「借入金の表示・種類・会計処理(仕訳)」

 

2020年(令和2年)3月29日(最終更新2021年7月6日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・流動負債と固定負債の表示

 

 1年内に返済される借入金は「短期借入金」、1年を超えて返済される借入金は「長期借入金」という勘定科目を用います。借入時には、取扱手数料や印紙代を金融機関に支払うことがあります。前者は「支払手数料」、後者は「租税公課」となります。

  

 長期借入金は、通常、毎月返済されるので、決算において、決算日の翌日から1年以内に返済される額を、流動負債の短期借入金(または「1年以内返済予定長期借入金」)に振り替えます。

(借)長期借入金 ×××   (貸)短期借入金 ×××

 長期借入金は負債なので、本来の場所は貸方(右側)です。それを減少させるので、反対側の借方(左側)に記載します。そして、短期借入金の増加なので、本来の場所の貸方(右側)に記載します。

 

 ただし、企業会計原則注解(注1)(5)重要性の原則の適用により、金額の重要性が乏しい場合には1年以内の返済予定額もそのまま長期借入金に含めておくことができます。上場企業などに適用される財務諸表等規則ガイドライン47-6③では、1年以内の返済予定額が負債と純資産の合計額の5/100以下の場合には、固定負債のままでもよいとされています)。

 中小企業では、1年以内の返済予定額を長期借入金のままにしておくことが多いと思われます。

 

・元金均等返済と元利均等返済

 

  金融機関からの借入金は、通常、毎月返済していきますが、その返済方法に2とおりの方法があります。元金均等返済と元利均等返済です。両者のイメージ図は、次のとおりです。

 元金均等返済は、毎月の元金の返済額を一定にし、それに利息(金利)を加えた額を返済していくものです。利息はそのつど元金残高に利率をかけて算出するので、元金の返済が進むと利息はそれに伴って少なくなります。したがって、元金と利息とを合わせた毎月の返済額は、次第に減っていきます。

 元利均等返済は、元金と利息とを合わせた毎月の返済額を一定にしたものです。毎月の返済額のうち、元金と利息の割合は、最初のうちは利息が多いのですが、次第に元金の割合が増えていきます。

 

 元利均等返済は、当初の返済額を元金均等返済より少なくでき、また、毎月の返済額が一定なので返済計画が立てやすくなります。そのため、個人の30年などの長期的な住宅ローンは、通常、元利均等返済によります。ただし、長期の元利均等返済だと、最初のうちは返済額の多くが利息で元金はあまり減らないということになります。

 

 元金均等返済は、返済期間内の支払利息総額が元利均等返済よりも少なくて済みます。企業の借入金は、通常、5~7年であり、元金均等返済によることが多くなっています。

 

 なお、利息は、通常、毎月の元金の返済時に翌月の返済時までの1か月分を前払いします。したがって、本来は前払費用ですが、支払利息とするのが一般的です(法人税基本通達の適用ですが、これについては後述)。

 

・保証料

 

 借入時に信用保証協会の保証を付けることがあります。これは、借入れをした企業が金融機関に返済できなくなったときは、代わりに信用保証協会が金融機関に弁済してくれる制度です。

 信用保証協会は、中小企業が借入れ(融資)を受けるときに、保証人となり、借りやすくするように支援する公的機関です。各都道府県と、横浜市・川崎市・名古屋市・岐阜市・大阪市に52協会存在します。

 

 信用保証協会に対する保証料は、通常、借入時に借入期間(保証期間)の全額を支払います。したがって、支払った保証料は一時の費用(損金)とはなりません。これについては、長期前払費用か繰延資産かという議論があります。前払費用は役務の未提供部分に対する支払いであるのに対して、繰延資産は役務の既未提供部分に対する支払いですがその効果の発現が将来に期待されるものです。保証という役務の提供は借入期間(保証期間)のすべてに及ぶので役務は未提供であり、中途完済の場合には保証料が返戻されることを考えると、長期前払費用が妥当だと思われます。

 

 保証料の償却は、通常、借入期間にわたり月次で均等償却します。勘定科目は、金利の一種と考えられることや消費税法において非課税とされていることからして、支払利息とするのがよいでしょう。

 

・手形借入

 

 以上の説明は、契約書に基づく証書借入を前提にしたものです。ほかに、契約書の代わりに手形を用いる手形借入があります。金融機関あてに、3か月程度の期日の約束手形を振り出し、融資を受けるものです。1年以内のものなので、短期借入金となります。

 ただし、3か月たつとまた新たな約束手形を振り出して融資を受け、つまり、手形借入は形式的には短期ですが、書換えで実質的には長期となっていることが多いようです。

 

 

・前払費用通達

 

 法人税基本通達2-2-14に前払費用についての規定があります。次のとおりです(原文、一部省略)。

 

 前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。)の額は当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。

(注)例えば借入金を預金、有価証券に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。

 

 これにより、継続適用を条件に、前払費用で1年以内のものは前払費用に計上しないで経費処理すれば、法人税法においても損金として認められます。通達は、金額については述べていません(ただし、もともと会計の重要性の原則に配慮してできた規定ですので、極端に多額な場合は問題になると思われます。)。

 

 「中小企業会計指針」においても、法人税法の規定を受けて「前払費用のうち当期末においてまだ提供を受けていない役務に対応する前払費用の額で、支払日から1年以内に提供を受ける役務に対応する金額については、継続適用を条件に費用処理することができる」としています。

 

 具体的には、借入金の利息、地代家賃、保険料などです(信用保証協会の保証料は1年を超えるので該当しません。)。借入金の利息や地代家賃は1か月前払いするのが通常ですが、中小企業では前払費用に計上せずに経費処理することが多いと思われます。また、年払いの保険料なども、経費処理すれば損金とすることが可能です。

 

 

・借入金の設例

 

(設例)

1月20日  金融機関から15,000,000円借入れ  借入時の支払利息17,500円

期間5年  入金と返済の預金口座は普通預金  

返済予定表(一部)

返済日   返済額   元金   利息     残高

2月20日  267,000  250,000  17,000  14,750,000

3月20日  266,000  250,000  16,600  14,500,000

 

 元金均等返済の事例です。返済時、預金口座からは元金と利息との合計額が引落しになるので、元金と利息とを分けて仕訳する必要があります。元金がわかれば、返済額(引落額)から元金を差し引いた額が利息なので、返済予定表がなくても仕訳ができます。

(1月20日の仕訳)

(借)普通預金 14,982,500 (貸)長期借入金 15,000,000

      支払利息       17,500

(2月20日の仕訳)

(借)長期借入金  250,000 (貸)普通預金  267,000

      支払利息    17,000

(3月20日の仕訳)

(借)長期借入金  250,000 (貸)普通預金  266,600

      支払利息    16,600

 

 

(設例)

1月25日  金融機関から300,000,000円借入れ  借入時の支払利息1,164,653円

期間20年  入金と返済の預金口座は当座預金  

返済予定表(一部)

返済日   返済額    元金    利息       残高

2月25日  1,872,788  713,866  1,158,922  299,286,134

3月25日  1,872,788  719,115  1,153,673  298,567,019

 

 元利均等返済の設例です。この場合には、返済時の元金と利息の区分は返済予定表を見て行うので、返済予定表がないと仕訳できません。

(1月25日の仕訳)

(借)当座預金 298,835,347 (貸)長期借入金 300,000,000

     支払利息   1,164,653

(2月25日の仕訳)

(借)長期借入金  713,866 (貸)当座預金  1,872,788 

     支払利息    1,158,922

(3月25日の仕訳)

(借)長期借入金  719,115 (貸)当座預金  1,872,788

     支払利息     1,153,673

 

(設例)

12月15日  金融機関からの借入金残高が4,000,000円あるが、それを返済し新たに10,000,000円を借換え

借入時の支払利息16,500円  戻り利息6,600円  入金と返済の預金口座は普通預金 

   

  借換えの事例です。通常、利息を前払いしているので、借換えをした場合には旧借入金の利息が戻ってきます。戻ってきたときの勘定科目は、支払利息のマイナスとします。

(12月15日の仕訳)

(借)普通預金  5,990,100 (貸)長期借入金 10,000,000

      長期借入金 4,000,000      支払利息      6,600

      支払利息     16,500

 

 借入金の増加した純額6,000,000円だけを仕訳することも考えられます。同じ結果となります。

(借)普通預金   5,990,100 (貸)長期借入金  6,000,000

     支払利息      16,500       支払利息       6,600

 

 

(設例)

1月5日 借入金額20,000,000円  保証料600,000円差引  借入期間(保証期間)は1月より60か月(5年)  

3月決算会社  入金と返済の預金口座は当座預金

 

  保証料の設例です。保証料は、通常、借入時に借入金額より差し引かれます。すなわち、保証料は金融機関を通じて、信用保証協会に支払います。

(1月5日)

(借)当座預金   19,400,000 (貸)長期借入金  20,000,000

     長期前払費用    600,000

 

(3月31日決算整理)

(借)支払利息 30,000  (貸)長期前払費用 30,000 

1~3月までの3か月分を償却します。

600,000円×3/60=30,000円

(借)前払費用 120,000 (貸)長期前払費用 120,000

1年内の部分を前払費用に振替えますが、この処理は重要性の原則から省略されることも多いです。

600,000円×12/60=120,000円

 

(設例)

12月10日 金融機関からの3か月の手形借入3,000,000円の満期日が到来  新たに3か月の手形借入3,000,000円に書換え  支払利息12,400円  入金と返済の預金口座は普通預金 

 

 手形借入れの設例です。手形借入れの場合には専用の手形用紙を用いるので、当座預金でなく普通預金で処理することも可能です。

(12月10日の仕訳)

(借)支払利息  12,400 (貸)普通預金  12,400

 

 いったん3,000,000円を返済し、新たに3,000,000円を借りるという記帳が行われる場合は、次の仕訳となります。

(借)短期借入金 3,000,000 (貸)普通預金   3,000,000

(借)普通預金  2,987,600 (貸)短期借入金 3,000,000

     支払利息     12,400

 

 

※本稿は、次の拙稿を加筆修正したものです。

寺田誠一稿『経理の疑問点スッキリ解明 第9回 借入金』月刊スタッフアドバイザー 2009年12月号

 

 

※信用保証料について詳しくは、「信用保証料の会計と税務」参照

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照