「税込経理方式・税抜経理方式の決算整理」

 

2020年(令和2年)8月16日(最終更新2021年8月19日)

寺田 誠一(公認会計士・税理士)

 

 

・消費税の決算整理仕訳

 

(設例)

 決算整理前のデータが次のとおりである場合、税込経理方式と税抜経理方式それぞれの決算整理仕訳と利益はどうなりますか。

仮受消費税90,909円  仮払消費税60,908円(=54,545円+6,363円)

税込経理方式の利益330,000円(=売上1,000,000円-仕入600,000円-旅費交通費70,000円)

税抜経理方式の利益299,999円(=売上909,091円-仕入545,455円-旅費交通費63,637円)

 

 消費税の申告書に沿って、消費税の納付額を計算すると、次のとおりです。これも、パソコンの会計ソフトが計算してくれます。

1,000,000円×100/110=909,000円(千円未満切捨)

909,000円×7.8/100=70,902円

(600,000円+70,000円)×7.8/110=47,509円(円未満切捨)

70,902円-47,509円=23,300円(百円未満切捨)

23,300円×22/78=6,500円(百円未満切捨)

23,300円+6,500円=29,800円…消費税納付額

 

 税込経理方式では、次の決算整理仕訳を行います。会計上はこの未払計上の仕訳を行うことは当然ですが、税務上は任意で、未払いを計上しないで翌期の納付時の損金とすることも認められます。

(借)租税公課29,800  (貸)未払消費税 29,800

 この仕訳の結果、税込経理方式の利益は、次のようになります。

330,000円-29,800円=300,200円

 

 税抜経理方式では、次の決算整理仕訳を行います。したがって、決算書で、仮受消費税や仮払消費税という科目は表示されません。未払消費税、未払消費税等または未払金という表示になります。税務上、③の差額を収益(益金)に計上する仕訳は、必ず行わなければなりません。

 また、仮払消費税、仮受消費税、雑収入の消費税区分の初期設定は課税になっているので、「対象外」に変更します。未払消費税は、初期設定で「対象外」になっています。

①(借)仮受消費税  60,908  対象外  (貸)仮払消費税  60,908 対象外 

②(借)仮受消費税  29,800  対象外  (貸)未払消費税  29,800 対象外 

③(借)仮受消費税     201  対象外  (貸)雑 収 入   201 対象外 

 

 ①~③の仕訳の結果、税抜経理方式の利益は次のようになり、税込経理方式と一致します。

299,999円+201円=300,200円

 ①は、仮払消費税の金額を仮払消費税勘定から仮受消費税勘定へ振り替えて(移して)、仮払消費税と仮受消費税とを相殺(そうさい)する仕訳です。②は、納付額を未払消費税、未払消費税等(または未払金)へ振り替える仕訳です。③は、仮受消費税勘定の残高201円を雑収入に振り替える仕訳です。

 

 ①~③の税抜経理方式における消費税の決算整理仕訳には、別法もあります。

 

別法1

①(借)仮受消費税  60,908 対象外    (貸)仮払消費税  60,908 対象外 

②(借)仮受消費税  30,001 対象外   (貸)未払消費税  30,001 対象外 

③(借)未払消費税    201 対象外   (貸)雑 収 入   201 対象外 

 これは、仮払消費税と相殺した後の仮受消費税の金額をすべて未払消費税勘定へ振り替える方法です。そして、納付額との差額を未払消費税勘定で算出して雑収入に振り替えます。

 

別法2

①(借)仮受消費税  90,909  対象外  (貸)未払消費税  90,909 対象外 

②(借)未払消費税  60,908  対象外  (貸)仮払消費税  60,908 対象外 

③(借)未払消費税     201  対象外  (貸)雑 収 入   201 対象外 

 これは、仮受消費税勘定と仮払消費税勘定の残高を、それぞれ未払消費税勘定へ振り替える方法です。そして、納付額との差額を未払消費税勘定で算出して雑収入に振り替えます。

 

 さて、この設例では、税込経理方式と税抜経理方式とで、当期純利益は300,200円で同額となりました。しかし、これは単純な事例なので一致しましたが、通常は、棚卸資産の在庫や固定資産などがあるため、両者の利益は一致しません。

 

 

・在庫と固定資産の設例

 

(設例)

 税込経理方式と税抜経理方式では、次の各仕訳はどうなりますか(内税入力 消費税10%)。

ア 商品期末在庫 本体価格800,000円 消費税80,000円

イ 自動車 期首に購入(小切手で支払) 本体価格1,000,000円 消費税100,000円 定率法 耐用年数6年(償却率0.417)

 

税込経理方式

ア (借)商   品  880,000 対象外  (貸)期末商品棚卸高  880,000 対象外 

イ (借)車両運搬具 1,100,000 課仕入  (貸)当座預金    1,100,000 対象外 

  (借)減価償却費  458,700 対象外  (貸)車両運搬具    458,700 対象外 

*458,700=1,100,000×0.417

 

税抜経理方式

ア (借)商   品  800,000  対象外   (貸)期末商品棚卸高 800,000 対象外 

イ (借)車両運搬具 1,100,000  課仕入  (貸)当座預金    1,100,000 対象外 

  (借)減価償却費  417,000  対象外   (貸)車両運搬具   417,000 対象外 

*417,000=1,000,000×0.417

 

 税込経理方式、税抜経理方式ともに、減価償却費を計上するときのイの貸方の車両運搬具は「対象外」と指示することが必要です(初期設定が「課税仕入れ」になっているので)。商品、期末商品棚卸高、当座預金、減価償却費は初期設定で「対象外」になっているので、変更する必要はありません。

 

 

・税込経理方式と税抜経理方式とが一致する設例

 

(設例)

 次の資料によると、×1期と×2期の税込経理方式と税抜経理方式それぞれの略式の損益計算書はどうなりますか。

 

(ア)×1期と×2期の売上・仕入はともに、次のとおり(消費税10%)。

売上12,000,000円(税抜価格、他に消費税1,200,000円)

仕入8,000,000円(税抜価格、他に消費税800,000円)

(イ)×1期末の商品在庫2,000,000円(税抜価格、他に消費税200,000円)

×2期末の商品在庫はなし。

(ウ)×1期に自動車1,000,000円を購入(税抜価格、他に消費税100,000円)。×1期の減価償却費は、税込220,000円 税抜200,000円。×2期に廃車。

 

① ×1期 税込経理方式 損益計算書

                                 

売上          13,200,000

仕入   8,800,000                 

期末商品 2,200,000    6,600,000             

減価償却費           220,000              

租税公課              300,000

利益           6,080,000           

 

① ×2期 税込経理方式 損益計算書

 

売上          13,200,000

期首商品 2,200,000

仕入   8,800,000   11,000,000

除却損             880,000

租税公課             400,000

利益              920,000

 

③ ×1期 税抜経理方式 損益計算書

 

売上           12,000,000

仕入    8,000,000

期末商品  2,000,000   6,000,000

減価償却費           200,000

利益            5,800,000

 

① ×2期 税抜経理方式 損益計算書

 

売上           12,000,000

期首商品  2,000,000

仕入    8,000,000   10,000,000

除却損               800,000

利益            1,200,000

 

 

 設例の税込経理方式と税抜経理方式の、×1期と×2期の通算の利益は、次のように一致します。

税込経理方式:(×1期)6,080,000円+(×2期)920,000円=7,000,000円

税抜経理方式:(×1期)5,800,000円+(×2期)1,200,000円=7,000,000円

 

 在庫と固定資産未償却残高があるうちは、税込経理方式と税抜経理方式の利益は異なります。なくなれば(0になれば)、通算して両者の利益は一致します。ただし、現実には、在庫や固定資産が0になることは少ないので、両者が一致することはほとんどないということになります。

 

 ×1期の税込経理方式と税抜経理方式との利益の差額は、6,080,000円-5,800,000円=280,000円となります(これが×2期で解消しています。)。税込経理方式の利益の方が280,000円多い原因は、×1期末の在庫分の消費税200,000円と×1期末の固定資産の未償却残高分の消費税80,000円です(これらが、×1期末では解消していないということになります。)。下記の貸借対照表で見ると、よくわかります。

 

 

 なお、消費税の額は、次のとおりです。税込経理方式でも税抜経理方式でも、同じ額となります。

×1期:売上分1,200,000円-仕入分800,000円-車両分100,000円=300,000円

×2期:売上分1,200,000円-仕入分800,000円=400,000円

 

 ×2期の除却損の額は、次のとおりです。

税込経理方式:車両1,100,000円-減価償却費220,000円=880,000円

税抜経理方式:車両1,000,000円-減価償却費200,000円=800,000円

 

 

※消費税の基本・しくみ・構造については、「消費税の基本」、「一括比例配分方式と個別対応方式」参照。 

※実務的な消費税のパソコン入力方法については、「税込経理方式・税抜経理方式と消費税内税入力」参照。

※非営利法人の消費税については、「非営利法人の消費税」参照。

※このウェブサイトの趣旨については、「ご挨拶」参照。

 

 

※本稿は、次の拙稿を大幅に加筆修正したものです。

寺田誠一稿『経理の疑問点スッキリ解明 第17回 消費税を意識した仕訳 パート2』月刊スタッフアドバイザー 2010年(平成22年)8月号