「飲食店のUber Eats・出前館・TGALの会計(仕訳)と税務…Uberの計算書」

 

2024年(令和6年)12月2日(最終更新2025年7月27日)

公認会計士・税理士 寺田 誠一

 

 

・Uber Eats 等のフードデリバリー会社の利用

 

 飲食店は、店内での飲食の提供だけでなく、売上増大のため、宅配サービスを実施することがあります。その場合、必要となるのがUber Eats、出前館等のフードデリバリー会社です。

 

 本稿では、原則、Uber Eats(以下、Uberと略します。)を例にとって説明します。

 

 Uberを利用して、顧客の自宅や会社に料理をデリバリーした場合、飲食店の売上先は、あくまで顧客です。入金は、Uberからになりますが、売上先はUberではなく、顧客になります。Uber利用の飲食店の売上の消費税は、店内飲食ではなく飲食料品の宅配・出前であり、標準税率10%ではなく軽減税率8%となります。Uberは、宅配代行をしているにすぎません。

 

 顧客は、インターネット上の専用アプリでUberに注文します。そして、請求書は、インターネット上でUberが顧客に発行します(Uberが、飲食店に代わって、決済業務の代行も担当しています。)。したがって、Uberの顧客に対する請求書は、飲食店が課税事業者であるならばインボイス番号が記されていますが、飲食店が免税事業者であるならばインボイス番号は記載されません。

 なお、Uberの領収書はインボイスの要件を満たしていないので、顧客はインボイスの要件を満たしている請求書を保存しておく必要があります。

 

 さて、飲食店の売上計上の時期は、原則、配達員・顧客に料理を引き渡した日となります。したがって、その日で(計算書入手前に)売上を計上するのが、原則的な会計処理です。同時に、Uberに対する注文・配送等の管理業務の手数料35%を計上します。Uberの手数料の消費税は、標準税率10%となります。

 Uberは、月曜~日曜の1週間で締めて、計算書が発行されます。したがって、飲食店が毎日その売上を把握することが煩雑・困難な場合には、1週間ごとの計算書を入手したときに会計処理を行う方法でもよいと思います。

 

 出前館は、月初~月末の1か月で締めて、計算書が発行されます。したがって、出前館の場合には、1か月ごとにまとめて売上を計上する方法も考えられます。

 

 さて、Uberの計算書には、各種項目が記載されています。

 

① 飲食店の売上高(消費税軽減税率8%込み)

 

② 「消費税の調整額」

 飲食店は、Uberに配送手数料を支払います(35%の手数料の内に含まれています。)。そして、Uberは、配達員にその配送手数料を支払いますが、配達員個別に支払う手数料の消費税端数(1円未満)は、切捨てになります。消費税について、前者の合計の配送手数料分と、後者の個別の配送手数料分(消費税端数切捨て)の合算とで、差額が生ずることがあります。その差額の累積額が「消費税の調整額」です。そして、それを飲食店に還元(支払)しています。飲食店から見れば、入金の増加要因です。飲食店の会計処理は、支払手数料のマイナスとします。

 

③ 「プロモーションの適用」

 これは、「〇個注文すると1個無料」「〇円以上の注文で〇円値引き」等の販売促進の費用です。飲食店から見れば、入金の減少要因です。飲食店の会計処理は、売上値引(売上のマイナス)とします。

 

④ マーケティング費用(消費税税込)

 広告費用等です。

 

⑤ Uberの手数料

 消費税税込額の35%ですが、それに10%の消費税がかかります。内訳は次のとおりで、分かりにくくなっています。

(①飲食店の売上高+②消費税の調整額-③プロモーションの適用-④マーケティング費用)×0.35×1.1(消費税10%なので税込額は1.1倍)

 

⑥ 合計支払額(飲食店への入金額)

 次のとおりです。

 ①飲食店の売上高+②消費税の調整額-③プロモーションの適用-④マーケティング費用-⑤Uberの手数料

 

 簡便法として、飲食店の売上高(税込)とUberからの入金額との差額を算出して、その額をUberに対する支払手数料(税込)としても、重要性の原則(重要性が乏しい)から許容されると思われます。

 

 

・Uberの設例

 

(設例)

 飲食店において、Uber を通して、×1日:10,000円(8%の消費税込)の売上、×2日:10,000円の売上(8%の消費税込)があった(Uberの手数料は35%とその消費税10%)。後日、Uber より、「消費税の端数」2円が付加され、一方、手数料7,700円(うち消費税700円)を差し引かれた差額12,302円が普通預金に振り込まれた。

 このとき、次の仕訳はどのようになりますか(消費税は内税入力方式、入金は普通預金を使用、以下の設例も同じ)。

① 売上計上時

② 入金時 

       

 

(第1法)

① 売上計上時

(借)売掛金  6,150        (貸)売 上 10,000  課売上軽

   支払手数料 3.850 課仕入

 

(借)売掛金  6,150        (貸)売 上 10,000  課売上軽

   支払手数料 3.850 課仕入

 

② 入金時

(借)普通預金 12,302 (貸)売掛金   12,300

                    支払手数料   2 課仕入

 

(第2法)

① 売上計上時

(借)売掛金 10,000 (貸)売 上 10,000  課売上軽

 

(借)売掛金 10,000 (貸)売 上 10,000  課売上軽

 

② 入金時

(借)普通預金 12,302          (貸)売掛金      20,000

     支払手数料  7,700 課仕入    支払手数料       2 課仕入 ※  

 

(第3法)

① 売上計上時

仕訳なし

 

② 入金時

(借)普通預金 12,302          (貸)売  上 20,000  課売上軽

     支払手数料  7,700 課仕入    支払手数料     2  課仕入 ※

 

※ 第2法と第3法で、Uberの手数料について簡便法を採った場合の入金時の処理は、次のようになります。

(借)普通預金 12,302          (貸)売  上 20,000  課売上軽

     支払手数料  7,698 課仕入   

 

 第1法はUberの手数料は35%と決まっているので、売上計上と同時に支払手数料を計上する方法です。この方法が、原則的な処理です。

 第2法は、売掛金の入金時に、金融機関の振込手数料が差し引かれるのと同様の処理を行うものです。「消費税の調整額」、Uberの手数料等の各種項目が正確に判明するのは、Uberからの入金時(計算書入手時)なので、第2法の方が実務的ではあります。ただし、第2法を採った場合、売上計上時と入金時の間に決算日が到来するときには、支払手数料の未払金計上が必要となります(重要性が乏しい場合を除きます。)。

 第3法は、売掛金を計上せずに、入金時に売上を計上するものです。小規模な企業では、考えられる方法です。ただし、決算時には、まだ入金になっていない売掛金・売上とそれに対応する支払手数料の未払金を計上する必要があります。

 

 第1法と第2法は、毎日処理と計算書入手時処理のいずれとも結びつきます(第1法と第2法の会計処理する時点は、毎日と計算書入手時のどちらも可能です。)。ただし、第2法は、計算書入手時処理の方が自然でしょう。第3法は、計算書入手時処理となります。

 

 

・TGAL等のバーチャルレストランの利用

 

 飲食店が、販路拡大のため、自らの実店舗とは別のデリバリー専門店(バーチャルレストラン、ゴーストキッチン)を運営する場合があります。多くは、TGAL等のバーチャルレストラン運営会社のフランチャイズに加盟し、実店舗とは別の商品であるいわゆるブランド(名品)のデリバリーを取扱います。

 

 本稿では、以下、TGALとUber Eatsを例にとって説明します。

 

 顧客との受注・配達・決済は、TGALとUberが担当します。

 したがって、飲食店の業務は、TGAL からインターネットで注文の連絡を受け、そして調理した料理をUberの配達員を通して顧客に届けることです。このブランドの調理に必要な食材は、TGALより仕入れます。

 

 顧客の代金は、まずUberに入ります。次に、Uberの手数料を差し引いた額がTGALに入ります。そして、TGALの手数料とTGALからの仕入代金を差し引かれた額が飲食店に振り込まれます。逆に、Uberからの入金額よりもTGALの手数料と仕入の方が大きければ、飲食店はTGALに、その差額を支払う必要があります。

 

 なお、飲食店の売上先は、TGALやUberではありません。売上先は、あくまで顧客です。TGALやUberは、受注・配達・決済の代行をしているにすぎません。

 

 TGALに対する売上も、商品引渡しの日に行うのが原則です。ただし、飲食店には、1か月ごとに、TGALからの計算書が来ます(飲食店には、Uberからの計算書は来ません。)。したがって、飲食店は、その計算書を見て会計処理を行う方が現実的です。

 

 (設例)

 飲食店において、TGALからの計算書に次のように記載されているとき、仕訳はどのようになりますか。

Uberの売上216,000円(8%軽減消費税込み)

Uberの手数料77,000円(10%消費税込み)

差額:UberよりTGALへの支払額139,000円

 

TGAL より食材の仕入86,400円(8%軽減消費税込み)

TGAL の手数料14,300円(10%消費税込み)

差額:TGAL より飲食店への支払額38,300円

 

(借)売掛金   139,000       (貸)売 上216,000  課売上軽

   支払手数料 77,000 課仕入

(借)売掛金  38,300        (貸)売掛金 139,000

     仕 入     86,400 課仕入軽

     支払手数料 14,300 課仕入

(借)普通預金   38,300 (貸)売掛金   38,300

 

(設例)

 飲食店において、TGALからの計算書に次のように記載されているとき、仕訳はどのようになりますか。

Uberの売上32,400円(8%軽減消費税込み)

Uberの手数料11,550円(10%消費税込み)

差額:UberよりTGALへの支払額20,850円

 

TGAL より食材の仕入21,600円(8%軽減消費税込み)

TGAL の手数料1,980円(10%消費税込み)

差額:飲食店よりTGAL への支払額2,730円

 

(借)売掛金      20,850          (貸)売 上  32,400  課売上軽

   支払手数料   11,550 課仕入

(借)仕 入    21,600 課仕入軽  (貸)売掛金 20,850

     支払手数料  1,980 課仕入         買掛金    2,730

(借)買掛金         2,730            (貸)普通預金 2,730

 

 

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。