場合

①-3 個別対応方式の場合

①-4 一括比例配分方式と個別対応方式との差額はいくらですか。

② 税抜経理方式における仕訳はどのようになりますか(仮払消費税、仮受消費税、未払消費税を使用のこと)。

②-1 全額控除方式の場合

②-2 一括比例配分方式の場合

②-3 個別対応方式の場合

 

① 仕入控除税額は、次のようになります。

500,000,000円×0.1=50,000,000円…全額控除の場合

500,000,000円×0.1×0.999=49,950,000円…一括比例配分方式の場合

450,000,000円×0.1+50,000,000円×0.1×0.999=49,995,000円…個別対応方式の場合

 したがって、2012年改正後の消費税の増税額は、一括比例配分方式を採れば50,000円(=50,000,000円-49,950,000円)、個別対応方式を採れば5,000円(=50,000,000円-49,995,000円)となります。そして、一括比例配分方式ではなく個別対応方式を採ることによる節税額は45,000円(=50,000円-5,000円または49,995,000円-49,950,000円)となります。

 一括比例配分方式と個別対応方式との差額は、思ったほど大きくないという印象です。

 

②-1 全額控除方式の仕訳

(借)仮受消費税 50,000,000 (貸)仮払消費税 50,000,000

(借)仮受消費税 10,000,000 (貸)未払消費税 10,000,000

 仮払消費税50,000,000円を、仮受消費税と相殺します。そして、仮受消費税勘定の残高10,000,000円を未払消費税(または未払金)へ振り替えます。

 

②-2 一括比例配分方式の仕訳

(借)仮受消費税 49,950,000 (貸)仮払消費税 50,000,000

    租税公課    50,000

(借)仮受消費税 10,050,000 (貸)未払消費税 10,050,000

 仮払消費税勘定に計上されている金額のうち仕入控除税額とならない50,000円は、租税公課(または雑損失)へ振り替えます。この仕入控除税額とならなかった50,000円を、「控除対象外消費税額」といいます(控除対象外消費税額が生ずるのは、税抜経理方式の場合だけです。税込経理方式の場合には、控除対象外消費税額は生じません。)。

 その結果、仮受消費税勘定の残高は10,050,000円となり、その額を未払消費税へ振り替えます。

 

②-3 個別対応方式の仕訳

(借)仮受消費税 49,995,000 (貸)仮払消費税 50,000,000

    租税公課      5,000

(借)仮受消費税 10,005,000 (貸)未払消費税 10,005,000

 控除対象外消費税額5,000円を、租税公課(または雑損失)で処理します。

 

・控除対象外消費税

 

 仕入税額控除されなかった控除対象外消費税(具体的には仮払消費税勘定の借方残)の税務上の処理は、次のようになります。

 

 課税売上割合が80%以上の場合には、控除対象外消費税は、全額、損金算入します(租税公課または雑損失)。

 

 課税売上割合が80%未満の場合には、その内容により処理が分かれます。経費や棚卸資産に関する控除対象外消費税、また、個々の資産に対する控除対象外消費税が20万円未満のものは、損金とします。

 

 課税売上割合が80%未満の場合、損金とならなかった控除対象外消費税は、「繰延消費税額等」として、5年間(60か月)で月割償却(月次均等償却)します。なお、控除対象外消費税が生じた年度は、実際に何か月であろうと6か月とみなします。すなわち、12÷60÷2で計算します。「繰延消費税額等」は、1年を超えるので、固定資産(投資その他の資産)に表示されます。 

 

 課税売上割合が80%未満の場合、損金とならなかった控除対象外消費税については、別法もあります。有形無形固定資産や繰延資産に関する控除対象外消費税は、それぞれの資産の取得価額に算入して、償却していくこともできます。

 

 税抜経理方式を採用している場合、交際費に関する控除対象外消費税がある場合には、注意が必要です。法人税における交際費の損金不算入額の計算をする場合、控除対象外消費税を加えるのを忘れないようにする必要があります。なお、この取り扱いは、税抜経理方式だけで、税込経理方式の場合には関係ありません(そもそも、税込経理方式では、控除対象外消費税は生じません。)。

 

  

 (設例)

 R社の未払消費税へ振り替えた後の仮払消費税の残高800,000円 消費税10% 税抜経理方式 課税売上割合70% 一括比例配分方式

 建物取得価額 税抜 10,000,000円(消費税1,000,000円)

 交際費 税抜 400,000円(消費税40,000円)

このときの仕訳はどのようになりますか。

 

(借) 繰延消費税300,000  (貸)仮払消費税800,000

  交際費   12,000

  租税公課  488,000

 

(借) 租税公課   30,000  (貸)繰延消費税  30,000

 

 まず、繰延消費税(または固定資産)や交際費に振り替える控除対象外消費税を求めます。

建物:1,000,000円×(1-0.7)=300,000円

交際費:40,000円×(1-0.7)=12,000円

 それ以外の租税公課に振り替える控除対象外消費税は、差引で求めます(実務で実際に計算するときも、差引で算出することになると思います。)。

仮払消費税残高800,000円-建物振替分300,000円-交際費振替分12,000円=488,000円

 また、繰延消費税の計算上、控除対象外消費税が生じた年度は6か月/60か月、すなわち1/10を損金とします。具体的には、租税公課に振り替えるか、または繰延消費税償却という科目に振り替えます(消費税の指示は、対象外)。

300,000円×12÷60÷2=30,000円

                                      

 

※本稿は、次の拙稿を加筆修正したものです。

寺田誠一稿『会計と税務の交差点スッキリ整理! 第14回 「消費税改正」の重点解説』月刊スタッフアドバイザー 2012年(平成24年)9月号

 

 

※消費税の基本・しくみ・構造については、「消費税の基本」参照。

※実務的な消費税のパソコン入力方法については、「税込経理方式・税抜経理方式と消費税内税入力」参照。

※消費税の決算整理については、「税込経理方式と税抜経理方式の決算整理」参照。

※非営利法人の消費税については、「非営利法人の消費税」参照。

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。